遺言執行者に就任するなら、権利だけでなく義務も知っておいてください。
遺言執行者が義務に違反すると、解任されたり損害賠償責任が発生することもあります。
遺言書により遺言執行者に指定されているなら、就任する前に確認しておいてください。
目次
1.遺言執行者に就任したら直ちに任務を開始する義務
1つ目の義務は、就任したら直ちに任務を開始するです。
遺言執行者に指定されていた人または家庭裁判所に選任された人は、就任したら直ちに任務を開始する義務があります。
正当な理由なく任務を開始しなければ、解任事由に該当する可能性もあります。
ですので、仕事が忙しいなどの理由があるなら、遺言執行者を辞退することも検討しましょう。
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2.遺言執行者は遺言書の内容を相続人に通知する義務
2つ目の義務は、相続人に遺言書の内容を通知するです。
遺言執行者は任務を開始したら、遅滞なく遺言書の内容を相続人に通知する義務があります。
相続人は遺言書の内容を知る必要があるので、遺言執行者はすべての相続人に対して通知する義務があります。
たとえ遺留分が無い相続人(兄弟姉妹等)であっても、遺言書の内容は通知する必要があります。
なぜなら、遺言書の内容を確認しなければ、相続財産を取得できるかどうか判断できないからです。遺言書から漏れている財産があれば、相続人が相続します。
ちなみに、相続人が住民票上の住所を移転しておらず、所在不明になっている場合は通知義務は負わないと考えられます。
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3.遺言執行者は相続財産目録を作成して交付する義務
3つ目の義務は、相続財産目録の作成および交付義務です。
遺言執行者は遅滞なく相続財産目録を作成して、相続人に交付しなければいけません。
ただし、相続財産目録に記載するのは、遺言書に記載されている財産だけです。遺言執行者は遺言書の内容を執行する権限は有していますが、遺言書に記載されていない財産については対象外となります。
例えば、遺言書に記載されているのが不動産だけであれば、遺言執行者が相続財産目録に記載するのも不動産だけになります。
4.遺言執行者は遺言書の内容を執行する義務
4つ目の義務は、遺言書の内容を執行するです。
遺言執行者は遺言書の内容を実現するため、遺言の執行に必要な一切の権利義務を有しています。
遺言書の内容を執行する義務があるので、放置したことにより相続人(受遺者)に損害を与えると、損害賠償責任も発生します。
主な執行業務には、以下があります。
- 受遺者への財産引渡し
- 不動産の名義変更
- 預貯金の解約手続き等
遺言執行は後回しにせず、早めに手続きを進めましょう。
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5.遺言執行者に関するその他の義務
その他の義務についても、簡単に説明していきます。
遺言執行者は委任に関する法律も準用されています。
委任に関する法律で、遺言執行者に準用される義務は以下になります。
- 善管注意義務(644条)
- 報告義務(645条)
- 引渡し義務(646条)
- 補償義務(647条)
5-1.遺言執行者の注意義務は通常よりも重い
遺言執行者には善管注意義務があります。
- 善管注意義務
- 職業や社会的地位から考えて通常要求される注意義務のこと
遺言執行者には、自分の財産に対する注意義務よりも、重い注意義務が課されています。
ですので、不注意により相続財産に損害を与えると、損害賠償責任が発生します。
5-2.相続人に対する報告義務
遺言執行者には相続人に対する報告義務があります。
遺言執行者は相続人から執行状況を聞かれたときは、現状を報告する義務があります。
相続人に返答しなければ、遺言執行者の解任事由に該当する可能性があります。
5-3.相続人に対する引渡し義務
遺言執行者には、遺言執行をするうえで受け取った金銭等を、相続人に引渡す義務があります。
遺言執行をするうえで受け取った財産などは、相続人に引き渡さなければなりません。
正当な理由なく財産を引き渡さなければ、遺言執行者の解任事由に該当する可能性があります。
5-4.相続人に対する補償義務
遺言執行者が相続人に引渡す金銭を自分のために消費したときは、消費後の利息も支払わなければなりません。
相続人に引き渡す金銭は遺言執行者のお金ではないので、自分のために使ったときは利息も支払う義務があります。
また、金銭を消費したことにより損害を与えた場合は、損害賠償責任も負います。
6.さいごに
遺言執行者には権利だけでなく義務もあります。
遺言執行者が義務に違反すると、「解任事由に該当する」や「損害賠償責任の発生」などが考えられます。
遺言書で遺言執行者に指定された場合は、義務があることも理解したうえで就任してください。
一方、相続人の立場なら、遺言執行者に状況確認などを求める権利があります。
法改正により、新しく明記された義務もあるので、あらかじめ確認しておいてください。
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