遺言書で遺言執行者を指定しても、遺言執行者が死亡することもあります。
亡くなったのが相続開始前か相続開始後かで、その後にできる対応に違いがあります。
相続開始前であれば、新しい遺言執行者を指定することも可能です。相続開始後であれば、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てができます。
今回の記事では、遺言執行者の死亡について説明しているので、該当する部分があれば参考にしてください。
1.相続開始前に遺言執行者が死亡
遺言書で遺言執行者を指定していても、遺言者よりも先に指定された人が亡くなることもあります。
相続開始前に指定された人が亡くなった場合、その後の対応は2つ考えられます。
- 新たに遺言執行者を指定する
- 相続開始後に遺言執行者の選任申立て
1-1.新たに遺言執行者を指定する
遺言者が健在であれば、新たに遺言書で遺言執行者を指定することもできます。
遺言書は何度でも書き直すことができるので、指定したい人がいるなら新たに遺言書で指定しましょう。
ただし、新たに公正証書遺言を作成するには、再度手数料が必要になります。
1-2.相続開始後に遺言執行者の選任申立て
遺言執行者に指定した人が亡くなっていることに、相続開始後に気付くこともあります。
あるいは、相続開始前に気付いたが遺言者の判断能力が低下していて、遺言書を新たに作成することが難しいこともあります。
上記のような場合は、相続開始後に遺言執行者の選任申立てをすることができます。
家庭裁判所に選任された遺言執行者が、遺言書の内容を執行してくれます。
関連記事を読む『遺言執行者の選任申立てを家庭裁判所にすることもできる』
1-3.遺言執行者が亡くなっても遺言書は有効
遺言執行者に指定した人が亡くなっても、遺言書の効力には影響ありません。
相続開始前に遺言執行者が亡くなったからといって、遺言書が無効になるわけではないです。
相続分の指定や遺贈などは有効に成立するので、間違えないように気を付けてください。
2.相続開始後に遺言執行者が死亡
相続開始後に遺言執行者が死亡した場合、就任前と就任後で違う部分があります。
- 就任前なら何も発生していない
- 就任後なら報酬請求権に注意
2-1.遺言執行者が就任前に亡くなった
遺言執行者が就任の承諾をする前に亡くなった場合は、相続開始前に亡くなった場合と手続きは同じです。
なぜなら、遺言書で指定されていても、就任を承諾していなければ遺言執行者ではないからです。
家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをして、新しい遺言執行者に遺言書の内容を執行してもらいます。
関連記事を読む『遺言執行者の辞退と辞任では手続きが大きく違う』
2-2.就任後に亡くなると報酬請求権に注意
遺言執行者が就任後に亡くなった場合、遺言執行の進み具合によって報酬請求権が発生しています。
*遺言書で無報酬にしていた場合は除きます。
例えば、報酬額が50万円と指定されていて、遺言執行を半分まで終了させてから亡くなると、報酬額の半分は請求する権利が発生しています。
発生した報酬請求権は、遺言執行者の相続人が相続します。新しい遺言執行者が引き継ぐわけではないので、間違えないように注意しましょう。
3.遺言書で予備的に遺言執行者を指定できる
遺言書で遺言執行者を指定する際に、予備的に遺言執行者を指定することもできます。
分かりやすく説明するなら、遺言執行者の第2候補を指定するということです。
例えば、長男を遺言執行者(第1候補)に指定するが、亡くなっている場合は次男を遺言執行者(第2候補)に指定する。
長男が亡くなっていることを条件として、次男を遺言執行者に指定しています。
以下は、遺言書で予備的に遺言執行者を指定した場合の例です。
遺言書
第○条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男○○を指定する。
ただし、長男が遺言者の死亡以前に死亡したときは、二男○○を指定する。
遺言執行者を頼める人が複数人存在するなら、予備的に遺言執行者を指定することも検討しておきましょう。
4.さいごに
遺言書で遺言執行者を指定していても、遺言者よりも先に亡くなることは珍しくありません。
遺言者が健在なうちに亡くなったことに気付けば、遺言書で新しい遺言執行者を指定することも可能です。
遺言執行者を新しく指定しなかった場合や、相続開始後に気付いた場合は家庭裁判所に選任申立てができます。
遺言書で指定された人が亡くなっても、遺言書が無効になるわけではないので、慌てずに対応策を考えましょう。