残念なことに任意後見契約に関するトラブルも発生しています。
任意後見を検討されている人にとって、どのようなトラブルが発生しているかを知ることは重要です。
なぜなら、あらかじめ知っていれば、対策を立てることも可能だからです。
完全に防ぐことは難しいですが、防げる部分があれば参考にしてください。
目次
1.後見の申立てをしない
任意後見契約の効力発生要件は2つです。
- 判断能力が低下する
- 任意後見監督人の選任申立てをする
2つの要件を満たさなければ、任意後見契約の効力は発生しません。
関連記事を読む『任意後見契約の効力発生には2つの条件がある』
トラブルになるのは要件の1つ「後見の申立てをする」です。
1‐1.任意後見受任者に申立て義務がない
任意後見契約を結んでいても、任意後見受任者に申立て義務はありません。
ですので、契約を結んだからといって、任意後見受任者が申立てをするとは限りません。
あなたが決断して選んだ契約であっても、申立てがされない限り効力は発生しません。
関連記事を読む『任意後見受任者にできる行為は限られている』
1‐2.任意後見監督人の登場を嫌がる
任意後見契約の効力発生後は、任意後見監督人が任意後見人の仕事を監督します。そのため、監督されることを嫌がり、申立てをしていないケースも発生しています。
問題になりやすいのが、任意後見の移行型と呼ばれている方式です。ただし、移行型自体は任意後見契約の欠点を補う方法です。
関連記事を読む『任意後見契約の移行型|判断能力が低下する前を補う方法』
財産管理等委任契約と任意後見契約を同じ相手と結ぶことも多いです。
財産管理等委任契約には監督者がいません。あえて言えばあなた自身が監督者です。
そのため、あなたの判断能力が低下した後は監督者がいない状態です。好き勝手に管理をしたい人からすると、監督者の登場は邪魔になります。
あなたの判断能力は低下しているので、財産管理の状態を確認することはできません。残念ながら、管理している金銭を使い込んでいる人もいます。
2.後見契約を解除される
任意後見契約を結んでも、あなたの判断能力がいつ低下するかは不明です。5年後かもしれないですし、10年後かもしれないです。
任意後見契約は効力発生前であれば、いつでも解除することができます。相手の同意が無くても解除は可能です。
したがって、あなたの判断能力が低下していなければ、急に解除される可能性が常にあります。
関連記事を読む『任意後見契約は解除できる|時期により方法が違うので注意』
2‐1.解除されても作成費用は返金されない
任意後見契約の作成費用は基本的には、委任する人(あなた)が支払っていると思います。文案作成を専門家に依頼している場合は報酬も発生しています。
任意後見契約を解除されても、作成費用や報酬が返金されることはないです。ですので、任意後見契約を解除されてしまうと、お金だけを支払ったことになります。
専門家報酬と作成費用は決して安くないので、委任した人からすると不満が残ります。
2‐2.判断能力低下後に解除される可能性
任意後見が開始した後であっても、正当な事由があれば家庭裁判所の許可を得ることで解除できます。
後見人が病気等により後見業務をすることが難しい等が考えられます。病気であれば仕方がない部分もありますが、納得できない人がいるのも事実です。
3.考えられる対策
トラブルを完全に防げるわけではないですが、発生確率を下げる対策について考えます。
3‐1.別の人に気付いてもらう
任意後見契約の相手とは別に、見守り契約等を結び判断能力の低下に気付いてもらいます。誰も申立てをしていなければ、家族や市区町村の役所等に連絡してもらいます。
見守り契約を結んでいることを知っていれば、意図的に申立てをしないのは難しいと思います。
3‐2.解除の可能性はゼロにできない
誰と契約を結んでも解除される可能性はあります。ですので、少しでも可能性を下げるなら次のようになります。
- 本当に信頼できる人と結ぶ
- 自分より年齢が下の人と結ぶ
- 法人と契約を結ぶ
- 後見人の第2候補を考えておく
上記のいずれにも解除の可能性は残っています。現時点の法律では、可能性をゼロにすることはできないです。
4.さいごに
残念ながら任意後見契約に関するトラブルも発生しています。
任意後見契約を結ぶのが目的ではなく、あなたの判断能力が低下した後に後見人になってもらうのが目的です。
ですので、トラブルについても知っておいてください。
完全に防ぐことはできないかもしれませんが、可能性を下げることはできるはずです。