相続登記が未了の間に新たな相続が発生していませんか。
数次相続が発生すると、相続登記をするのが面倒になります。
原則として、相続登記は個別の相続ごとに行います。相続が2回発生していれば相続登記も2回、相続が3回発生していれば相続登記も3回必要となります。
例外は、中間の相続人が1人の場合です。中間の相続登記を省略して、最後の相続登記だけすることができます。
今回の記事では、数次相続の相続登記について説明しているので、相続登記が済んでいなければ参考にしてください。
目次
1.相続登記をする前に新たな相続が発生
数次相続とは、亡くなった人の相続登記をする前に、相続人が亡くなって新たな相続が発生した場合のことです。
数次相続が発生するケースは2つあります。
- 相続登記をする前に相続人が亡くなった
- 遺産分割をする前に相続人が亡くなった
1-1.相続登記をする前に相続人が亡くなった
相続登記する前に亡くなったというのは、亡くなった人の相続人が1人だったケースが多いです。
相続登記を放置している間に相続人が亡くなってしまい、新たな相続が発生することは珍しくありません。
また、相続登記が未了であることに気付いていない可能性もあるので、放置が進み3回目の相続が発生することもあります。
関連記事を読む『相続登記の放置により発生する問題は7つ考えられる』
1-2.遺産分割をする前に相続人が亡くなった
遺産分割をする前に相続人が亡くなったというのは、亡くなった人の相続人が複数人だったケースです。
遺産分割をする前に相続人が亡くなってしまい、新たな相続が発生することも珍しくありません。遺産分割には期限がないので、後回しにしていると起こりやすいです。
1人だけでなく複数の相続人が亡くなっていると、遺産分割の参加者も増えていきます。
2.原則として相続登記は個別に必要
数次相続が発生している場合、原則として個別の相続ごとに相続登記をします。
不動産の登記名義人が亡くなっているのであれば、まずは相続人に対する相続登記をします。その後で、亡くなっている相続人の相続登記をします。
例えば、不動産登記名義が祖父で、相続人が伯父と亡くなった父親であれば、祖父から伯父と亡くなった父親に対する相続登記(1回目)をします。
そして、亡くなった父親から相続人に対して相続登記(2回目)をします。
相続が複数回発生していたら、相続ごとに相続登記をするのが原則となります。
ただし、原則があれば例外もあります。要件を満たせば中間の相続登記は省略することができます。
3.要件を満たせば中間の相続登記は省略できる
数次相続が発生している場合、原則はそれぞれの相続登記をすることになります。
例外は、中間の相続が単独相続の場合です。
中間の相続が単独相続であれば、中間の相続登記を省略して1回で相続登記を済ませることができます。
3-1.中間の相続人が1人だった場合
亡くなった人の相続人が1人で、相続登記をする前に亡くなった場合です。
数次相続が発生していても中間相続人が1人なので、1回目の相続登記は省略することができます。
最終の相続人は共有名義にすることもできますし、遺産分割協議により単独名義にすることもできます。
3-2.結果的に中間の相続人が1人になった場合
亡くなった人の相続人が複数人であっても、結果的に中間の相続人が1人になった場合は省略できます。
主に2つのケースがあります。
- 相続放棄により相続人が1人になった
- 遺産分割協議により相続する人が1人になった
相続放棄により相続人が1人になった
亡くなった人の相続人が複数人であっても、相続放棄により相続人が1人になることもあります。
相続放棄をすると初めから相続人ではないので、結果的に中間の相続人は1人になります。
ですので、相続放棄により中間相続人が1人になった場合も、1回目の相続登記は省略することができます。
遺産分割協議により相続する人が1人になった
亡くなった人の相続人が遺産分割協議をする前に亡くなった場合、その相続人は遺産分割をする権利も承継しています。
つまり、遺産分割協議をする前に亡くなった相続人がいても、その相続人と遺産分割協議をすることができます。
例えば、亡くなった人に相続人AとBがいたが、遺産分割協議をする前にBがなくなりCとDが相続人の場合です。
相続人Aと相続人Bの相続人CとDは、1回目の相続について遺産分割協議をすることができます。
そして、遺産分割により相続人Bが不動産を取得することも可能です。
遺産分割の効力は相続開始時に遡って効力が発生するので、初めから相続人Bが1人で相続したことになります。
ですので、亡くなった人の相続人が複数人であっても、遺産分割により相続した人が1人になれば、1回目の相続登記は省略することができます。
4.法定相続分での登記はできる限り避けよう
数次相続が発生している場合、中間の相続人が初めから1人であれば解決しやすいです。
ですが、中間の相続人が複数人の場合、連絡を取るなどして解決していく必要があります。
連絡先を知らない相続人がいると、法定相続分で登記したくなりますが、できる限り避けた方が良いです。
*法定相続分での登記は単独申請で可能。
なぜなら、法定相続分で登記をしても問題解決になっていないので、最終的には連絡を取って解決する必要があるからです。
不動産が共有状態になっていると、不動産を処分(売却・取り壊し)するのに共有者全員の同意が必要です。全員の同意を得る手間よりも、初めから連絡を取って解決しておく方が楽です。
関連記事を読む『相続登記を法定相続分で申請するなら単独でも可能』
5.数次相続と代襲相続は間違えやすい
数次相続と間違えやすいのが代襲相続です。
代襲相続とは、相続人になる人が先に亡くなっている場合に、その子どもが代わりに相続することです。
例えば、亡くなった人に配偶者と子どもが2人いたとします。先に子どもが1人亡くなっていれば、子どもの子ども(孫)が代わりに相続人になります。
亡くなった人の相続人は、配偶者と子どもと孫の3人です。相続は1回しか起きていないので、数次相続と間違えないように気を付けてください。
6.さいごに
亡くなった人が不動産を所有しているなら、早めに相続登記を済ませておきましょう。
なぜなら、相続人もいつかは亡くなるので、数次相続が発生して複雑になるからです。
数次相続が発生している場合、原則として個別に相続登記をします。
例外は、中間の相続人が1人の場合のみ、省略して最後の相続登記をすることができます。
相続登記が済んでいない場合は、できる限り早めに相続登記をしましょう。