「養子に遺留分はあるのか?」と、気になったことはないですか。
実子の立場からすると遺留分を請求されるのか気になります。一方、養子の立場からすると遺留分を請求できるのか気になります。
結論から言うと、養子も実子と同じく遺留分があります。遺留分の割合も養子と実子と同じです。
遺留分について考えるときは、養子の有無が非常に重要なので、必ず戸籍謄本等で確認しましょう。
今回の記事では、遺留分と養子について説明しているので、養子がいる場合は参考にしてください。
目次
1.養子と実子の遺留分は同じ割合
法律上、養子と実子に区別はありません。
したがって、養子と実子の遺留分も同じ割合です。
例えば、相続人が養子と実子であれば、以下のようになります。
相続財産の2分の1を子ども2人で割ります。実子と養子は同じ割合です。
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1-1.養子が多くなると遺留分は減る
日本の法律では養子の人数に制限はありません。亡くなった人が複数人と養子縁組している可能性もあります。
養子の人数が増えていくほど遺留分権利者は増えていきます。それに対して、遺留分権利者の遺留分割合は減っていきます。
例えば、実子1人と養子2人なら以下の割合です。
子どもが3人なので、遺留分の割合はそれぞれ6分の1になります。
養子の人数によって遺留分の割合は変化するので、相続手続をする前に確認しておく必要があります。
2.養子縁組で法定相続人の遺留分を減らす
養子が増えると遺留分は減るので、遺留分を減らすために養子縁組を利用する人もいます。
なぜなら、特定の相続人に財産を残したくない人もいるからです。
遺言書を作成して残さないようにしても、相続人に遺留分があれば侵害額を請求できます。
相続人の遺留分を無くすことはできないので、代わりに考えられたのが養子縁組の利用です。養子(法定相続人)が増えると相続人の遺留分は減ります。
例えば、長男と次男の2人が相続人で、次男に財産を残したくない場合です。長男に子ども(孫)がいるとします。
孫を養子にすることで次男の遺留分を減らすことができます。
以下は、養子縁組前後の遺留分の比較表です。
養子縁組前 | 養子縁組後 | |
配偶者 | 4分の1 | 4分の1 |
長男 | 8分の1 | 12分の1 |
次男 | 8分の1 | 12分の1 |
孫(養子) | ー | 12分の1 |
長男の配偶者も同じように養子とすることが可能なので、次男の遺留分をさらに減らすこともできます。
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3.養子であっても遺留分の放棄は強要できない
亡くなった人の養子に、遺留分を放棄してもらいたいと思う人もいます。
「実子ではないから遺留分を放棄すべき」
「養子が実子に請求するのは厚かましい」
ですが、養子であっても遺留分の放棄は強要できません。
遺留分を放棄するかどうかは、本人(養子)の自由です。他人が強要することは一切認められません。
3-1.養子という理由だけでは生前の遺留分放棄が難しい
生前に養子が遺留分を放棄することも可能です。
ただし、養子が生前に遺留分放棄をする場合でも、家庭裁判所の許可が必要になります。
※生前の遺留分放棄は家庭裁判の許可が必要。
一般的に、生前に遺留分を放棄するには、遺留分に相当する金銭を前もって渡すなどの対価が必要です。
養子という理由だけでは、家庭裁判所の許可を得ることは難しいでしょう。
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4.養子の行動によって遺留分は変化するのか?
相続発生後にした養子の行動によっては、遺留分に変化があります。
- 養子が相続放棄
- 養子が死後離縁
それぞれ簡単に説明していきます。
4-1.養子が相続放棄すると遺留分は変化する
養子が相続放棄すると、養子は初めから相続人ではなかったとみなされます。
養子が相続人ではない以上、法定相続分や遺留分の割合も変化します。
例えば、相続人が実子2人と養子1人で、養子が相続放棄した場合です。
相続放棄前 | 相続放棄後 | |
長男 | 6分の1 | 4分の1 |
次男 | 6分の1 | 4分の1 |
養子 | 6分の1 | ー |
養子の相続放棄により、実子の遺留分が増えています。
相続人の中に相続放棄した人がいると、遺留分にも変化があるので気を付けてください。
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4-2.養子が死後離縁しても遺留分は変化しない
亡くなった人(養親)と養子が死後離縁していても、養子の遺留分はなくなりません。
なぜかというと、死後離縁をしても、すでに発生した相続に影響はないからです。死後離縁をしても養子は相続人なので遺留分は変化しません。
養親が亡くなった後に養子が死後離縁していても、他の相続人の遺留分が増えるわけではありません。
5.さいごに
今回の記事では「養子の遺留分」について説明しました。
養子も実子と同じように遺留分があります。
亡くなった人が養子縁組をしていれば、養子から遺留分侵害額請求をされる可能性はあります。
養子の人数に制限はないので、養子縁組により法定相続人の遺留分を減らすことも可能です。
ただし、養子を増やせば、遺留分権利者も増えるので注意してください。
養子が相続放棄すると遺留分が変化します。一方、養子が死後離縁しても遺留分は変化しません。
亡くなった人に養子がいる場合は、相続が複雑になりやすいので気を付けてください。