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【補助人とは】本人が同意した範囲内で援助する存在

補助人
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法定後見制度の1つに「補助」という類型があります。残りの2つが「後見」と「保佐」です。

後見に関しては聞いたことがある方も多いと思いますが、「補助」を知っている方は少ないのではないでしょうか。実際の申立件数も補助は後見に比べれば圧倒的に少ないです。

ただし、補助であれば、判断能力に不安がある時点から本人を援助することができます。

今回の記事では、補助について説明しているので、後見の参考にしてください。

1.補助は法定後見制度の3類型の1つ

まず初めに、補助と法定後見制度の関係について説明しておきます。

成年後見制度の仕組み

成年後見制度は法定後見と任意後見の2つに分かれます。

そして、法定後見は「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。

通常、「法定後見」という言葉を使用している時は、法定後見制度の「後見」を指していることが多いです。

ただし、上記の図で説明しているとおり、「補助」も法定後見に含まれています。

法定後見の3類型の違いは、対象となる人の判断能力です。

 

2.補助の対象になる人は限られる

補助の対象となる人は、民法により定められています。

(補助開始の審判)
第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

出典:e-Govウェブサイト(民法15条1項)

補助の対象となるのは「精神上の障がいにより事理を弁識する能力が不十分」な人です。

精神上の障がいには認知症だけでなく、「統合失調症」「高次脳機能障害」や事故による脳の損傷も含みます。

事理を弁識する能力が不十分
重要な法律行為を1人で行うことは不可能ではないが、適切に行えるか不安がある状態のこと

つまり、精神上の障がいにより、重要な法律行為を適切に行えるか不安のある人が、補助の対象となります。

ただし、補助に該当するかは、家庭裁判所が医師の診断書等を検討して判断します。

(精神の状況に関する意見の聴取)
第百三十八条 家庭裁判所は、被補助人となるべき者の精神の状況につき医師その他適当な者の意見を聴かなければ、補助開始の審判をすることができない。

出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法138条)

診断書等の内容によっては、補助の申立てをしても却下されます。

 

3.補助開始の申立てに関する注意点

補助開始の申立ては、後見開始の申立てとは違う部分があります。

  • 本人の同意が必要
  • 補助開始だけはできない

3-1.補助開始の申立てには本人の同意が必要

補助開始の申立てをするには、本人の同意が必要となります。

(補助開始の審判)
第十五条 (省略)
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法15条2項)

補助開始の申立てをするのに本人の同意が必要なのは、本人の判断能力は依然として残っているからです。

補助を利用するかどうかは、本人の意思で決めることができます。

本人の同意がない限り、補助を利用することはできません。

補助開始の申立てと後見開始の申立ては申請書も同じです。実際に申立てをされる際は、後見開始の申立てを参考にしてください。

3-2.補助開始だけの申立てはできない

補助開始の申立てをする際には、「同意を要する行為の定め」または「代理権付与」のどちらか一方は同時に申立てをします。

なぜなら、補助人には無条件に付与される権利が無いので、権利付与の申立ても必要だからです。

補助開始の申立て組み合わせ

補助開始の申立てする際は、上記の3つの組み合わせから選ぶことになります。

補助開始だけの申立はできないので注意してください。

 

4.補助人の行使できる権利

補助人の行使できる権利は3つに分かれます。

  • 同意権
  • 同意を得ずにした行為の取消権
  • 代理権

それぞれ説明していきます。

4-1.補助人の同意権は限られる

同意権を付与されるためには、「補助人の同意を要する行為の定め」の申立てをして、同意権付与の審判を受けなくてはいけません。

ただし、すべての行為が認められるのではなく、民法第13条第1項に定められている行為の一部についてです。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。

出典:e-Govウェブサイト(民法17条)

保佐人は民法第13条第1項の行為について、自動的に同意権が付与されます。

それに対して、補助人は個別に申立てをする必要があります。

4-2.補助人の同意を得ずにした行為は取り消せる

同意権が付与された行為を本人が補助人の同意を得ずにした場合、補助人または本人が取り消すことができます。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 (省略)
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法17条4項)

ただし、以下の場合は取消すことができません。

  • 本人が詐術を用いた
  • 補助人が追認した
  • 時効により消滅

本人(被補助人)が詐術を用いた

本人が自分は被補助人ではないと嘘をついて、相手方を誤信させた場合です。

補助人が追認した

同意を得ずにした行為であっても、補助人が追認をすれば有効な行為になります。

時効により消滅

補助人が行為を知ったときから5年経過、または行為から20年経過すると取消すことはできません。

4-3.補助人の代理権は具体的に特定する

補助人に代理権を付与するには、法律行為を具体的に特定する必要があります。

(補助人に代理権を付与する旨の審判)
第八百七十六条の九 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法876条の9)

代理権付与の申立てをして代理権付与の審判がなされると、補助人は当該行為について代理権を行使することができます。

ただし、補助人に付与されているのは代理権なので、本人も当該行為をすることができます。本人の行為に制限はかかっていません。

本人が当該行為をしても取消すことはできないので、代理権と同意権の違いに気を付けてください。

 

5.補助人には権利だけでなく義務もある

補助人には権利だけではなく義務もあります。

  • 善管注意義務
  • 身上配慮義務

5-1.善良なる管理者の注意義務

補助人には通常の注意義務よりも高度な注意義務が課されています。

注意義務を怠って本人に損害を与えた場合は、損害賠償責任が発生します。

5-2.補助人の身上配慮義務は2つ

身上配慮義務は2つあります。

  • 本人の意思を尊重する義務
  • 本人の心身の状態および生活の状況に配慮する義務

あくまでも本人を補助するのが目的となります。

 

6.さいごに

法定後見には「後見」「保佐」「補助」という3つがあります。

ただし、補助は後見や保佐よりも範囲が狭いです。

後見のように代理権が当然に認められることもないですし、保佐のように重要な法律行為について当然に同意権が付与されるわけでもないです。あくまでも、本人が同意した範囲内で援助するのが補助です。

本人の判断能力が低下する前であっても、特定の行為についてのみ本人を支援することができます。法定後見の補助も検討してみてください。