遺言執行者を解任することは可能です。
ただし、解任するには解任事由が必要となります。
- 遺言執行者が任務を怠った
- その他正当な事由がある
上記に該当すれば、家庭裁判所に解任請求をすることができます。
今回の記事では、遺言執行者の解任について説明しているので、遺言執行者で悩んでいれば参考にしてください。
目次
1.遺言執行者を解任するには解任事由が必要
遺言執行者を解任することはできますが、解任するには法律で定めた事由に該当する必要があります。
遺言執行者を解任するには、以下のどちらかが必要です。
- 遺言執行者が任務を怠った
- その他正当な事由がある
1-1.遺言執行者が任務を怠った
遺言執行者が任務を怠っていれば、家庭裁判所に解任請求をすることができます。
任務を怠った主な例としては、以下の3つがあります。
- 遺言執行者が遺言執行を速やかに行わない
- 遺言執行者が相続財産目録を渡さない
- 遺言執行者が執行状況を教えてくれない
上記はいずれも遺言執行者の義務違反となります。
ただし、遺言執行者が任務を怠っていたとしても、程度によっては解任請求が認められないこともあります。
関連記事を読む『遺言執行者には義務もあるので就任前に確認しておこう』
1-2.解任する正当な事由とは?
遺言執行者を解任する正当な事由があるときには、以下のようなケースがあります。
- 遺言執行者が長期入院している
- 特定の相続人等に有利な取り扱いをしている
- 遺言執行者が財産を着服している
一般的には、遺言執行者が長期入院する場合等は辞任しますが、辞任しない場合には解任請求もできます。あるいは、意思表示ができない状態かもしれません。
相続人と受遺者がいる場合に、遺言執行者が相続人に有利な取り扱いをしていれば、受遺者は解任請求することができます。
当然ですが、遺言執行者が相続財産を着服していれば解任請求できます。
2.家庭裁判所に解任請求する
遺言執行者が解任事由に該当したとしても、自動的に解任されるわけではありません。
遺言執行者を解任するには、利害関係人が家庭裁判所に解任請求をする必要があります。
2-1.解任を請求できるのは利害関係人
遺言執行者の解任請求ができるのは、法律上の利害関係人だけです。
- 相続人
- 受遺者
- 共同遺言執行者
上記以外の人でも、利害関係があれば解任請求することができます。
2-2.申立てには複数の書類が必要
遺言執行者の解任請求をするには、複数の書類が必要となります。
主な書類は以下のとおりです。
- 遺言執行者解任申立書
- 遺言書の写しまたは選任審判書
- 利害関係を証する資料
- 解任事由を証する資料
利害関係を証する資料とは、相続人であれば戸籍謄本が該当します。
3.遺言執行者を解任できないケース
遺言執行者を解任できないケースもあります。間違えやすいので注意してください。
- 遺言執行者が就任の承諾をしていない
- 複代理人が遺言執行業務を進めている
- 遺言執行者に報酬を払いたくない
3-1.遺言執行者が就任の承諾をしていない
遺言書で遺言執行者が指定されていても、就任の承諾をしていなければ遺言執行者ではありません。
ですので、就任の承諾をしないからといって、家庭裁判所に解任の請求をすることはできません。
遺言執行者に指定されている人が就任を拒否すれば、遺言執行者は存在しないので選任申立てができます。
関連記事を読む『遺言執行者の選任申立てを家庭裁判所にすることもできる』
3-2.複代理人が遺言執行業務を進めている
遺言執行者が入院している場合でも、複代理人が遺言執行業務を行っていれば、解任請求をすることはできません。
なぜなら、復代理人が遺言執行業務を問題なく進めていれば、解任事由に該当しないからです。
遺言執行者が入院している場合等は、復代理人を選任しているか確認してください。
関連記事を読む『遺言執行者の復任権は法改正の前後で真逆になる』
3-3.遺言執行者に報酬を払いたくない
遺言書で遺言執行者の報酬を決めているのは珍しくありません。
ただし、相続人からすると、遺言執行者の報酬は高額だと感じることも多いです。自分で遺言執行をすれば無料になるので、遺言執行者を解任したいと相談される人もいます。
ですが、遺言執行者に報酬を払いたくないでは、解任請求は認められないでしょう。
*専門家(弁護士等)を遺言執行者に指定する場合、報酬は自由設定なので依頼する人によって違います。
以下は、弁護士を遺言執行者にした場合の旧基準額です。
経済的利益 | 報酬額 |
---|---|
300万円以下 | 30万円 |
300万円超 3,000万円以下 |
2%+24万円 |
3000万円超 3億円以下 |
1%+54万円 |
3億円超 | 0.5%+204万円 |
報酬が自由設定になった後も、目安として旧基準額を利用している人はいます。
4.さいごに
遺言執行者を解任することはできます。
ただし、自由に解任できるわけではなく、解任事由が必要です。
- 遺言執行者が任務を怠った
- その他正当な事由がある
遺言執行者が任務を怠っていれば、相続人(受遺者等)は家庭裁判所に解任請求をすることができます。
遺言執行者が解任されたら、新しい遺言執行者を選任することもできます。