遺族基礎年金の受給権を有していても、停止要件に該当すると支給は停止されます。
遺族基礎年金の支給が停止されても、受給権は消滅しません。支給停止が解除されると、遺族基礎年金は支給されます。
ただし、遺族基礎年金の停止要件は複数あるので、一つの停止要件が解消されても、他の停止要件に該当していれば解除されません。
今回の記事では、遺族基礎年金の支給停止について説明しているので、自分が何に該当しているか確認してください。
目次
1.遺族基礎年金の支給停止で受給権は消滅しない
まずは、遺族基礎年金の「支給停止」について説明します。
勘違いしやすいのですが、遺族基礎年金が支給停止になっても、受給権は消滅しません。受給権の存在を前提にして、支給を停止しているだけです。
ですので、支給停止が解除されると、遺族基礎年金は支給されます。
遺族基礎年金の「支給停止」と「受給権消滅」は別なので、自分が何に該当しているのかを確認してください。
次章からは、遺族基礎年金の支給が停止されるケースについて説明していきます。
関連記事を読む『遺族基礎年金はいつまでもらえる?受給権が消滅すると終了』
2.子に対する遺族基礎年金が支給停止
子が遺族基礎年金の受給権を取得していても、家族構成によっては遺族基礎年金が支給停止されます。
以下は、国民年金法の条文です。
- 遺族である配偶者が受給権を有している
- 子と父(母)の生計が同じである
それぞれ説明していきます。
2-1.配偶者が受給権を有すると子は支給停止
亡くなった人の配偶者が遺族基礎年金の受給権を有している場合、子の遺族基礎年金は支給停止されます。
子を養育するのは配偶者なので、遺族基礎年金も配偶者が受け取ります。
※配偶者の受給権は子と生計同一が条件。
ただし、配偶者の遺族基礎年金が支給停止(申出・所在不明)されていると、子の遺族基礎年金は支給停止されません。
2-2.子と父(母)の生計が同じなら支給停止
子と生計を同じにする父(母)がいると、子の遺族基礎年金は支給停止されます。
分かりにくい規定ですが、受給権を有していない父(母)と生計を同一にしている場合です。
父母が離婚していた場合
父母が離婚しており、父とが子が一緒に暮らしていた場合です。
※父は再婚していない。
父が亡くなっても母は配偶者ではないので、遺族基礎年金の受給権を取得しません。
一方、子は遺族基礎年金の受給権を取得できますが、父の死後に母と生計を同一にすると支給停止になります。
父(母)が再婚した場合
遺族基礎年金の受給権を有する配偶者が再婚した場合です。
配偶者の受給権は再婚により消滅します。配偶者の受給権が消滅すると、子の支給停止は解除されます。
ただし、再婚した配偶者と生計を同一にすると、生計同一により支給停止になります。
3.併給調整により遺族基礎年金が支給停止
年金は一人一年金なので、他の年金を受給している間は、遺族基礎年金が支給停止されます。
以下は、国民年金法の条文です。
ただし、他の年金を支給停止にすれば、遺族基礎年金の受給は可能です。
3-1.他の年金を停止すれば遺族基礎年金を受給可能
他の年金の支給額が、遺族基礎年金の支給額より高額とは限りません。
遺族基礎年金の方が高額であれば、他の年金を支給停止にすることで、遺族基礎年金を受給できます。
例えば、遺族基礎年金の受給権が発生する前から、障害基礎年金を受給していた場合です。
障害基礎年金の支給を停止すれば、遺族基礎年金を受給できます。
その後、遺族基礎年金の受給期間が終了すれば、障害基礎年金を再度受給することも可能です。
他の年金を受給している場合は、必ず年金額を比べてください。
3-2.遺族基礎年金と遺族厚生年金は併給可能
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、同一の支給事由に基づいて支給されるので、同時に受給できます。
- 遺族厚生年金
- 厚生年金保険法により遺族に支給される年金
ただし、遺族基礎年金と遺族厚生年金では支給要件が違うので、常に両方受給できるとは限りません。
まずは、年金事務所等で要件を満たしているか確認してください。
4.所在不明による遺族基礎年金の支給停止
遺族基礎年金の支給は、受給権者の所在が一年以上不明の場合、申請により支給が停止されます。
4-1.子の申請により配偶者の支給停止
受給権者である配偶者の所在が一年以上不明の場合、受給権を有する子の申請により支給を停止します。
以下は、国民年金法の条文です。
所在不明の申請があると、所在不明になった時に遡って配偶者の支給は停止。
配偶者の支給が停止されると、子の支給停止が解除されるので、子に遺族基礎年金が支給されます。
4-2.他の子の申請により子の支給停止
受給権者である子の所在が一年以上不明の場合、受給権を有する他の子の申請により支給を停止します。
以下は、国民年金法の条文です。
所在不明の申請があると、所在不明になった時に遡って子の支給は停止。
子の支給が停止されると、他の子の支給額が改定されます。
5.遺族補償により遺族基礎年金の支給停止
夫が業務上死亡すると、労働基準法の規定により遺族補償が行われます。
ただし、死亡日から6年間は遺族基礎年金の支給が停止します。
以下は、国民年金法の条文です。
死亡日から6年経過後に、遺族基礎年金の支給期間が残っていれば、遺族基礎年金を受け取れます。
労働基準法による遺族補償が行われても、遺族基礎年金の受給権が消滅するわけではありません。
6.まとめ
今回の記事では「遺族基礎年金の支給停止」について説明しました。
遺族基礎年金の支給が停止されても、受給権は消滅しません。支給停止が解除されると、遺族基礎年金を受給できます。
- 配偶者が受給権を有すると子は支給停止
- 親と子の生計が同一なら子は支給停止
- 併給調整により支給停止
- 所在不明により支給停止
- 遺族補償により支給停止
支給停止の要件は複数あるので、自分が何に該当しているか把握しておきましょう。