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胎児名義で相続登記は可能|前もって相続分を確保できる

胎児名義の相続登記
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亡くなった人の相続人が胎児であっても、相続登記の名義人にできます。

なぜなら、相続に関しては、胎児を出生しているとみなすからです。

胎児を登記名義人とすることで、胎児の相続分を保存することが可能です。

ただし、胎児の出生後には、変更登記が必要となります。

今回の記事では、胎児の相続登記について説明しているので、胎児が相続人なら参考にしてください。

1.胎児名義で相続登記することも可能

原則として、胎児(出生前)は権利能力を持っていません。

しかし、相続に関しては、胎児を出生しているとみなして判断します。

1-1.不動産登記では胎児名義が認められる

不動産登記では、胎児を名義人とする相続登記を可能としています。

以下は、法務局の通達です。

2 胎児を相続人とする相続による所有権の移転の登記手続の見直し
(1) 胎児を相続人とする相続による所有権の移転の登記の申請において、申請情報の内容とする申請人たる胎児の表示は、「何某(母の氏名)胎児」とするものとする。

出典:法務省民二第538号(令和5年3月28日)

出生届を提出するまで胎児に氏名はないので、「○○胎児」という氏名で登記します。
※○○は母親の氏名です。

あくまでも、「相続登記を申請できる」なので、胎児が出生するまで待っても問題ありません。

司法書士から一言「亡○○妻○○胎児」から「○○胎児」に変更されています。

1-2.胎児による相続登記の申請書記載例

胎児を登記名義人とする相続登記であっても、基本的な記載は同じになります。

以下は、登記申請書の記載例です。

登記申請書

登記の目的 所有権移転

原   因 令和○年○月○日相続

相 続 人 (被相続○○)
大阪府大阪市北区○○町一丁目2番3号
○○胎児
※○○は母親の氏名

(後略)

胎児に住所は存在しませんが、母親の住所を代わりに記載します。

相続人の部分以外は、通常の相続登記と同じです。

ただし、法定相続分による相続登記となるので、申請する場合は注意してください。

 

2.胎児名義の相続登記は法定相続分に限られる

胎児名義で相続登記を申請する場合、遺産分割協議による相続登記は申請できません。

以下は、不動産登記の先例です。

胎児の出生前においては、相続関係が未確定の状態であるので、胎児のために遺産分割その他の処分行為をすることはできない。

出典:昭和29年6月15日民事甲1188号民事局長回答

法務局の考えでは、胎児の時点で遺産分割することを認めていません。

したがって、胎児名義で相続登記するなら、法定相続分による相続登記となります。

【例題1】
亡くなった人の相続人が、配偶者と胎児の場合。

  • 配偶者:2分の1
  • 胎児 :2分の1

配偶者と子ども1人なので、各2分の1となります。

【例題2】
亡くなった人の相続人が、配偶者と子ども2人(胎児含む)の場合。

  • 配偶者:2分の1
  • 子ども:4分の1
  • 胎児 :4分の1

胎児を含めると子どもが2人なので、胎児は4分の1となります。

胎児の出生後に遺産分割協議をした場合、「遺産分割」を登記原因として、持分移転登記を申請できます。

 

3.胎児名義で相続登記した後に登記が必要

胎児名義で相続う登記した後の流れ

胎児名義で相続登記すると、その後に変更登記または更正登記が必要になります。

胎児名義で登記しているなら、忘れずに確認しておきましょう。

3-1.胎児が出生したら氏名住所の変更登記

胎児名義で相続登記をした場合、胎児の出生後に氏名住所の変更登記が必要になります。

氏名の変更は分かるが、住所は同じなので不要だと思うかもしれません。

ですが、胎児の住所は仮の住所なので、出生後の住所と同じであっても変更登記を申請します。

以下は、変更登記の目的と原因です。

  • 目的:○番所有権登記名義人氏名住所変更
  • 原因:令和○年○月○日 出生

氏名住所の変更登記は、母親が出生後の子どもを代理して申請できます。

胎児名義で相続登記を申請すると、出生後に変更登記が必要な点はデメリットになります。

3-2.胎児が死産になると所有権の更正登記

胎児名義で相続登記した後に、胎児が死産になると更正登記が必要になります。

なぜなら、胎児は相続人とならないので、登記が間違っているからです。

以下は、更正登記の目的と原因です。

  • 目的:○番所有権更正
  • 原因:錯誤

所有権の更正登記は、登記権利者(持分が増える人)と登記義務者(母親)の共同申請となります。

 

4.前もって胎児名義で相続登記するメリット

通常、胎児名義で相続登記する必要はありません。胎児が出生してから、法定相続分または遺産分割協議により、相続登記すれば良いからです。

ですが、胎児を除外して相続登記を申請される恐れがあれば、胎児名義で相続登記するメリットがあります。

【例題1】
亡くなった人の相続人は、子どもと代襲相続人(胎児)の2人。

代襲相続人の存在が戸籍上では分からない戸籍上は相続人が1人に見えるので、子どもが相続登記を申請して、不動産を単独名義にすることが可能です。

【例題2】
亡くなった人の相続人は、代襲相続人(胎児)だけ。第1順位の相続人が戸籍上では分からない戸籍上は相続人が兄弟姉妹に見えるので、兄弟姉妹が相続登記を申請して、不動産を単独名義にすることが可能です。

いずれのケースも、胎児の母親が相続人ではないので、不動産を単独名義にできます。胎児は戸籍に記載されないので、法務局は気付くことができません。

胎児を除外して相続登記を申請される恐れがあるなら、前もって胎児名義で相続登記するメリットがあります。

胎児の母親が相続人でなくても、保存行為として胎児を代理して相続登記が可能です。

 

5.まとめ

今回の記事では「胎児の相続登記」について説明しました。

亡くなった人の子どもが胎児であっても、胎児名義で相続登記することは可能です。

ただし、遺産分割協議による相続登記ではなく、法定相続分による相続登記となります。

胎児名義で相続登記されると、胎児の出生後に氏名住所の変更登記が必要です。

通常は、胎児名義で相続登記しませんが、胎児を無視して相続登記される恐れがあるなら、相続登記で胎児の相続分を確保しましょう。

 

胎児の相続登記に関するQ&A

Q.胎児認知された子でも相続登記できますか?
A.できません。胎児認知の効力は出生が条件だからです。
Q.胎児名義の相続登記は誰が申請できますか?
A.共同相続人や胎児の母親が単独で申請できます。
Q.胎児の相続登記に医師の診断書は必要ですか?
A.不要です。