任意後見契約を結ぶと、法務局の後見登記簿に記録されているのはご存知でしょうか。
最初の任意後見登記は公証人が申請するので、意外とご存知ない人も多いです。
ですが、任意後見監督人の選任申立てや任意後見人の権限を証明する際には、登記事項証明書が必要になります。
今回の記事では、任意後見契約の登記について説明しているので、任意後見の当事者は参考にしてください。
目次
1.任意後見契約は後見登記簿に記録される
まず初めに、成年後見制度が始まる前は、「禁治産」「準禁治産」の制度がありました。当時は登記ではなく本人の戸籍に記録されていました。
禁治産・準禁治産制度が廃止され、戸籍への記載に代わる公示制度として成年後見登記制度が創設されました。
ですので、今は後見が開始しても戸籍に記載されることはありません。
東京法務局後見登録課で管理されており、任意後見契約の内容等を登記官が発行する登記事項証明書により開示します。
2.任意後見契約の登記事項は時期により変わる
任意後見契約の登記事項は、後見登記等に関する法律により定められています。
登記事項証明書の記載事項は、任意後見監督人の選任前(効力発生前)と選任後(効力発生後)で変わります。
2-1.任意後見監督人の選任前(効力発生前)
任意後見契約を締結してから、任意後見監督人が選任されるまでの記載事項です。
- 公証人の氏名・所属・証書番号・作成年月日
- 本人の氏名・生年月日・住所・本籍
- 任意後見受任者の氏名・住所・代理権の範囲
- 代理権目録
任意後見契約の効力発生前なので、任意後見人ではなく任意後見受任者になっています。
関連記事を読む『任意後見受任者にできる行為は限られている』
2-2.任意後見監督人の選任後(効力発生後)
任意後見監督人が選任されて、任意後見契約の効力が発生した後の記載事項です。
- 公証人の氏名・所属・証書番号・作成年月日
- 本人の氏名・生年月日・住所・本籍
- 任意後見人の氏名・住所・代理権の範囲
- 任意後見監督人の氏名・住所
- 代理権目録
任意後見受任者から任意後見人に代わっているのと、任意後見監督人も記載されています。
任意後見監督人が記載されていることからも、任意後見の効力が発生していることが分かります。
3.後見登記事項証明書の取得方法は2つ
後見登記の登記事項証明書は取得者が限定されています。本人のプライバシー保護と取引の安全保護を図るためです。
以下の人が取得できます。
- 本人
- 任意後見人
- 任意後見監督人
- 本人の4親等以内の親族
間違いやすいのですが、取引の相手側は取得することができません。
発行手数料は証明書により違います。
- 登記されていないことの証明書:300円
- 後見登記事項証明書:550円
発行手数料は収入印紙で納めます。
申請方法は、窓口申請と郵送申請の2つです。
3-1.窓口でも取得できるが法務局は限られる
法務局の窓口でも取得できますが、取得できる法務局は限られます。
東京法務局の後見登録課および全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課で取得できます。
※支局・出張所では取り扱っていません。
窓口での所要時間は10分から20分程度。
3-2.郵送対応は東京法務局後見登録課のみ
お近くに窓口対応している法務局が無い場合や、平日の昼間に時間が取れない場合は、郵送で登記事項証明書を取得します。
郵送対応しているのは、東京法務局後見登録課の一ヵ所のみとなります。
郵送の場合は、返送用封筒(切手を貼り・返送先を書く)の同封も必要です。
所要期間は申請書送付から1週間から10日程度になります。
関連記事を読む『後見登記事項証明書を郵送請求する方法を分かりやすく説明』
4.任意後見の登記事項証明書が必要になる
登記事項証明書が必要となる場面は2つに分かれます。
- 任意後見監督人の選任申立て
- 任意後見人として契約を結ぶ
4-1.任意後見監督人の選任申立てに必要
任意後見監督人の選任申立てをする際の、添付書面として登記事項証明書が必要となります。
なぜなら、任意後見監督人の選任申立てをするには、任意後見契約を結んでいることが前提条件だからです。
任意後見契約を結んでいることの証明として、後見登記事項証明書を添付します。
関連記事を読む『任意後見監督人の選任申立て|契約の効力発生に必要な手続き』
4-2.任意後見人として契約を結ぶ際に必要
登記事項証明書は任意後見人が本人に代わって、不動産の売買や介護施設等との契約を締結する際に必要となります。
なぜなら、相手側は本人の後見が開始していることを確認できないので、登記事項証明書を見て後見人の権限を確認するからです。
*取引の相手側は登記事項証明書を取得することができません。
契約等を締結する前に登記事項証明書を用意しておきましょう。
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5.登記事項証明書には代理権の範囲も記載される
任意後見人が代理できる行為は、代理権目録に記載されている行為のみです。
登記事項証明書には代理権目録も記載されています。
ですので、任意後見人と契約を結ぶ場合は、必ず登記事項証明書で代理権目録を確認してください。
代理権目録に記載されていなければ、任意後見人は本人を代理することができません。
関連記事を読む『任意後見契約では代理権目録の記載が重要になります』
6.まとめ
任意後見契約の登記についてのまとめです。
- 任意後見契約を締結すると登記される
- 契約の効力発生で登記事項に変更有り
- 後見人が本人に代わって契約等を交わす際に必要
普段の生活では後見の登記に関わることはないですが、任意後見契約の効力発生後は必要になる場面があります。
任意後見の登記事項証明書は特定の法務局でしか取得できないので、取得する際は間違えないように気を付けてください。