補助人にも代理権を付与することはできます。
ただし、後見人とは違い無条件では付与できません。代理権を付与するには、本人の同意が必要となります。
代理権の付与は補助開始と同時、または後から追加で付与することもできます。
特定の法律行為について不安があれば、補助人に代理権を付与することは可能なので、今回の記事を参考にしてください。
1.代理権の付与には条件がある
補助人は後見人とは違い、無条件で代理権が付与されるわけではありません。
補助人に代理権を付与するには、条件が2つあります。
- 本人の同意が必要
- 特定の法律行為に限られる
1-1.本人の同意が必要
補助人に代理権を付与するには、本人の同意が必要となります。
なぜなら、本人の判断能力は残っているので、本人の意思を確認する必要があるからです。
どんなに必要な法律行為であっても、本人が同意しない限り代理権は付与されません。
1-2.特定の法律行為に限られる
補助人に付与できる代理権は、後見人の代理権とは違い特定の法律行為に限られます。
補助の場合は本人の判断能力が残っているので、包括的な代理権を付与する必要がないからです。
例えば、被補助人(本人)の全財産の売却などは、代理行為が特定されていないので許可されません。
代理行為目録が用意されている
家庭裁判所が代理行為目録を用意しているので、必要な法律行為にチェックを入れるだけで大丈夫です。
以下は代理行為目録の一部です。
代理行為目録は細かく記載されているので、該当する法律行為にチェックを入れてください。
例えば、被補助人(本人)の家を改築するのであれば、1-(1)-③の増改築にチェックを入れます。
事実行為は対象ではない
代理権付与の対象は法律行為となります。単なる事実行為は対象行為ではありません。
例えば、キャッシュカードを預かるや、不動産の売却先を探すなどは事実行為です。
上記の行為は、預貯金に関する金融機関との取引や、不動産の売却契約締結などに関連する事実行為となります。
2.代理権付与の申立て手続き
補助人に代理権を付与するには、家庭裁判所に代理権付与の申立てをします。
代理権付与の申立ては2通りあります。
- 補助開始と同時に申立て
- 補助開始後に追加で申立て
2-1.補助開始と同時に申立て
補助開始の申立てをする際には、同意権または代理権の付与を同時に申し立てる必要があります。
申立ての組合せは以下のとおりです。
- 補助開始と同意権の付与
- 補助開始と代理権の付与
- 補助開始と同意権の付与と代理権の付与
必要な代理行為が分かっているのであれば、最初から代理権付与の申立てもしておきましょう。
2-2.補助開始後に追加で申立て
補助開始後に代理権が必要になれば、代理権付与の申立てを追加ですることも可能です。
例えば、補助開始後に不動産を売却することになったので、不動産売却について代理権を付与するなどです。
本人が不安に思う法律行為があれば、後からでも追加できますのでご安心ください。
3.不要になった代理権は取消せる
補助人に付与される代理権は、必要な範囲で付与されています。
ですので、特定の法律行為が終了すれば、代理権が不要になることもあります。
不要になった代理権については、家庭裁判所に代理権付与取消の申立てをすることができます。
【申立に必要なもの】
申立書は家庭裁判所のホームページでダウンロードするか、家庭裁判所から直接取得しましょう。
申立人と本人の戸籍謄本・住民票は、裁判所に提出済みで変更が無ければ不要です。
収入印紙は申立分と登記分が必要です。
- 申立分(800円)
- 登記分(1,400円)
4.さいごに
補助人に代理権を付与することは可能です。
ただし、後見人とは違い無条件では付与できません。本人の同意が必要なのと、特定の法律行為であることが条件となります。
代理権付与の申立ては、補助開始の申立てと同時にするか、補助開始後に追加で申立てることができます。
本人が不安に思う法律行為があれば、補助人に代理権を付与することができるので、上手く活用してください。