【遺族基礎年金が支給停止】4つのケースを分かりやすく説明

遺族基礎年金の支給停止
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遺族基礎年金の受給権を有していても、停止要件に該当すると支給は停止されます。

遺族基礎年金の支給が停止されても、受給権は消滅しません。支給停止が解除されると、遺族基礎年金は支給されます。

ただし、遺族基礎年金の停止要件は複数あるので、一つの停止要件が解消されても、他の停止要件に該当していれば解除されません。

今回の記事では、遺族基礎年金の支給停止について説明しているので、自分が何に該当しているか確認してください。

1.遺族基礎年金の支給停止で受給権は消滅しない

遺族基礎年金の支給停止で受給権は消滅しない

まずは、遺族基礎年金の「支給停止」について説明します。

勘違いしやすいのですが、遺族基礎年金が支給停止になっても、受給権は消滅しません。受給権の存在を前提にして、支給を停止しているだけです。

ですので、支給停止が解除されると、遺族基礎年金は支給されます。

遺族基礎年金の停止が解除されると受給できる

遺族基礎年金の「支給停止」と「受給権消滅」は別なので、自分が何に該当しているのかを確認してください。

次章からは、遺族基礎年金の支給が停止されるケースについて説明していきます。

 

2.子に対する遺族基礎年金が支給停止

子の遺族基礎年金が支給停止

子が遺族基礎年金の受給権を取得していても、家族構成によっては遺族基礎年金が支給停止されます。

以下は、国民年金法の条文です。

第四十一条 (省略)
2 子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき(配偶者に対する遺族基礎年金が第二十条の二第一項若しくは第二項又は次条第一項の規定によりその支給を停止されているときを除く。)、又は生計を同じくするその子の父若しくは母があるときは、その間、その支給を停止する。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法41条2項)
  • 遺族である配偶者が受給権を有している
  • 子と父(母)の生計が同じである

それぞれ説明していきます。

2-1.配偶者が受給権を有すると子は支給停止

亡くなった人の配偶者が遺族基礎年金の受給権を有している場合、子の遺族基礎年金は支給停止されます。

子を養育するのは配偶者なので、遺族基礎年金も配偶者が受け取ります。
※配偶者の受給権は子と生計同一が条件。

ただし、配偶者の遺族基礎年金が支給停止(申出・所在不明)されていると、子の遺族基礎年金は支給停止されません。

2-2.子と父(母)の生計が同じなら支給停止

子と生計を同じにする父(母)がいると、子の遺族基礎年金は支給停止されます。

分かりにくい規定ですが、受給権を有していない父(母)と生計を同一にしている場合です。

父母が離婚していた場合

父母が離婚しており、父とが子が一緒に暮らしていた場合です。
※父は再婚していない。

父が亡くなっても母は配偶者ではないので、遺族基礎年金の受給権を取得しません。

一方、子は遺族基礎年金の受給権を取得できますが、父の死後に母と生計を同一にすると支給停止になります。

父(母)が再婚した場合

遺族基礎年金の受給権を有する配偶者が再婚した場合です。

配偶者の受給権は再婚により消滅します。配偶者の受給権が消滅すると、子の支給停止は解除されます。

ただし、再婚した配偶者と生計を同一にすると、生計同一により支給停止になります。

 

3.併給調整により遺族基礎年金が支給停止

他の年金を受給中は遺族基礎年金が支給停止

年金は一人一年金なので、他の年金を受給している間は、遺族基礎年金が支給停止されます。

以下は、国民年金法の条文です。

(併給の調整)
第二十条 遺族基礎年金又は寡婦年金は、その受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は厚生年金保険法による年金たる保険給付(当該年金給付と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。以下この条において同じ。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。(後略)

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法20条1項)

