成年後見制度利用支援事業が、どのような内容かご存知でしょうか。
成年後見制度利用支援事業とは、成年後見制度を必要としている人を支援する事業のことです。
成年後見制度を利用したくても、利用できていない人がいます。
一人暮らしのため誰も申立てをしてくれない。あるいは、申立て費用を用意することができない。人により理由は違いますが、成年後見制度を必要としている点は同じです。
今回の記事では、成年後見制度利用支援事業について説明しているので、周りに困っている人がいれば参考にしてください。
目次
1.成年後見制度の利用促進を図るのが目的
成年後見制度利用支援事業の目的は、成年後見制度の利用促進を図ることです。
分かりやすく説明するなら、成年後見制度を利用できていない人が多いので、事業として利用促進を図っていくということです。
1-1.判断能力の低下した人を保護支援する制度
成年後見制度とは、認知症等により判断能力が低下した人を、親族や第3者が後見人等として保護支援する制度のことです。
成年後見は2つに分かれています。
- 法定後見
- 任意後見
簡単にですが、2つの違いについて説明しておきます。
法定後見は家庭裁判所が決める
一般的に成年後見と言われているのは、法定後見の方だと思います。
家庭裁判所に後見開始の申立てをして、成年後見人を選任してもらいます。
法定後見は本人の判断能力で3つに分かれます。
- 後見
- 保佐
- 補助
本人の判断能力に違いがあるので、代理権限等にも違いがあります。
詳しい説明については、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『法定後見の3類型|後見・保佐・補助の違い』
任意後見は自分で決める
任意後見は本人が元気なうちに、あらかじめ後見人になってもらう人と契約を結んでおきます。
そして、判断能力が低下した後は、契約を結んでいた人が後見人となります。
同じ成年後見ですが、法定後見とは違う部分も多いです。
関連記事を読む『法定後見と任意後見の違い|5つの項目を比較する』
1-2.成年後見制度を利用できていない人がいる
成年後見は本人の判断能力が低下しても、自動的に始まるわけではないです。誰かが申立てをする必要があります。
ですが、さまざま理由により申立てがされず、成年後見を必要としていても利用できていない人がいます。
例えば、成年後見の申立てをしてくれる親族がいない、金銭的に申立て費用を支払うことが難しいなどです。
成年後見を必要としている人が利用できるようにするのが、成年後見制度利用支援事業となります。
2.成年後見の申立てを支援する
成年後見制度を利用するには、成年後見の申立てが必要です。
成年後見の申立てができる人は法律で決まっています。
- 本人
- 配偶者
- 4親等以内の親族等
- 検察官
本人も申立てできるのですが、すでに判断能力が低下していると難しいです。また、親族がいない人や親族と疎遠になっている人は、親族等からの申立ても期待できません。
たとえ近所の友人があなたの状態の変化に気付いても、成年後見の申立てをすることはできません。
2-1.市区町村長も成年後見の申立てができる
成年後見の申立て人が不在であることを解決するのが、市区町村長からの申立てになります。
成年後見の申立て人は民法で決まっていますが、民法以外の法律により市区町村長も可能となります。
老人福祉法により65歳以上の人であれば、市区町村長から成年後見開始の申立て(民法7条)をすることができます。
では、65歳未満の人はどうするのかというと、別の法律で申立てができるようになっています。
知的障害者福祉法により年齢に関係なく、市区町村長から成年後見の申立て(民法7条)をすることができます。
2-2.市区町村への申立ては必要
市区町村長が成年後見の申立てをするには、関係者等からの市区町村への申立てが必要です。
介護関係者や社会福祉協議会の職員などから、市区町村へ本人の情報を届けなければなりません。
市区町村は届けられた情報の確認を行うと共に、地域包括支援センターや相談支援事業所などと支援策について協議します。
本人の情報確認の際には、親族等に成年後見の申立てをする意向があるか調査もあります。
ただし、成年後見の申立てについて同意を得るわけではないです。
関係機関と協議の結果、成年後見の申立てが必要だと判断すれば、市区町村長から申立が行われます。
2-3.申立人で一番多いのは市区町村長
成年後見の申立人で一番多いのは市区町村長です。
以下は、令和2年に成年後見の申立てをした人の割合です。
本人や親族も多いですが、市区町村長も1年間で約9,000件申立てをしています。
3.成年後見に必要な費用を支援する
成年後見を利用したくても、金銭面の不安により利用できていない人もいます。
そのため、成年後見制度利用支援事業には費用支援もあります。
成年後見に必要な費用は2つあります。
- 申立て費用
- 後見人報酬
成年後見が必要な人の為に、本人等の収入や資産状況等を考慮して、申立て費用や後見人報酬を支給します。
3-1.成年後見の申立て費用を支援する
本人の収入や資産状況等を考慮して、申立て費用も支給されます。
支給の対象となる経費です。
- 申立て手数料
- 登記手数料
- 郵便切手代
- 診断書作成料
- 鑑定料
成年後見の申立て費用は約1万3,000円です。
ただし、鑑定が必要な場合は、10万円程追加で必要となります。
関連記事を読む『成年後見の費用と報酬|いくら必要になるのかを考える』
3-2.後見人報酬は限度額がある
成年後見人が選任された後の、後見人報酬も支援の対象となります。
親族が後見の申立てをした場合も助成対象になることがあるので、一度お住まいの役所にご確認ください。
後見人報酬の助成金については、月額上限の目安があります。
*厚生労働省が参考単価を示しています。
本人が施設に入所しているか在宅なのかで、上限金額に差があります。
助成金の参考単価 | |
---|---|
施設入居者 | 1万8,000円 |
在宅者 | 2万8,000円 |
成年後見人が親族等の場合は、支給の対象外になることがあります。
4.相談はどこにすればいいのか?
成年後見制度利用支援事業についての相談窓口は、各自治体ごとに設けられています。
「成年後見制度利用支援事業」「自治体名」で検索すると、それぞれのホームページが見つかるはずです。
参考までに、下記に近畿地方の4都市についてリンクを貼っておきます。
『大阪市のホームページ』(外部サイト)
『神戸市のホームページ』(外部サイト)
『京都市のホームページ』(外部サイト)
『奈良市のホームページ』(外部サイト)
一般的には、住んでいる地域の保険福祉センターに、相談窓口が設けられています。
65歳以上であれば高齢者福祉、65歳未満であれば障がい者福祉と分かれているようです。
インターネットで検索しても分からない場合は、お近くの市区町村役場で聞いてみてください。
5.さいごに
成年後見制度利用支援事業とは、成年後見制度を必要としている人を支援する事業のことです。
成年後見制度を利用したくても、さまざま理由により利用できていない人がいます。
「後見の申立てをする親族がいない」「申立て費用を用意することができない」など、人により利用していない事情は違います。
成年後見制度を必要としている人が利用できるように、市区町村長が代わりに申立てをするや、成年後見の申立て費用を援助するなど、さまざまな支援事業が行われています。
あなたの周りに困っている人がいましたら、お住まいの市区町村の役所に相談してみてください。
大阪市にお住いの方は、区の保健福祉センターの高齢者福祉または障がい者福祉の担当窓口にご相談ください。