遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがあります。
※特別方式は除く。
3つの遺言書の効力は同じですが、その他は違う部分が多いです。
- 遺言書の作成費用
- 遺言書の作成者
- 遺言書の保管方法
- 遺言書の検認
遺言書を作成するなら、それぞれの違いについても知っておく必要があります。
今回の記事では、遺言書の違いを4つの項目で説明しているので、遺言書作成の参考にしてください。
目次
1.遺言書の作成費用が違う
遺言書の違い1つ目は、遺言書を作成する費用です。
遺言書を作成する費用は、3つの遺言書でそれぞれ違います。
1-1.自筆証書遺言の作成は0円も可能
書遺言の内容を自分で考えれば、自筆証書遺言は0円で作成できます。
例えば、紙とペンと印鑑の3つがあれば、今からでも自筆証書遺言の作成は可能です。
ただし、遺言書の内容に問題があっても気付きにくので、専門家に内容確認はしてもらってください。実際に0円で遺言書を作成するのはお勧めしません。
関連記事を読む『自筆証書遺言の費用は3つの段階で発生【作成・保管・使用】』
1-2.公正証書遺言は内容により費用が変わる
公正証書遺言の作成費用は、遺言書に記載する財産や相続人の人数によって変わります。
遺言書に記載する財産額が高くなれば、作成費用も高くなります。また、遺言書に記載する相続人や受遺者の人数が増えれば、作成費用も増えていきます。
3つの遺言書の中では最も作成費用が高いです。公正証書遺言はメリットも多いですが、費用面がデメリットになります。
1-3.秘密証書遺言は1万1,000円から可能
秘密証書遺言の作成費用は、遺言書に記載する財産に関わらず1万1,000円です。
遺言書の内容を自分で考えて、証人(2人)も自分で用意すれば、1万1,000円で秘密証書遺言は作成できます。
ただし、秘密証書遺言はデメリットも多いので、費用面だけで選ぶのは危険です。十分に調べてから選んでください。
関連記事を読む『秘密証書遺言の作成費用を3つに分類【検認費用も必要】』
2.遺言書の本文を作成する人が違う
遺言書の違い2つ目は、遺言書の本文を作成する人です。
法律によって遺言書の本文を作成する人も決まっています。間違えると無効になる可能性もあるので注意してください。
2-1.自筆証書遺言は本人が作成する
自筆証書遺言は本人(遺言者)が作成します。「自筆」という言葉どおり、本人の手書きが成立要件です。
以下は、民法の条文です。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
本人の自書が自筆証書遺言のデメリットにもなります。内容が複雑だと書くのが大変ですし、書く量が多いと書き間違える可能性も高くなるからです。
ただし、自筆証書遺言を作成するのが面倒だからといって、他人に作成してもらうと無効になるので絶対に止めましょう。
関連記事を読む『自筆証書遺言の成立要件は4つ【自書・日付・氏名・押印】』
2-2.公正証書遺言は公証人が作成する
公正証書遺言は公証人が作成します。公証人が作成した遺言書に、遺言者と証人(2人)が署名捺印すれば成立です。
公証人が本文を作成するので、書き間違いが発生する可能性は低いでしょう。
ただし、公正証書遺言の場合でも、遺言書の内容は自分で考える必要があります。公証人は遺言書の内容相談には対応していません。
2-3.秘密証書遺言の本文は誰が作成してもよい
秘密証書遺言の本文は誰が作成しても問題ありません。
自筆証書遺言と違い、本文を自書する必要がないので、パソコンで作成しても大丈夫です。
以下は、民法の条文です。
(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
例えば、家族にパソコンで本文を入力してもらって、遺言者が署名捺印でも問題ありません。
秘密証書遺言でも本人の署名捺印は必要なので、すべてをパソコンで入力しないように注意してください。
※本人の氏名は手書き。
3.作成した遺言書の保管方法が違う
遺言書の違い3つ目は、作成した遺言書の保管方法です。
