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【成年後見の同意権】類型により有無や範囲が違うので注意!

成年後見の同意権
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成年後見人には同意権という権利があります。

簡単に言えば、本人の法律行為に同意する権利のことです。同意を得ずに法律行為をすると、成年後見人は取り消すことができます。

ただし、成年後見の類型によって、同意権の有無や範囲が違います。

今回の記事では、成年後見の同意権について説明しているので、成年後見を利用する際の参考にしてください。

1.同意権とは同意を得ずにした行為を取り消す権利

成年後見人が有する権利の一つに「同意権」があります。

同意権
同意を得なければならない行為を、本人が同意を得ずにした場合は取り消すことができる権利

同意を得ていない法律行為は取り消せる

本人が不利な法律行為をした場合であっても、同意を得ていなければ取り消すことができます。

1-1.同意を得て行われた法律行為は取り消せない

当然ですが、成年後見人の同意を得て行われた法律行為は、後から取り消すことができません。

同意を得た法律行為は取り消せない

成年後見人が同意をしている以上、有効な法律行為として扱われます。たとえ本人に損害が発生するケースでも、取り消しは認められません。

成年後見人として同意権を行使する際は、本人に損害が発生しないよう十分に注意してください。

1-2.同意を得ずにした法律行為も無効ではない

勘違いしやすいのですが、同意を得ずに本人が法律行為をしても、当然に無効になるわけではありません。

なぜかというと、本人が同意を得ずに法律行為をしても、すべてが問題のある行為とは限りません。取り消す必要がなければ、後から同意して大丈夫です。

法律行為の後でも同意できる

法律行為の後に成年後見人が同意した場合でも、法律行為は有効に成立します。

法律行為の後に同意しても有効

 

2.成年後見の類型により同意権の有無が違う

一般的に、成年後見と聞けば、後見人を思い浮かべる人が多いです。

ですが、成年後見は3つの類型に分かれており、内容も違います。

  • 後見
  • 保佐
  • 補助

同意権についても、3つの類型によって違うので注意が必要です。

2-1.後見人は同意権を有していない

意外に思うかもしれませんが、後見人は同意権を有していません。

なぜかというと、本人(後見の対象者)の判断能力は完全に低下しているので、後見人の同意では本人を援助できないからです。

後見人の同意を得たからといって、本人が正しく法律行為をする保障はありません。後見人に同意権があると、同意を得た法律行為は取り消せなくなります。

ですので、後見人には同意権を付与せず、別の権利で本人を援助します。

法定後見人は代理権と取消権を有する

法定後見人は同意権を有していませんが、代わりに代理権と取消権を有しています。

法定後見人は本人を代理して法律行為ができますし、本人の法律行為を取り消すこともできます。

任意後見人は契約により代理権を有する

任意後見人は同意権を有していませんが、代わりに代理権を有しています。

ただし、法定後見人と違い、任意後見契約で定めた代理権についてのみです。また、取消権も有していません。

2-2.保佐人の同意権は重要な法律行為

保佐人重要な法律行為について、当然に同意権が付与されています。

主な重要な法律行為には、以下があります。

  • 金銭を借りる
  • 不動産の購入
  • 遺産分割をする

重要な法律行為を本人が保佐人の同意を得ずに行うと、保佐人は取り消すことができます。

以下は、民法の条文です。

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 (省略)
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法13条4項)

重要な法律行為以外も、家庭裁判所に申し立てることで、保佐人に同意権を付与することが可能です。

重要な法律行為については、下記の記事を参考にしてください。

2-3.補助人の同意権は重要な法律行為の一部

補助人は重要な法律行為の一部について、家庭裁判に対する申し立てにより同意権が付与されます。

家庭裁判所に同意権の付与を申し立てる際は、本人の同意が必要です。本人の同意がない限り、補助人に同意権は付与されません。

補助人に同意権が付与されている法律行為を、本人が同意を得ずに行うと取り消すことができます。

以下は、民法の条文です。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法17条4項)

補助人が選任されていても、同意権が付与されていないケースも存在します。

補助人に付与される権利

補助人に付与されている権利は、事例ごとに違うので注意してください。

 

3.さいごに

今回の記事では「成年後見の同意権」について説明しました。

同意権とは、同意を得なければならない行為を、本人が同意を得ずにした場合は取り消すことができる権利です。

ただし、成年後見の類型により、同意権に違いがあります。

成年後見の類型による同意権の違い
成年後見の類型 同意権
後見 ×
保佐 重要な法律行為
補助 重要な法律行為の一部
※申し立てが必要

後見人は同意権がありません。

保佐人は重要な法律行為について同意権を有しています。

補助人は申し立てにより重要な法律行為の一部について同意権が付与されます。

成年後見人が選任されていても、類型により同意権の有無や範囲が違うので、間違えないように注意してください。