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限定承認には官報公告が必要なので手順を確認しておこう

限定承認と官報公告
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限定承認をするのに、官報公告が必要なのはご存知でしょうか。

普段の生活で官報を見ることは少ないので、具体的に何をすればいいのか分からない人もいます。

また、限定承認の官報公告料は思っているよりも高いです。

今回の記事では、限定承認と官報公告について説明しているので、限定承認を検討しているなら参考にしてください。

司法書士から一言法改正により相続財産管理人から相続財産清算人に名称変更。

限定承認も3ヶ月以内

目次

1.限定承認が受理された後は官報公告

限定承認の申立てが認められたら官報公告

限定承認の申立てが家庭裁判所に受理されると、官報公告をする必要があります。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
(省略)
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

出典:e-Govウェブサイト(民法927条1項・4項)

1-1.家庭裁判所から受理通知書が届く

家庭裁判所から受理通知書が届く

限定承認の申立てが、家庭裁判所に受理されると、受理通知書が申立人の住所に届きます。

そして、送付された封筒には、官報公告の説明書も同封されているはずです。
※同封されていなくても官報公告は必要。

家庭裁判所からは普通郵便で届くので、郵送物のチェック漏れに注意してください。

1-2.手続きは限定承認者(相続財産清算人)

限定承認の官報公告は限定承認者が手続き

官報公告の手続きをするのは、家庭裁判所ではなく限定承認者(相続財産清算人)です。

相続人が1人であれば、限定承認者が手続きします。

一方、相続人が複数人であれば、代表者が相続財産清算人となり手続きします。

相続人が複数人存在する場合は、限定承認の申立書に相続財産清算人の候補者を記載しておきましょう。

2.限定承認に関する官報公告の期日

限定承認が受理されると、限定承認者(相続財産清算人)は官報公告の手続きをします。

ただし、自分の都合で始めるのではなく、手続きする期日は決まっています。

2-1.公告日は法律で定められている

限定承認に関する官報公告の期日は、法律により定められています。

以下は、民法の条文です。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
(相続人が数人ある場合の相続財産の清算人)
第九百三十六条 (省略)
3 第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の清算人について準用する。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の清算人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。

出典:e-Govウェブサイト(民法927条1項・936条3項)

上記の条文をまとめると、以下になります。

  • 限定承認者  |5日以内
  • 相続財産清算人|10日以内

ただし、官報の掲載には依頼から約7日かかります。事実上、限定承認してから5日以内には間に合いません。

上記に対しては2つの考え方があります。

  • 限定承認の受理通所が届いてから5日以内に掲載依頼する
  • 前もって家庭裁判所で日付を確認して掲載依頼する

実務上では、受理通所書が届いてから5日以内に掲載依頼をすれば、特に問題は発生していません。

2-2.官報掲載までの日数データ

自分で限定承認の手続きをする場合、官報掲載までの日数に不安を感じるでしょう。本当に日数を過ぎていても問題無いのか。

以下は、令和4年6月1日(水)から令和5年5月31日(水)までに、官報に掲載された限定承認634件を分析した表です。

限定承認者と相続財産清算人(旧相続財産管理人)がどのくらいの期間で、官報公告できているのかをチェックしました。限定承認される際の参考にしてください。

限定承認者のケース

限定承認からの日数件数
0日1件
1日1件
2日3件
3日6件
4日10件
5日0件
6日9件
7日23件
8日28件
9日26件
10日21件
11日22件
12日19件
13日38件
14日24件
15日15件
16日10件
17日5件
18日4件
19日4件
20日2件
21日4件
22日2件
23日1件
24日2件
25日2件
26日1件
30日3件
31日1件
32日1件
33日1件
39日1件
41日1件
48日1件
57日1件
61日1件
76日1件
348日1件
1年以上1件

限定承認後5日以内に官報公告できているのは、297件のうち21件(7%)だけです。

通常のやり方では5日以内に間に合わないので、当然の結果になります。

相続財産清算人のケース

限定承認からの日数件数
0日1件
1日0件
2日0件
3日1件
4日0件
5日1件
6日5件
7日23件
8日27件
9日35件
10日35件
11日19件
12日25件
13日26件
14日34件
15日24件
16日28件
17日8件
18日3件
19日6件
20日7件
21日4件
22日3件
23日1件
24日1件
26日1件
27日1件
28日3件
30日1件
32日1件
34日2件
35日1件
37日1件
40日1件
41日1件
55日1件
57日1件
68日1件
70日1件
74日1件
1年以上1件

