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遺贈義務者は誰なのか|遺言者の代わりに遺贈を実行する人

遺贈義務者
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遺言書に記載された遺贈を、誰が実行するかはご存知でしょうか。

当然ですが、遺言者はすでに亡くなっています。そのため遺言者以外の人が遺贈義務者となります。

遺贈義務者は以下の順番で確認します。

  • 遺言執行者
  • 相続人
  • 相続財産管理人

今回の記事では、遺贈義務者について説明しているので、誰が遺贈義務者か分からない場合は参考にしてください。

1.遺言者は亡くなっている

遺贈の効力が発生するのは、遺言者が亡くなった時です。

(遺言の効力の発生時期)
第九百八十五条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

出典:e-Govウェブサイト(民法985条)

当然ですが、遺贈の効力が発生した時には、遺言者は亡くなっているので遺贈義務者にはなりません。

遺言書は亡くなった人の意思表示なのですが、遺言書の内容を実行するのは別の人になります。

 

2.遺贈義務者には優先順位がある

遺言者はすでに亡くなっているので、遺贈義務者が誰になるのかを確認していきましょう。

誰が遺贈義務者になるかというと、以下の順番で確認します。

  1. 遺言執行者
  2. 相続人
  3. 相続財産管理人

遺贈義務者の順番

2-1.遺言執行者が選任されている

遺言執行者が遺贈義務者

遺言執行者が選任されていれば、遺言執行者が遺贈義務者となります。

遺言執行者は遺言書で指定する場合や、家庭裁判所に選任申立てをする場合があります。

(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1012条)

遺言執行者は法律により、遺言の内容を実現するために必要な権利義務を有しています。

まずは、遺言執行者が選任されているかどうかを確認してください。

2-2.相続人は権利義務を引き継ぐ

相続人が遺贈義務者

遺言執行者がいなければ、相続人が遺贈義務者となります。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

出典:e-Govウェブサイト(民法896条)

遺言書は亡くなった人の意思表示なので、相続人が権利義務を承継して実行します。

相続人全員が義務者

相続人が複数人いる場合は、全員が遺贈義務者となります。

遺贈する財産に不動産が含まれていると、登記義務者は相続人全員です。

包括受遺者は相続人と同じ扱い

包括遺贈を受けた人を包括受遺者といいます。

包括遺贈とは、「全財産を遺贈する」や「遺産の2分の1を遺贈する」等のことです。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するので、遺贈義務者となります。

2-3.相続財産管理人が選任されている

相続財産管理人が遺贈義務者

遺言執行者が選任されてなく、かつ、相続人もいない場合があります。

亡くなった人の相続財産を管理する人がいない場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立てをすることができます。

相続財産管理人が選任されている場合は、相続財産管理人が遺贈義務者となります。

 

3.遺贈義務者は引渡し義務を負う

遺贈義務者には引渡し義務があります。

(遺贈義務者の引渡義務)
第九百九十八条 遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時(その後に当該物又は権利について遺贈の目的として特定した場合にあっては、その特定した時)の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

出典:e-Govウェブサイト(民法998条)

遺贈義務者には引き渡し義務があるので、受遺者から引き渡しを請求された場合は拒むことができません。不動産であれば所有権移転登記をする義務も負います。

また、相続開始時の状態で引き渡す必要があるので、勝手に売却等をすると法的責任を負うことになります。

相続人の負担を下げるためにも、できる限り遺言執行者を選任しておく方が良いです。遺言執行者を選任しておけば、相続人が引き渡し義務を負うこともありません。

 

4.遺言を実現するための行為は2つに分かれる

遺言を実現するために、遺贈義務者が行う行為は大きく分けて2つです。

  • 財産の引渡し
  • 不動産の名義変更

遺言の内容を実現する行為

4-1.財産は相続発生時の状態で引き渡す

財産の引渡しですが、実際には金銭の引渡しが多いでしょう。金銭の引渡しといっても、現金を手渡しすることは少ないので、受遺者の口座に振り込むことになります。

動産を引き渡す場合は、相続発生時の状態で引き渡す必要があります。

4-2.不動産の名義変更は義務者に注意

遺贈の対象物が不動産の場合、不動産の名義変更も遺贈義務者が行う行為となります。

なぜなら、遺贈を原因とする所有権移転登記は、受遺者と遺贈義務者の共同申請となるからです。

気を付ける点としては、相続人が遺贈義務者の場合、相続人全員が登記義務者となる点です。

 

5.受遺者に遺贈を拒否されることもある

亡くなった人が遺贈をしても、受遺者が受取を拒否することもあります。遺贈は遺言者の一方的な意思表示なので、受遺者が拒否するのも自由だからです。

遺贈の受取を拒否する場合の意思表示は、遺贈義務者に対して行われます。後から揉めないように、受遺者の意思表示は書面で残しておきましょう。

拒否された財産は相続人が相続します。ただし、遺言書に別段の定めがあれば従います。

 

6.さいごに

遺言書に遺贈を記載しても、実際に実行するのは遺言者ではなく遺贈義務者となります。

遺贈義務者になるのは以下の人です。

  • 遺言執行者
  • 相続人
  • 相続財産管理人

遺言執行者が選任されていれば、相続人が遺贈義務を負うことはありません。

相続人の労力を省くためにも、できる限り遺言書で遺言執行者を指定しておいてください。