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後見・保佐・補助の違い|法定後見には3つの類型がある

後見・保佐・補助の違い
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成年後見制度の法定後見には、後見・保佐・補助の3類型があります。

一般的に法定後見と呼ばれているのは、3類型の1つである後見のことです。実際の申立て件数も後見が一番多くなっています。

保佐・補助について知っている人は、まだまだ少ないのではないでしょうか。

今回の記事では、3類型の基本的な違いについて説明していきます。

目次

  1. 後見は判断能力を欠いている人を援助
    1. 成年後見人は当然に代理権が付与される
    2. 同意権は認められていない
  2. 保佐は判断能力が著しく不十分な人を援助
    1. 保佐人は重要な法律行為の同意権
    2. 権限を追加するには本人の同意が必要
  3. 補助は判断能力が不十分な人を援助
    1. 法律上当然に認められる権利はない
    2. 基本的には本人がすべて行う
  4. 3類型の申立件数(直近5年)
  5. まとめ

1.後見は判断能力を欠いている人を援助

3類型の1つである後見が、ほとんどの人が思い浮かべる法定後見のことです。

事理を弁識する能力を欠く常況にある」人が適用されます。

事理を弁識する能力
判断能力のこと
常況
普段のありさま(日常)

後見類型が適用されるのは、日常的に判断能力を欠いている状態の人です。
したがって、法律行為についての代理権と取消権で、本人を広範囲に援助することになります。

申立件数も3類型の中で一番多いです。利用者全体の約8割が後見類型となっております。

法定後見人と任意後見人との違いについては、『法定後見と任意後見の違い』で比較しています。

1-1.成年後見人は当然に代理権が付与される

成年後見人は法律上当然に、「代理権」と「取消権」が付与されます。

代理権

後見人は本人に代わって法律行為をすることが可能です。

本人は日常的に判断能力がない状態にあるので、代理権を当然に付与することで援助します。

取消権

後見人は本人がした行為(日常生活に関する行為を除く)を後から取消すことが可能です。
*日常生活に関する行為とはスーパーでの買い物等。

本人が契約をした場合等は、後見人が取消権を行使することで、本人を保護することができます。

1‐2.同意権は認められていない

後見人には同意権は認められていません。
なぜかというと、同意をしても判断能力を欠いている状態なので、本人の保護にならないからです。

例えば、判断能力を欠いている人は、同意を得ていても不動産取引を正しくできるとは限りません。

2.保佐は判断能力が著しく不十分な人を援助

3類型の1つである保佐は、後見よりも援助の範囲が狭いです。

「事理を弁識する能力が著しく不十分である」人が適用されます。著しく不十分とは、日常の買い物はできるが、不動産売買等の重要な取引は1人ではできない状態のことです。

重要な法律行為についてのみ、本人を援助するのが保佐となります。

重要な法律行為とは以下のものです。

  • 貸金の元本の返済を受ける
  • 金銭を借りたり保証人になる
  • 不動産等の重要な財産の取得や処分
  • 民事訴訟で原告となる訴訟行為
  • 贈与や和解・仲裁契約
  • 相続の承認・放棄・遺産分割
  • 贈与・遺贈の拒絶、不利な贈与・遺贈を受ける
  • 新築・改築・増築や大修繕
  • 一定の期間を超える賃貸借契約

具体的にどのような行為が該当するかは『民法第13条第1項に定められている行為|具体的にどのような行為が該当するのか』をご覧ください。

2-1.保佐人は重要な法律行為の同意権

民法で定められた特定の法律行為についてのみ、同意権と取消権が付与されます。不動産の売買等の重要な取引を保佐人の同意を得ずに行った場合は、保佐人は後から取消すことができます。

保佐人の取消権

保佐人の同意権

あくまでも、保佐人から同意を得るのであって、重要な法律行為自体は本人が行います。

2‐2.権限を追加するには同意が必要

家庭裁判所の審判により、特定の法律行為について同意権と取消権を追加したり、代理権を付与することも可能です。

ただし、申し立てをするには、本人の権利がむやみに侵害されることを防ぐため、本人の同意が必要です。

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3.補助は判断能力が不十分な人を援助

3類型の1つである補助は、援助の範囲が一番狭いです。

「事理を弁識する能力が不十分な」人が適用されます。

不十分とは、不動産売買等の重要な取引行為を1人でするのに不安がある状態のことです。

3類型の中で唯一申立てをするのに本人の同意が必要になります。なぜなら、本人の判断能力は依然としてあるからです。

本人が同意した範囲でのみ、本人を援助するのが補助です。

3-1.法律上当然に認められる権利はない

補助人には法律上当然に認められる権利はありません。個別の法律行為について、代理権・同意権・取消権の付与の申立てが必要です。

包括的な申立ては認められていないので、個別の法律行為についての申立てとなります。
*申立てには本人の同意が必要です。

補助開始の申立てと同時に同意権付与の申立てをします。

3-2.基本的には本人がすべて行う

基本的には本人がすべて行うのですが、一部の1人で行うには難しい行為等についてのみ補助人の援助を受けます。

ですので、人によっては補助人が選任されていても、日常生活にまったく変わりがないこともあります。

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4.3類型の申立件数(直近5年)

毎年、成年後見関係事件の概況というのが、最高裁判所事務総局家庭局より公表されています。

成年後見の申立て件数も確認できます。3類型の件数比較を表にしたので参考にしてください。

法定後見の申立て件数比較
補助 保佐 後見
2016 1,297 5,325 26,836
2017 1,377 57,58 27,798
2018 1,499 6,297 27,989
2019 1,990 6,745 26,476
2020 2,600 7,530 26,367

〈最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和2年)」のデータより〉

補助と保佐の申立件数が増えています。特に補助に関しては、5年前に比べて2倍になっています。

補助や保佐の認知度が、昔に比べると上がっているのかもしれません。

 

5.まとめ

後見・保佐・補助は本人の判断能力に違いがある
後見類型と判断能力の関係
3類型の比較
類型 後見 保佐 補助
判断能力 常に欠く 著しく
不十分
不十分
申立てに
本人の同意
不要 不要 必要
代理権 あり 家庭裁判所が
認めた特定の行為
同意権 なし 重要な行為 重要な行為
の一部
取消権 あり 同意を得ずに
行った重要な行為

上記の表のとおり、本人の判断能力によって、後見人等に付与される権利の範囲が違います。判断能力が完全に低下する前でも、本人を援助することは可能です。

今回の記事では、3類型の基本的な違いについて説明しました。あまり意識して申立てをすることは無いと思いますが、法定後見には3つあることだけ知っておいてください。

後見開始の申立に関しては『成年後見の申立て手続き』で説明しております。