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限定承認には官報公告が必要なので手順を確認しておこう

限定承認と官報公告
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限定承認をするのに、官報公告が必要なのはご存知でしょうか。

普段の生活で官報を見ることは少ないので、具体的に何をすればいいのか分からない人もいます。

また、官報公告料は思っているよりも高いです。

今回の記事では、限定承認と官報公告について説明しているので、限定承認を検討しているなら参考にしてください。

司法書士から一言法改正により相続財産管理人から相続財産清算人に名称変更。

1.限定承認が受理されると官報公告をする

限定承認の申述が家庭裁判所に受理されると、官報公告をする必要があります。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

出典:e-Govウェブサイト(民法927条)

1-1.官報公告をするのは限定承認者(相続財産管理人)

官報公告をするのは家庭裁判所ではなく、限定承認者または相続財産管理人です。

相続人が1人であれば限定承認者が行います。それに対して、相続人が複数人であれば代表者が相続財産清算人となり行います。

相続人が複数人存在する場合は、限定承認の申述書に相続財産清算人の候補者を記載しておきましょう。

1-2.官報公告をする期日に注意

民法では限定承認から官報公告までの期日が決められています。

  • 限定承認者:5日以内
  • 相続財産清算人:10日以内

ただし、官報は掲載依頼から約7日かかります。事実上、限定承認をしてから5日以内には間に合いません。

上記に対しては2つの考え方があります。

  • 限定承認の審判書が届いてから5日以内に掲載依頼する
  • 前もって家庭裁判所で審判日を確認して掲載依頼する

実務上では、審判書が届いてから5日以内に掲載依頼をすれば、特に問題は発生していません。

1-3.限定承認日から官報掲載日までのデータ

初めて限定承認の手続きをする際は、官報掲載までの日数に不安を感じるでしょう。本当に日数を過ぎていても問題無いのか。

以下は、令和4年6月1日(水)から令和5年5月31日(水)までに、官報に掲載された限定承認634件を分析した表です。

限定承認者と相続財産清算人(旧相続財産管理人)がどのくらいの期間で、官報公告できているのかをチェックしました。限定承認される際の参考にしてください。

限定承認者が官報公告した場合

官報掲載までの日数(限定承認者)
限定承認日からの日数 件数
0日 1件
1日 1件
2日 3件
3日 6件
4日 10件
5日 0件
6日 9件
7日 23件
8日 28件
9日 26件
10日 21件
11日 22件
12日 19件
13日 38件
14日 24件
15日 15件
16日 10件
17日 5件
18日 4件
19日 4件
20日 2件
21日 4件
22日 2件
23日 1件
24日 2件
25日 2件
26日 1件
30日 3件
31日 1件
32日 1件
33日 1件
39日 1件
41日 1件
48日 1件
57日 1件
61日 1件
76日 1件
348日 1件
1年以上 1件

限定承認後5日以内に官報公告できているのは、297件のうち21件(7%)だけです。

通常のやり方では5日以内に間に合わないので、当然の結果になります。

相続財産清算人が官報公告した場合

官報掲載までの日数(限定承認者)
限定承認日からの日数 件数
0日 1件
1日 0件
2日 0件
3日 1件
4日 0件
5日 1件
6日 5件
7日 23件
8日 27件
9日 35件
10日 35件
11日 19件
12日 25件
13日 26件
14日 34件
15日 24件
16日 28件
17日 8件
18日 3件
19日 6件
20日 7件
21日 4件
22日 3件
23日 1件
24日 1件
26日 1件
27日 1件
28日 3件
30日 1件
32日 1件
34日 2件
35日 1件
37日 1件
40日 1件
41日 1件
55日 1件
57日 1件
68日 1件
70日 1件
74日 1件
1年以上 1件

限定承認後10日以内に官報公告できているのは、337件のうち128件(38%)です。

相続財産清算人(旧相続財産管理人)の方が日程に余裕があるので、期日に間に合っている件数が多くなっています。

 

2.官報公告(限定承認)にはひな形がある

限定承認の官報公告に、どのような文言が記載されているかご存知でしょうか。

実際、ほとんどの人は官報を見たことがありません。

ですので、限定承認を検討している相続人も、官報公告のイメージが湧きにくいです。

以下は、限定承認公告の例です。官報には縦書きで掲載されます。

限定承認公告の記載例

官報公告の文章はひな型があるので、掲載依頼をする際に困ることはないです。違いがあるのは以下の部分です。

  • 亡くなった人の本籍地・最後の住所・氏名・死亡日
  • 限定承認の受理日・家庭裁判所名
  • 相続財産管理人(限定承認者)の住所・氏名

上記の部分を入れ替えるだけで、官報公告の文章は完成です。ご自身で官報公告をする場合は、本籍地や住所の入力間違いに気を付けましょう。

 

3.官報公告の費用は行単位で決まる

限定承認の官報公告費用が、いくら必要かはご存知でしょうか。

官報公告の費用は行単位で決まっています。

【2.官報公告の例文を確認しておこう】で説明したとおり、官報公告の文章は基本的に同じなので行数もほとんど同じです。

限定承認の官報公告は約13行になります。
*12行から14行ぐらい。

行数が変わるのは、本籍地や住所の長さが人によって違うからです。

以下は官報公告の料金です。

官報公告の料金
行数 料金
12 43,071円
13 46,660円
14 50,250円

官報公告の料金は約4万5,000円ぐらい必要です。

限定承認を検討する際は、官報公告の料金も計算に入れておきましょう。

 

4.限定承認の官報公告とは別に個別の催告は必要

限定承認の官報公告をしても、知れている債権者には個別の催告は必要です。

以下は、民法の条文です。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条
3 限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法927条3項)

個別の催告をしなかったことにより、知れている債権者に損害が発生すると、損害賠償責任を負うことになります。

個別の催告は受遺者に対しても必要なので、遺言書に遺贈が記載されていれば、忘れずに個別の催告をしておきましょう。

 

5.さいごに

今回の記事では「限定承認の官報公告」について説明しました。

限定承認が家庭裁判所に受理されると、官報公告をする必要があります。

ただし、官報公告は家庭裁判所がするわけではなく、限定承認者(相続財産清算人)が行います。

官報公告の費用は約4万5,000円なので、あらかじめ用意しておきましょう。

官報公告掲載までの日数については、法律で定められている日数に間に合わないケースが多いです。実際のデータを参考にしてください。

限定承認をご自身ですることは少ないと思いますが、知っておくと専門家の説明も理解しやすいです。