遺言書は作成して終わりではなく、相続手続きで使用するまで無事に保管しておく必要があります。
3-1.自筆証書遺言は法務局に保管できる
自筆証書遺言は自分で保管するよりも、法務局に保管することをお勧めします。
なぜなら、法務局に保管すれば、紛失や改ざんの恐れもないからです。自筆証書遺言の欠点を補ってくれます。
また、遺言書を電子データとしても保存するので、自然災害による原本消滅にも対応可能です。
遺言者が法務局に行けないなどの理由が無い限り、作成した自筆証書遺言は法務局に保管しましょう。
関連記事を読む『遺言書を法務局に保管する費用は低額です【一律3,900円】』
3-2.公正証書遺言は公証役場で保管される
作成した公正証書遺言は公証役場で保管されます。本人に渡されるのは、原本ではなく謄本(正本)です。
したがって、公正証書遺言については、紛失や改ざんの恐れがありません。電子データとしても保存しているので、自然災害にも対応できます。
本人が亡くなった後に公正証書遺言が見つからない場合、相続人は公証役場で公正証書遺言を再発行できるので安心してください。
関連記事を読む『公正証書遺言の正本(謄本)は再発行できるので安心』
3-3.秘密証書遺言は自分で保管方法を考える
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と違い法務局には保管できないです。また、公正証書遺言と違い公証役場では保管されません。
そのため、作成した秘密証書遺言の保管方法は、自分で考える必要があります。
自宅で保管する人もいますし、誰かに預ける人もいます。重要なのは、亡くなった後で秘密証書遺言の存在が明らかになることです。
なぜなら、遺言書の存在を秘密にしている人が多いので、相続人が遺言書の存在に気付かない可能性もあるからです。
秘密証書遺言の存在に誰も気付かなければ、遺言書を作成していないのと同じ状態になります。
4.遺言書によって検認の有無が違う
遺言書の違い4つ目は、相続開始後の検認です。
遺言書によっては検認を済ませないと、相続手続きで使用できません。
4-1.自筆証書遺言は保管方法で検認に違い
自筆証書遺言は保管方法により検認の有無に違いがあります。
- 法務局で保管:検認は不要
- 上記以外:検認が必要
法務局で保管した自筆証書遺言は検認が不要
法務局で保管した自筆証書遺言については、検認が不要になります。
自筆証書遺言のデメリットであった検認手続きが、法務局に保管することで解消できます。
法務局以外で保管した自筆証書遺言は検認が必要
法務局以外(自宅など)で保管した自筆証書遺言は、相続開始後に検認が必要です。
検認を済ませないと相続手続きで使用できないので、後回しにせず検認の申し立てをしてください。
関連記事を読む『【遺言書の検認】相続手続きを進めるのに必要な作業』
4-2.公正証書遺言は検認が不要
公正証書遺言は検認が不要です。
したがって、相続開始後すぐに相続手続きで使用できます。相続人からすると一番楽な遺言書です。
相続人が高齢だと相続手続きも大変なので、公正証書遺言にしてあげた方が良いでしょう。
4-3.秘密証書遺言は検認が必要
秘密証書遺言を相続手続きで使用するには、相続開始後に検認を済ませておく必要があります。
自筆証書遺言と違い法務局に保管できないので、秘密証書遺言の検認は必須です。
秘密証書遺言は知名度が低いので、検認が必要だと知らない相続人もいます。遺言書の封書に検認が必要だと記載するなどの対策をしてください。
5.さいごに
今回の記事では「自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違い」について説明しました。
自筆証書 | 公正証書 | 秘密証書 | |
作成 費用 | 0円も 可能 | 財産額 で違う | 1万1,000円 |
本文の 作成者 | 本人 | 公証人 | 自由 |
保管 方法 | 法務局 も可能 | 公証役場 | 自分で 考える |
検認 | 有・無 | 無 | 有 |
遺言書の効力は同じですが、その他の部分はそれぞれ違います。
作成費用や作成方法だけでなく、保管方法や相続開始後の検認も遺言書により違うので注意してください。