任意後見契約の効力を発生させるには、条件が2つあるのはご存知でしょうか。
任意後見契約を結んだだけでは効力は発生しませんし、判断能力が低下しても自動的には発生しません。
効力を発生させるには以下の2つを満たす必要があります。
- 判断能力の低下
- 任意後見監督人の選任
条件を2つとも満たさなければ、任意後見契約の効力は発生しません。
今回の記事では、任意後見契約の効力発生条件とデメリットについて説明しているので、ご存知ない場合は参考にしてください。
1.判断能力が低下しないと発生しない
任意後見契約の効力が発生するのは、あなたの判断能力が低下した後です。
ですので、判断能力が低下しない限り、任意後見人が就任することはありません。
判断能力の低下には、2つ問題点があります。
- 判断能力の低下を予測するのは難しい
- 身体能力の低下には対応できない
1-1.判断能力の低下を予測するのは難しい
任意後見契約は元気なうちに結ぶ必要があります。ですが、将来自分の判断能力が低下するかを予測するのは難しいです。
効力が発生しなくても初期費用は返って来ません。任意後見契約が保険のようなものと言われるゆえんです。
下記のグラフは2015年に厚生労働省が発表した認知症の将来推計です。
65歳以上の5人の1人は認知症が発症するそうです。言い方を変えれば5人に4人は発症しません。
数字をそのまま当てはめれば、任意後見契約を結んだ人の80%は認知症が発生しないことになります。
ただし、認知症以外で判断能力が低下する人もいます。
2020年の後見・保佐・補助・任意後見開始原因は、認知症が64.1%、知的障害が9.9%、統合失調症が9.0%となっています。
効力が発生しない可能性も考慮したうえで、任意後見契約を結ぶ必要があります。
1-2.身体能力の低下には対応できない
年齢と共に体力が衰えるのは当たり前です。ただし、任意後見契約の効力は身体能力の低下では発生しないです。
たとえば、病気や怪我により歩くことが難しくなっても、判断能力が低下していなければ、任意後見の効力は発生しません。現実的には、判断能力が低下する人より、身体能力が低下する人の方が多いのではないでしょうか。
身体能力の低下には、財産管理契約を結ぶことで対応することも可能です。
関連記事|『任意後見契約の移行型|身体能力の低下に対応する方法』
2.任意後見監督人の選任申立てが必要
あなたの判断能力が低下しても、自動的に後見契約の効力が発生するわけではないです。任意後見監督人の選任申立てが必要となります。
任意後見監督人の選任申立てをして、選任審判が確定すると効力が発生します。
2-1.任意後見監督人の選任申立て手続き
任意後見監督人の選任申立てについてです。
原則として、本人の住民票上の所在地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
申立ができる人
選任申立ては以下の人ができます。
- 本人
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 任意後見受任者
本人以外の人が申し立てるには、原則として本人の同意が必要です。
*本人が意思表示できないときは除きます。
申立に必要な費用
申立に必要な費用としては以下があります。
- 申立て用の収入印紙(800円)
- 連絡用切手代(家庭裁判所により違う)
- 登記申請用の収入印紙(1,400円)
本人の精神状態を鑑定する必要があるときは、鑑定費用を負担する場合があります。
関連記事|『任意後見監督人の選任申立て手続きでは書類の準備が大変』
2-2.選任申立てを誰もしないリスク
任意後見のデメリットの1つとして、選任申立てを誰もしないリスクがあります。
家族と一緒に住んでいる、あるいは近くに住んでいる場合には、あなたの状態に気付いて申し立てをしてくれます。それに対して、誰も住んでいない場合は、あなたの状態の変化に気づきにくいです。
あなたの判断能力が低下しても、申立てが無ければ後見契約の効力は発生しません。対応策としては、見守り契約を結ぶなどして、あなたの状態の変化に気づいてもらう等があります。
関連記事|『見守り契約|あなたの変化に気付いてもらうための対策』
3.まとめ
任意後見契約の効力発生には、2つの条件を満たす必要があります。
- 判断能力の低下
- 任意後見監督人の選任
判断能力が低下しなければ、たとえ身体能力が低下して生活に支障をきたしていても、後見契約の効力は発生しません。
また、判断能力が低下しても、誰も任意後見監督人の選任申立てをしなければ、後見契約の効力は発生しません。
任意後見を検討されているなら、効力発生には2つの条件がある点にご注意ください。