あなたの遺留分が侵害されているかどうかを知るには、計算の元となる金額を知る必要があります。
なぜなら、遺留分割合を知っていても、何に対してなのかが分からなければ意味がないからです。
亡くなった人の残した財産だけが、計算の対象になるわけではないです。場合によっては、亡くなる前に贈与した財産も遺留分の計算対象となります。
遺言書の内容があなたに不利だと感じたら、遺留分侵害額を計算してみてください。
目次
1.計算の基本ルール
遺留分にも計算式があるので、数字を当てはめて金額を計算します。
- 遺留分算定の基礎財産を計算する
- あなたの遺留分割合を計算する
- あなたの遺留分額を計算する
- あなたが取得した財産や負債を増減する
- 遺留分侵害額が判明する
今回の記事で説明しているのは、1番の基礎財産の計算になります。
2番は『遺留分の割合|9つの組み合わせを覚えておこう』で説明しておりますので、ご存じない場合は確認しておいてください。
基礎財産額に遺留分割合をかけて遺留分額を計算。
遺留分額に取得した財産や負担する債務を増減して、遺留分侵害額を算出します。
一番最初にするのが基礎財産の計算となります。
基礎財産とは以下の合計です。
- 相続開始時に有していた財産
- 遺贈・死因贈与
- 亡くなる前1年以内にされた贈与
- 相続人への特別受益(10年以内)
- 亡くなった人の負債
以下の項目でそれぞれ説明していきます。
2.相続開始時に有していた財産
当たり前ですが、亡くなった人の残した財産は計算の対象となります。
- 現金・預貯金
- 不動産
上記が一般的な財産ではないでしょうか。
2-1.現金・預貯金
相続開始時の残高が計算対象なので、特に問題は無いと思います。
2-2.不動産の評価は大変
相続財産に不動産がある場合は揉めやすいです。
なぜかというと、計算をする際の評価額をいくらにするかで、当事者の意見が合わないからです。
たとえば、財産が不動産しかない場合で、第3者に遺贈しているケースです。請求される側は低くなるように評価しますし、請求する側は高くなるように評価します。
遺留分は割合なので、不動産の評価額をいくらにするかで侵害額も変わります。
相続財産に不動産がある場合は、初めから専門家に相談することをお勧めします。
相続財産に不動産があると、遺留分計算で間違えやすいと言われています。不動産の評価方法は複数ありますが、遺留分計算で用いるのは時価評価です。不動産を相続発生時の時価で評価し遺留分の計算をします。あなたが遺留分を請求する側、ある[…]
3.遺贈・死因贈与
遺言書で遺贈されている財産と死亡を原因とする贈与も、遺留分の計算の対象となります。
3-1.相続人以外への遺贈も含む
遺贈されている相手が相続人以外であっても、遺留分の計算に含みます。
もちろん相続人の場合も含みます。
3-2.死因贈与は遺贈と同じ扱い
死因贈与とは簡単に説明すると、自分が亡くなったら贈与するという契約です。口頭でも成立するのですが、書面にしていることの方が多いと思います。
遺贈と同じ扱いとして遺留分の計算に含みます。
4.亡くなる前1年以内の贈与
亡くなる前1年以内に相続人以外へ贈与している場合は、遺留分計算の対象です。
*相続人に関しては別の決まりがあります。
贈与契約をした時期と贈与した時期が違う場合は、贈与契約をした時期で判断するとした判例があります。
生前贈与しているかどうかは、一緒に住んでいなければ気付くのが難しいです。亡くなった人の財産が思っていたより少ない場合には、生前贈与をしている可能性もあります。
4-1.当事者が侵害の事実を知っていた場合
当事者双方が遺留分を侵害することを知っていた場合は、贈与の期間に関係なく遺留分の計算に含みます。侵害することを知っていたかどうかなので、侵害する意思があったかどうかは無関係です。
5.相続人への特別受益(10年以内)
相続人に対する贈与に関しては、特別受益に該当する場合は遺留分の計算に含みます。
法改正により10年以内の特別受益が遺留分の計算に使われます。かつては無期限でしたが期限が設定されました。
特別受益に該当する主な贈与です。
- 結婚後の生活資金としての贈与
*原則として結婚費用は除きます - 住宅資金の援助としての贈与
- 生活支援としての贈与
特別受益に該当するかの判断も難しいので、相続人間で揉めやすいです。
*亡くなる前1年以内なら計算に含みます。
6.亡くなった人の負債
亡くなった人の負債は相続債務とも言われます。
主な負債です。
- 借金(銀行や消費者金融等)
- 医療費の未払金
- 税金の滞納分
プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も計算します。
マイナス財産の方が多い場合は、『相続放棄が該当者限定サービス料金』でご検討ください。
6-1.負債として控除できない費用
葬儀費用は遺留分の計算では、負債として控除することはできません。喪主の債務であるという考え方が有力です。
7.さいごに
遺留分侵害額を計算する際に揉めやすいのは、遺留分算定の基礎財産がいくらになるかです。高額になるほど遺留分額も増えますし、低額になるほど遺留分額も減ります。
生前贈与や特別受益を見つけたり、不動産の評価額をいくらにするかで基礎財産は変動します。
遺留分を計算する際は、遺留分の計算に慣れている専門家に相談することをお勧めします。