遺言書に記載された遺贈を、誰が実行するかはご存知でしょうか。
当然ですが、遺言者はすでに亡くなっています。そのため遺言者以外の人が遺贈義務者となります。
遺贈義務者は以下の順番で確認します。
- 遺言執行者
- 相続人
- 相続財産管理人
今回の記事では、遺贈義務者について説明しているので、誰が遺贈義務者か分からない場合は参考にしてください。
目次
1.遺言者は亡くなっている
遺贈の効力が発生するのは、遺言者が亡くなった時です。
当然ですが、遺贈の効力が発生した時には、遺言者は亡くなっているので遺贈義務者にはなりません。
遺言書は亡くなった人の意思表示なのですが、遺言書の内容を実行するのは別の人になります。
2.遺贈義務者には優先順位がある
遺言者はすでに亡くなっているので、遺贈義務者が誰になるのかを確認していきましょう。
誰が遺贈義務者になるかというと、以下の順番で確認します。
- 遺言執行者
- 相続人
- 相続財産管理人
2-1.遺言執行者が選任されている
遺言執行者が選任されていれば、遺言執行者が遺贈義務者となります。
遺言執行者は遺言書で指定する場合や、家庭裁判所に選任申立てをする場合があります。
遺言執行者は法律により、遺言の内容を実現するために必要な権利義務を有しています。
まずは、遺言執行者が選任されているかどうかを確認してください。
関連記事を読む『遺言執行者には義務もあるので就任前に確認しておこう』
2-2.相続人は権利義務を引き継ぐ
遺言執行者がいなければ、相続人が遺贈義務者となります。
遺言書は亡くなった人の意思表示なので、相続人が権利義務を承継して実行します。
相続人全員が義務者
相続人が複数人いる場合は、全員が遺贈義務者となります。
遺贈する財産に不動産が含まれていると、登記義務者は相続人全員です。
包括受遺者は相続人と同じ扱い
包括遺贈を受けた人を包括受遺者といいます。
包括遺贈とは、「全財産を遺贈する」や「遺産の2分の1を遺贈する」等のことです。
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するので、遺贈義務者となります。
2-3.相続財産管理人が選任されている
遺言執行者が選任されてなく、かつ、相続人もいない場合があります。
亡くなった人の相続財産を管理する人がいない場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立てをすることができます。
相続財産管理人が選任されている場合は、相続財産管理人が遺贈義務者となります。
関連記事を読む『相続財産管理人の選任申立てをするなら手順を確認しよう』
3.遺贈義務者は引渡し義務を負う
遺贈義務者には引渡し義務があります。
遺贈義務者には引き渡し義務があるので、受遺者から引き渡しを請求された場合は拒むことができません。不動産であれば所有権移転登記をする義務も負います。
また、相続開始時の状態で引き渡す必要があるので、勝手に売却等をすると法的責任を負うことになります。
相続人の負担を下げるためにも、できる限り遺言執行者を選任しておく方が良いです。遺言執行者を選任しておけば、相続人が引き渡し義務を負うこともありません。
4.遺言を実現するための行為は2つに分かれる
遺言を実現するために、遺贈義務者が行う行為は大きく分けて2つです。
- 財産の引渡し
- 不動産の名義変更
4-1.財産は相続発生時の状態で引き渡す
財産の引渡しですが、実際には金銭の引渡しが多いでしょう。金銭の引渡しといっても、現金を手渡しすることは少ないので、受遺者の口座に振り込むことになります。
動産を引き渡す場合は、相続発生時の状態で引き渡す必要があります。
4-2.不動産の名義変更は義務者に注意
遺贈の対象物が不動産の場合、不動産の名義変更も遺贈義務者が行う行為となります。
なぜなら、遺贈を原因とする所有権移転登記は、受遺者と遺贈義務者の共同申請となるからです。
気を付ける点としては、相続人が遺贈義務者の場合、相続人全員が登記義務者となる点です。
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5.受遺者に遺贈を拒否されることもある
亡くなった人が遺贈をしても、受遺者が受取を拒否することもあります。遺贈は遺言者の一方的な意思表示なので、受遺者が拒否するのも自由だからです。
遺贈の受取を拒否する場合の意思表示は、遺贈義務者に対して行われます。後から揉めないように、受遺者の意思表示は書面で残しておきましょう。
拒否された財産は相続人が相続します。ただし、遺言書に別段の定めがあれば従います。
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6.さいごに
遺言書に遺贈を記載しても、実際に実行するのは遺言者ではなく遺贈義務者となります。
遺贈義務者になるのは以下の人です。
- 遺言執行者
- 相続人
- 相続財産管理人
遺言執行者が選任されていれば、相続人が遺贈義務を負うことはありません。
相続人の労力を省くためにも、できる限り遺言書で遺言執行者を指定しておいてください。