任意後見契約を結んでもすべてを可能にするわけではないです。
どんな制度にも弱点やデメリットがあるので、別の方法で補完する必要があります。
人によって希望が違うので、補完方法も変わってきます。
代表的な方法を4つ簡単に説明しますので、任意後見契約を検討されている人は参考にしてください。
1.効力発生前を補う
任意後見契約の効力発生時期は、あなたの判断能力低下後です。
したがって、判断能力が低下しなければ、効力は何十年経過しても発生しません。
効力発生については『任意後見の効力発生はいつなのか』をお読みください。
判断能力が低下しないことは良いことなのですが、人間である以上身体能力は必ず低下します。
任意後見契約は身体能力の低下には対応していません。
ですので、任意後見契約の効力が発生する前を補うために、財産管理等委任契約を結ぶことがあります。
財産管理等委任契約とは判断能力がある状態で、財産管理等を委任する契約のことです。
任意後見契約と財産管理等委任契約の2つを結ぶことを、任意後見契約の移行型といいます。
移行型については『任意後見契約の移行型とは』でも説明しています
2.効力発生時期を見逃さない
任意後見契約を結んでいても後見受任者と交流が無ければ、判断能力が低下したことに気づきにくいです。
*家族と一緒に住んでいるや近所に住んでいる場合は除きます。
1人暮らしの人が任意後見契約を結んでいる場合、判断能力の低下に気づいてもらう必要があります。
気づいてもらうための方法が見守り契約です。
見守り契約とは、定期的に面談や連絡をしてもらう契約のことです。
定期的な面談や連絡により、判断能力の低下に気づいてもらいます。
3.亡くなった後は無関係
任意後見契約を結んでいても、あなたが亡くなったときに契約は終了となります。
亡くなった後に発生する病院代や家賃の支払い等は、任意後見人は当然にすることはできないです。
あるいは、自分の葬儀等に希望があっても、任意後見人がしてくれるわけではないです。
自分が亡くなった後の事務を委任する契約を、死後事務委任契約といいます。
死後事務委任契約を結ぶことで、自分が亡くなった後のことを任せることができます。
任意後見契約を結んだ人と死後事務委任契約を結ぶこともできますし、別の人と契約を結ぶこともできます。
誰に任せるのかはあなたの自由です。
死後事務についての説明は『死後事務委任契約とは』で詳しくしております。
4.効力発生前に遺言書を書く
厳密にいうと任意後見契約を補完するわけではないですが、遺言書も関係するので説明しておきます。
任意後見契約の効力発生は判断能力低下後なので、その時点で遺言書を書くことはできません。
なぜなら、遺言書を書くのに判断能力が必要だからです。
遺言書を書けるのは効力発生前までになります。
任意後見契約を結んでいても、遺言書を書いていないとトラブルの可能性は残ります。
4-1.どちらを先にすれば良いのか
よくある質問として、「任意後見契約と遺言書のどちらを先にすればいいのか」があります。
費用面で同時に取り掛かるのには無理がある場合です。
専門家によって答えも違いますし、正解があるわけでもないです。
ただし、どちらかを選ぶなら、私なら遺言書です。
細かい説明は実際に相談されたときにしますが、確率の問題で判断しています。
5.さいごに
任意後見契約であっても万能ではないので、すべてのことに対応できるわけではないです。
効力発生前には財産管理等委任契約、効力発生時期なら見守り契約などで対応することができます。
様々な契約や制度を組み合わせて使うことで、あなたの希望に近づくことができます。
任意後見に限らず疑問や悩みがあれば、お気軽にお問い合わせください。