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特別代理人が遺産分割協議書に署名捺印をする

特別代理人が遺産分割協議に参加
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亡くなった人の遺産分割協議をするのに、特別代理人が必要と言われていませんか。

亡くなった人の相続人に未成年者や被後見人がいると、遺産分割協議が利益相反行為に該当しやすいです。

利益相反行為に該当する場合は、特別代理人を選任して未成年者や被後見人の代わりに遺産分割協議に参加してもらいます。

今回の記事では、特別代理人が遺産分割協議に参加するケースについても説明しているので、特別代理人が必要かどうか確認してください。

1.遺産分割協議は利益相反行為に該当する

親権者と未成年者または後見人と被後見人が利益相反に該当すると、特別代理人を選任する必要があります。

(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
(利益相反行為)
第八百六十条 第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

出典:e-Govウェブサイト(民法826条・860条)

特別代理人を選任しなければ、利益相反行為はすることができません。利益相反行為には遺産分割協議も含まれます。

ただし、未成年者や被後見人が相続人だからといって、すべての遺産分割協議が利益相反になるわけではありません。

 

2.親権者が遺産分割で利益相反になるケースは2つ

親権者が遺産分割協議で利益相反行為に該当するケースは2つあります。

  • 親権者と未成年者が利益相反
  • 未成年者と未成年者が利益相反

2-1.親権者と未成年者が共同相続人

親権者と未成年者が共同相続人になっていると、遺産分割協議は利益相反に該当します。

例えば、父親が亡くなり母親(親権者)と未成年の子どもが相続人になるケースです。

未成年者と利益相反

親権者である母親が子供の法定代理人になるのですが、母親も相続人であるためお互いの利益が相反してしまいます

子どもの利益が侵害されないために特別代理人を選任して、母親と特別代理人が遺産分割協議を行います。

2-2.2人以上の未成年者が相続人

親権者が相続人になっていなくても、2人以上の未成年者が相続人になっていると特別代理人が必要です。

(利益相反行為)
第八百二十六条
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法826条2項)

親権者は未成年者それぞれの法定代理人となるので、未成年者同士で利益が相反してしまいます。

未成年者が複数人

未成年者が2人なら特別代理人を1人、未成年者が3人なら特別代理人を2人選任して遺産分割協議を行います。親権者も1人については代理することができます。

 

3.後見人も遺産分割で利益相反になる

後見人と被後見人の関係でも利益相反は発生します。

ただし、親権者と未成年者の利益相反とは違う部分もあるので、しっかりと確認しておきましょう。

3-1.家族が後見人だと利益相反が起きやすい

認知症等により判断能力が低下した人の後見人に、家族が選任されていると利益相反になりやすいです。

親の後見人に子どもが就任している場合や、兄弟姉妹の後見人に兄弟姉妹が就任している場合です。

(例)母親の後見人に子どもが就任しているケース。

被後見人と後見人が利益相反

父親が亡くなると母親(配偶者)と子どもが相続人となります。利益相反になるので特別代理人が必要です。

(例)兄弟姉妹の後見人に兄弟姉妹が就任しているケース。

親が亡くなると子ども(後見人と被後見人)が相続人となります。利益相反になるので特別代理人が必要です。

3-2.後見監督人が存在するなら特別代理人は不要

被後見人(本人)と後見人が相続人であっても、後見監督人が選任されているなら特別代理人は不要です。

なぜなら、後見監督人が被後見人(本人)を代理するからです。

(後見監督人の職務)
第八百五十一条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

出典:e-Govウェブサイト(民法851条4項)

後見監督人が法定代理人として遺産分割協議に参加するので、特別代理人を選任する必要はありません。

ちなみに、任意後見であれば任意後見監督人が必ず選任されています。

 

4.遺産分割協議案は家庭裁判所でチェックされる

特別代理人を選任するからといって、遺産分割協議の内容を親権者が自由に決めれるわけではありません。

家庭裁判所に特別代理人を選任申立てをする際には、遺産分割協議案を提出する必要があります。

4-1.原則として法定相続分の確保が求められる

遺産分割協議案では未成年者や被後見人に、法定相続分の確保が求められます。

法定相続分が確保できていない遺産分割協議案では、原則として家庭裁判所は認めません。

未成年者や被後見人が不利にならないように、家庭裁判所は遺産分割協議案をチェックしています。

4-2.法定相続分以外で相続させるなら理由が必要

未成年者や被後見人を法定相続分以外で相続させるなら、家庭裁判所に理由を説明する必要があります。

家庭裁判所が未成年者や被後見人が不利にならないと判断すれば、法定相続分以外の内容でも認められることはあります。

 

5.遺産分割の内容を確認して特別代理人が署名捺印する

遺産分割の内容は特別代理人が考えるのではなく、家庭裁判所が認めた遺産分割協議案となります。

特別代理人は遺産分割協議書の内容を確認して、遺産分割協議書に署名捺印をします。

例えば、相続人が親権者Aと未成年者Bだとします。未成年者のために特別代理人Cを選任した場合です。

遺産分割協議書

住所 大阪府大阪市北区〇〇町1丁目2番3号
相続人 A 実印

住所 大阪府大阪市中央区〇〇町3丁目4番5号
相続人Bの特別代理人 C 実印

遺産分割協議書には実印を押印するので、特別代理人の印鑑証明書も必要になります。

特別代理人の仕事は、遺産分割協議書の内容が家庭裁判所の認めた内容と同じかどうかを確認して、遺産分割協議書に署名捺印をすることです。

 

6.さいごに

親権者と未成年者や後見人と被後見人が遺産分割で利益相反になると、特別代理人を選任しなければ遺産分割協議が成立しません。

特別代理人を選任する際には、あらかじめ遺産分割協議案を家庭裁判所に提出します。

遺産分割協議案の内容が未成年者や被後見人に不利だと、原則として家庭裁判所は認めません。ただし、不利な理由を説明すると認められることもあります。

遺産分割協議書に署名捺印するのも特別代理です。相続手続の際には特別代理人の印鑑証明書も必要となります。