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遺言執行者の辞退と辞任では手続きが大きく違う

遺言執行者の辞退と辞任
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遺言執行者を辞退するのと辞任するのとでは、大きく手続きが違うのはご存知でしょうか。

遺言執行者に就任する前なら自由に辞退できますが、就任した後は辞任するのに家庭裁判所の許可が必要です。

そして、家庭裁判所の許可を得るには、辞任するのに正当な理由も求められます。

今回の記事では、遺言執行者の辞退と辞任について説明しているので、遺言執行者に指定されているなら参考にしてください。

1.遺言執行者に就任する前なら辞退できる

亡くなった人の遺言書で遺言執行者に指定されていても、就任する前なら辞退することができます。

勘違いしやすいのですが、遺言書で指定されたからといって、自動的に就任するわけではありません。

(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法1007条)

遺言執行者に指定された人が、就任を承諾すれば遺言執行者になります。

つまり、指定された人が就任を辞退すれば、遺言執行者にはなっていません。

遺言執行者の指定

1-1.就任を辞退する方法は決まっていない

遺言執行者への就任を辞退する方法は決まっていません。相続人に辞退する旨が伝われば大丈夫です。

口頭や電話で辞退を伝えることもできますが、一般的には書面で伝えます。

なぜなら、口頭や電話で伝えると、後から「聞いてなかった」や「知らなかった」で揉める可能性が残ってしまうからです。

証拠を残すという意味でも、就任を辞退する場合は書面で伝えましょう。

通知書

遺言者 亡〇〇 〇〇
令和〇年〇月〇日死亡

私は、令和〇年〇月〇日付け公正証書遺言により遺言執行者に指定されていますが、遺言執行者に就任することを辞退します。

令和〇年〇月〇日 〇〇 〇〇

辞退する理由は記載する必要がないので、辞退する旨が伝わればいいです。

1-2.遺言執行者の就任を辞退する理由は自由

遺言執行者の就任を承諾するかどうかは自由なので、辞退する理由は問われないです。

以下は、辞退する主な理由になります。

  • 体力面での不安
  • 金銭面での不満

遺言執行者に指定されていた人も年齢を重ねるので、体力的に遺言執行をするのが難しいこともあります。あるいは、指定した専門家が引退しているかもしれません。

遺言書に記載した遺言執行者の報酬額が低ければ、割に合わないので就任を拒否する人もいます。前もって報酬額についても同意を得ておきましょう。

1-3.相続人は就任するかどうか催告できる

遺言執行者に指定されている人から、いつまで経っても意思表示がされなければ相続人は困ってしまいます。

ですので、相続人および利害関係人(受遺者等)は、遺言執行者に就任するかどうか聞くことができます。

(遺言執行者に対する就職の催告)
第千八条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。

出典:e-Govウェブサイト(民法1008条)

返答期間内に返答がなければ、遺言執行者への就任を承諾したものとみなします。

遺言執行者に対する就職の催告
回答 結果
承諾 就任
拒否 辞退
無回答 就任

遺言執行者に指定されている人は、返答期間内に就任するかどうかを決めましょう。

 

2.遺言執行者を辞任するには家庭裁判所の許可

遺言執行者に就任してから辞任する場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

就任する前であれば自由に辞退できたのですが、就任した後は家庭裁判所の許可がなければ辞任することができません。

(遺言執行者の解任及び辞任)
第千十九条 (省略)
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1019条2項)

遺言執行者を辞任するなら、家庭裁判所に申立てをしましょう。

2-1.遺言執行者の辞任についての許可申立

遺言執行者の辞任についての許可申立書は、遺言者(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

許可申立書を提出する際は、収入印紙と予納郵券が必要になります。

収入印紙は800円分で共通ですが、予納郵券は家庭裁判所により違います。


例として大阪家庭裁判所の予納郵券です。

  • 500円×2枚
  • 84円×10枚
  • 50円×2枚
  • 10円×5枚
  • 2円×6枚
  • 1円×10枚

合計で2,012円です。切手の内訳も決まっているので、必ず提出先の家庭裁判所に確認しておきましょう。

2-2.辞任するには正当な理由が必要

遺言執行者に就任する前なら自由に辞退できるのですが、一度就任してしまうと辞任するのに正当な理由が必要となります。

正当な理由とは、以下のようなものです。

  • 病気になった
  • 遠方に転勤になった
  • 多忙な職務への就職

遺言執行者として職務を行うのが難しくなったので、遺言執行者を辞任するということです。

許可申立書に面倒になったから辞任したいと記載しても、家庭裁判所の許可を得るのは難しいでしょう。

 

3.遺言執行者の仕事は第3者に任せることも可能

遺言執行者に就任したが、相続手続きが難しいと感じることもあります。

相続手続きが難しいので辞任を考える人もいますが、第3者に任せることも可能です。

以下のような個別の行為は、第3者に任せることも多いです。

  • 遠方にある預貯金口座の手続き
  • 不動産の相続登記

上記以外でも、専門家にアドバイスを貰うことは自由にできます。

ただし、第3者に任せれる範囲は遺言書によって違うので、あらかじめ確認しておいてください。

 

4.さいごに

遺言書で遺言執行者に指定されている場合、辞退するのと辞任するのとでは大きな違いがあります。

遺言執行者への就任を辞退するのは簡単ですが、就任した後で辞任するには家庭裁判所の許可が必要です。

また、辞退するのに理由は関係ありませんが、辞任するには正当な理由が求められます。

辞退と辞任の比較
辞退 辞任
断る方法 決まりは無い
一般的には書面
家庭裁判所の許可
断る理由 自由 正当な理由

遺言執行者に指定されている場合は、辞退と辞任では手続きが違うということを知っておいてください。