ただし、他の年金を支給停止にすれば、遺族基礎年金の受給は可能です。

3-1.他の年金を停止すれば遺族基礎年金を受給可能

他の年金より遺族基礎年金の方が支給額が高い

他の年金の支給額が、遺族基礎年金の支給額より高額とは限りません。

遺族基礎年金の方が高額であれば、他の年金を支給停止にすることで、遺族基礎年金を受給できます。

例えば、遺族基礎年金の受給権が発生する前から、障害基礎年金を受給していた場合です。

障害基礎年金を停止して遺族基礎年金を受給

障害基礎年金の支給を停止すれば、遺族基礎年金を受給できます。

その後、遺族基礎年金の受給期間が終了すれば、障害基礎年金を再度受給することも可能です。

他の年金を受給している場合は、必ず年金額を比べてください。

3-2.遺族基礎年金と遺族厚生年金は併給可能

遺族基礎年金と遺族厚生年金は同時に受給できる

遺族基礎年金と遺族厚生年金は、同一の支給事由に基づいて支給されるので、同時に受給できます。

遺族厚生年金
厚生年金保険法により遺族に支給される年金

ただし、遺族基礎年金と遺族厚生年金では支給要件が違うので、常に両方受給できるとは限りません。

まずは、年金事務所等で要件を満たしているか確認してください。

 

4.所在不明による遺族基礎年金の支給停止

受給権者が所在不明だと遺族基礎年金は支給停止

遺族基礎年金の支給は、受給権者の所在が一年以上不明の場合、申請により支給が停止されます。

4-1.子の申請により配偶者の支給停止

受給権者である配偶者の所在が一年以上不明の場合、受給権を有する子の申請により支給を停止します。

以下は、国民年金法の条文です。

第四十一条の二 配偶者に対する遺族基礎年金は、その者の所在が一年以上明らかでないときは、遺族基礎年金の受給権を有する子の申請によつて、その所在が明らかでなくなつた時に遡つて、その支給を停止する。
2 配偶者は、いつでも、前項の規定による支給の停止の解除を申請することができる。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法41条の2)

所在不明の申請があると、所在不明になった時に遡って配偶者の支給は停止。

配偶者の支給が停止されると、子の支給停止が解除されるので、子に遺族基礎年金が支給されます。

4-2.他の子の申請により子の支給停止

受給権者である子の所在が一年以上不明の場合、受給権を有する他の子の申請により支給を停止します。

以下は、国民年金法の条文です。

第四十二条 遺族基礎年金の受給権を有する子が二人以上ある場合において、その子のうち一人以上の子の所在が一年以上明らかでないときは、その子に対する遺族基礎年金は、他の子の申請によつて、その所在が明らかでなくなつた時にさかのぼつて、その支給を停止する。
2 前項の規定によつて遺族基礎年金の支給を停止された子は、いつでも、その支給の停止の解除を申請することができる。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法42条)

所在不明の申請があると、所在不明になった時に遡って子の支給は停止。

子の支給が停止されると、他の子の支給額が改定されます。

 

5.遺族補償により遺族基礎年金の支給停止

遺族補償により6年間は支給停止

夫が業務上死亡すると、労働基準法の規定により遺族補償が行われます。

ただし、死亡日から6年間は遺族基礎年金の支給が停止します。

以下は、国民年金法の条文です。

第四十一条 遺族基礎年金は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは、死亡日から六年間、その支給を停止する。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法41条1項)

死亡日から6年経過後に、遺族基礎年金の支給期間が残っていれば、遺族基礎年金を受け取れます。

遺族補償による支給停止期間経過でも受給できる

労働基準法による遺族補償が行われても、遺族基礎年金の受給権が消滅するわけではありません。

 

6.まとめ

遺族基礎年金の支給が停止されるケース

今回の記事では「遺族基礎年金の支給停止」について説明しました。

遺族基礎年金の支給が停止されても、受給権は消滅しません。支給停止が解除されると、遺族基礎年金を受給できます。

  • 配偶者が受給権を有すると子は支給停止
  • 親と子の生計が同一なら子は支給停止
  • 併給調整により支給停止
  • 所在不明により支給停止
  • 遺族補償により支給停止

支給停止の要件は複数あるので、自分が何に該当しているか把握しておきましょう。