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民法13条1項(保佐人の同意が必要な重要な法律行為)

民法13条に重要な法律行為が定められている
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保佐人は当然に重要な法律行為に関して、本人に対して同意権と取消権を有しています。

重要な法律行為とは民法第13条第1項各号に定められている行為です。けれども、実際にどのような行為が該当するかを、知っている人は少ないのではないでしょうか。

保佐と民法第13条第1項各号は切っても切れない関係となっていますので、保佐を検討されている場合は確認しておきましょう。

1.元本を領収または利用する

民法13条1項1号

民法13条1項1号は「元本を領収し、または利用すること」です。

元本を領収するとは、貸していたお金を返してもらうことです。借金を返済してもらうのに同意が必要なことに、違和感を感じられたかもしれません。元本の返済という点が重要です。

借金を返済してもらえるのは良いことなのですが、利息を受け取ることもできなくなります。ですので、元本を受け取る場合は、保佐人の同意が必要になっています。

利息を受け取ることに保佐人の同意が不要なのは、本人にとって損がないからです。

ちなみに、元本を領収するには預貯金の払い戻しも該当します。銀行に預けておくと利子が付くからです。ただし、日常生活で利用する少額の払い戻しに関しては除かれます。

利用するとは、金利を付けてお金を貸すことです。不利な内容でお金を貸したりしないようにするためです。

2.借財または保証をする

民法13条1項2号

民法13条1項2号は「借財または保証をすること」です。

借財とは借金のことです。人からお金を借りるのには保佐人の同意が必要となります。

2-1.借財にはお金を借りる以外も含む

借財には直接お金を借りる行為以外にも色々含まれます。

  • 金銭債務の消滅時効の放棄
  • 消滅時効完成後の債務の承認

金銭債務の消滅時効を放棄するのは、新たにお金を借りるのと同じだからです。

消滅時効完成後に債務の承認をするのは、本来払う必要がないお金を払うことになります。それに対して、消滅時効完成前に債務を承認するのは、本人が単独ですることができます。
債権の承認は保佐人の同意

2-2.保証人になる

他人の債務について保証人になることは、借金をするのと実質同じになるので保佐人の同意が必要です。保証人・連帯保証人どちらであっても変わりません。

3.不動産や重要な財産に関すること

民法13条1項3号

民法13条1項3号は「不動産その他重要な財産に関する権利の得失を目的とする行為をすること」です。

分かりやすく説明すると、不動産等の高額な財産に関することです。

3‐1.不動産の権利について

不動産の売却や抵当権の設定をするには、保佐人の同意が必要となります。不動産に抵当権を設定すると損失の可能性があるからです。

3‐2.その他重要な財産とは

自動車・債券・有価証券等が該当します。

自動車の売却も保佐人の同意が必要です。債権や有価証券は処分するタイミングによっては、損が発生することもあるからです。

4.訴訟行為をする

民法13条1項4号

民法13条1項4号は「訴訟行為をすること」です。

民事訴訟で原告として訴訟を遂行するすべての行為が該当します。保佐人の同意を得ずにされた訴訟行為は、取消しではなく無効とされています。

4‐1.被告としての応訴は除かれる

相手方が提起した訴訟に応訴するのは、相手方の利益を保護する必要があるため保佐人の同意は不要です。

4‐2.人事訴訟は除かれる

人事訴訟とは離婚や認知等を裁判で争うことです。離婚や認知をするのに保佐人の同意は不要です。

5.贈与・和解・仲裁合意をする

民法13条1項5号

民法13条1項5号は「贈与、和解または仲裁合意(仲裁法第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること」です。

贈与をすると本人の財産が減るので、保佐人の同意が必要となっています。それに対して、贈与を受けるのに保佐人の同意は不要です。

5‐1.和解や仲裁合意には譲歩が必要

誰かとトラブルになった際に和解や仲裁合意をする場合です。

和解や仲裁合意をするには、お互いに譲り合う必要があります。相手にどの程度譲るかが重要になるので、保佐人の同意が必要になっています。

6.相続に関すること

民法13条1項6号

民法13条1項6号は「相続の承認若しくは放棄または遺産の分割をすること」です。

相続の承認には、単純承認・法定単純承認・限定単純承認のすべてが含まれます。相続財産にはマイナスの財産も含まれるので、保佐人の同意が必要になっています。

6‐1.借金が理由でも同意は必要

相続放棄をする場合も保佐人の同意が必要になります。

放棄の理由が借金であっても保佐人の同意が必要です。なぜなら、借金以外に財産がある可能性もあるので、保佐人が関与するようにしているからです。

6‐2.遺産分割をする

本人が遺産分割協議をするには、保佐人の同意が必要です。分割案の内容によっては、本人に不利が生じる恐れがあるからです。

7.贈与を断る

民法13条1項7号

民法13条1項7号は「贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること」です。

贈与を断ったり遺贈を放棄するのは、利益を失うのと同じなので保佐人の同意が必要です。

7‐1.負担付を受けると損も発生する

負担付とは交換条件が付いている場合や、税金が発生する場合等が考えられます。贈与や遺贈により得られる利益よりも、条件や税金による損失の方が多いこともあるからです。

たとえば、固定資産税が発生する不動産(土地)を貰っても、利用価値が無ければ損をするからです。

8.不動産の工事について

民法13条1項8号

民法13条1項8号は「新築、改築、増築または大修繕をすること」です。

不動産の新築やリフォーム工事は高額な金銭が発生します。契約内容も複雑になりやすいので、保佐人の同意が必要になっています。

実際に不必要なリフォーム工事等で、多額な金銭を請求された話等も珍しくありませんので注意しましょう。

9・長期間の賃貸借をする

民法13条1項9号

民法13条1項9号は「第602条に定める期間を超える賃貸借をすること」です。

まずは、民法602条を確認しましょう。

(短期賃貸借)
第六百二条 処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月

出典:e-Govウェブサイト(民法602条)

上記の期間を超える賃貸・賃借は、保佐人の同意が必要となります。

例えば、半年間マンションを借りるのに、保佐人の同意は不要です。

10.重要な法律行為を法定代理人として行う

民法13条1項10号

民法13条1項10号は「前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。)の法定代理人としてすること」です。

被保佐人(本人)の子どもが未成年者だと、親として法定代理人になることもあります。重要な法律行為を未成年者の法定代理人として行うには、保佐人の同意が必要となります。

11.さいごに

保佐を検討されている人は、どのような行為に同意権と取消権が付与されるかを知っておく必要があります。民法第13条第1項は10号までありますので、一度は確認しておいてください。

保佐人が選任されていても、あくまでも重要な法律行為をするのは本人になります。同意権だけでは不安があるなら、個別に代理権の付与を申立てください。

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