特別代理人は家庭裁判所の選任審判書に記載されている行為しか、代理する権限がありません。当然ですが、選任審判書に記載されていない行為について、勝手に代理することはできません。
特別代理人自身が考えて行動するのではなく、家庭裁判所に決められた行為を代理するだけです。
特別代理人に選任された場合は、選任審判書をよく読んで代理する行為を確認してください。
1.申立をする際に代理行為は提出している
特別代理人の選任申立てをする際に、どのような行為を代理させたいのかは提出しています。
家庭裁判所は代理行為の内容をチェックして、問題がなければ特別代理人を選任します。
イメージとしては以下の順番です。
- 利益相反を確認
- 代理行為の内容を確認
- 特別代理人の選任
つまり、誰が特別代理人をするかではなく、代理行為(利益相反)の内容が審判基準となります。
実際、特別代理人は利害関係が無ければ、誰がやっても特に問題ありません。あくまでも、家庭裁判所が許可した行為を代理するだけとなります。
主な代理行為としては、以下の2つがあります。
- 遺産分割
- 相続放棄
遺産分割なら遺産分割協議書に署名捺印、相続放棄なら代わりに相続放棄の手続きをすることになります。
2.遺産分割協議書に署名捺印する
「親権者と未成年の子ども」や「後見人と被後見人」が共同相続人になっていると、遺産分割協議が利益相反行為に該当する可能性が高いです。
利益相反行為に該当する場合は、家庭裁判所に遺産分割協議書の案を提出して、特別代理人の選任申立てをします。
家庭裁判所は遺産分割協議書の案を確認して、問題がなければ特別代理人を選任します。
選任された特別代理人は、自分で遺産分割の内容を考えるのではなく、問題がないと判断された遺産分割協議書に署名捺印するのが仕事となります。
遺産分割の内容を実行するのは特別代理人ではなく、親権者(後見人)が法定代理人として行います。
3.本人の代わりに相続放棄をする
特別代理人が相続放棄をするケースは「親権者と未成年の子ども」では少ないです。「後見人と被後見人」の関係で特別代理人が相続放棄することはあります。
特別代理人の選任を審判する際に、相続放棄をする理由(借金等)があるのか確認されます。理由があると判断されれば、特別代理人が選任されます。
特別代理人に相続放棄するかどうかを判断する権限は無く、未成年者(被後見人)の代わりに相続放棄する権限しかありません。
親族が特別代理人に選任しているなら、相続放棄申述書作成を専門家に依頼しても大丈夫です。特別代理人の選任申立てと同じ人に依頼すると話が早いでしょう。
相続放棄が家庭裁判所に受理されると、特別代理人の仕事は終了となります。
4.さいごに
特別代理人の権限は、家庭裁判所の審判書に記載されている行為のみです。
家庭裁判所は申立ての際に添付された書面(遺産分割協議書の案等)を確認して、問題がなければ特別代理人を選任します。
特別代理人は自分で判断して行動するのではなく、家庭裁判所が決めた行為を実行するだけです。
遺産分割であれば内容を確認して遺産分割協議書に署名捺印する権限はありますが、他の相続人と話し合って遺産分割の内容を変更する権限はありません。
特別代理人に選任された場合は、必ず審判書で代理行為を確認しておいてください。