限定承認後10日以内に官報公告できているのは、337件のうち128件(38%)です。

相続財産清算人(旧相続財産管理人)の方が日数に余裕があるので、期日に間に合っている件数が多くなっています。

3.官報公告(限定承認)にはひな形がある

限定承認の官報公告に、どのような文言が記載されているかご存知でしょうか。

日常生活で官報を見る人は少ないので、掲載される文言も知らない人がほとんどです。

以下は、限定承認公告の例です。官報には縦書きで掲載されます。

限定承認公告の記載例

官報公告の文章はひな型があるので、掲載依頼をする際に困ることはないです。違いがあるのは以下の部分です。

  • 亡くなった人の本籍地・最後の住所・氏名・死亡日
  • 限定承認の受理日・家庭裁判所名
  • 限定承認者(相続財産清算人)の住所・氏名

上記の部分を入れ替えるだけで、官報公告の文章は完成です。ご自身で官報公告をする場合は、本籍地や住所の入力間違いに気を付けましょう。

4.官報公告(限定承認)の費用は高額

限定承認に関する官報公告の費用は、思っているよりも高額です。

4-1.掲載料金は行単位で決まる

官報の掲載料金は行単位なので、行数が増えれば料金も増えます。

ただし、限定承認であれば、12行から15行ぐらいです。

掲載文章は基本的に同じなので、行数もある程度決まっています。行数に幅があるのは、被相続人や限定承認者の本籍地や住所の違い。

以下は、官報公告の掲載料金です。

行数掲載料金
1243,071
1346,660
1450,250
1553,839
官報掲載料金

官報公告の料金は約5万円です。

限定承認を検討する際は、官報公告の掲載料金も計算に入れておきましょう。

4-2.掲載料金は相続財産から支払える

限定承認の官報掲載料金は相続財産から支払える

限定承認の官報掲載料金は、相続財産から支払えます。

以下は、民法の条文です。

(相続財産に関する費用)
第八百八十五条 相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法885条)

官報公告は相続財産の清算手続きに必要なので、相続財産に関する費用です。

ただし、以下の費用は相続財産から支払えません。

  • 専門家報酬(限定承認を依頼)
  • 先買権を行使するための鑑定料

上記は相続財産に関する費用ではなく、相続人に関する費用だからです。

相続財産から支払える費用は、間違えやすいので気を付けてください。

5.限定承認と官報公告に関する注意点

限定承認と官報公告に関する3つの注意点

最後に、限定承認と官報公告に関する注意点を3つ説明します。

  • 負債の有無は官報公告とは無関係
  • 債権者への個別の催告は別に必要
  • 弁済から除斥されても債権は消滅しない

間違えやすい点なので、確認しておいてください。

5-1.負債の有無に関わらず官報は必要

亡くなった人に負債が無くても、限定承認に関する官報公告は必要です。

そもそも、判明していない債権者に対する呼びかけなので、負債の有無は関係ありません。

限定承認と官報公告はセットなので、省略しないよう注意してください。

万が一、官報を省略したことによって、債権者に損害が発生すると、限定承認者(相続財産清算人)は損害賠償責任を負います。

5-2.債権者に対する個別の催告は必要

限定承認の官報公告をしても、知れている(判明している)債権者への個別の催告は必要です。

以下は、民法の条文です。

(相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告)
第九百二十七条 (省略)
3 限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法927条3項)

個別の催告をしなかったことにより、知れている債権者に損害が発生すると、損害賠償責任を負います。

また、個別の催告は受遺者に対しても必要なので、遺言書の内容は確認しておいてください。

5-3.官報記載の除斥とは債権消滅ではない

限定承認の官報には、以下の記載があります。

右期間内にお申し出がないときは弁済から除斥します

勘違いしやすいのですが、弁済とは「公告期間満了後の弁済手続き」のことです。期間内に申し出をしなければ、弁済手続きからは除かれます。

ですが、債権自体は消滅しないので、弁済手続き終了後に財産が残っていれば、権利を行使できます。

以下は、民法の条文です。

(公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者)
第九百三十五条 第九百二十七条第一項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、残余財産についてのみその権利を行使することができる。ただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法935条)

官報記載の期間が経過したら、債権が消滅すると勘違いしている人もいますが、条文はしっかりと確認しておきましょう。

6.まとめ

今回の記事では「限定承認の官報公告」について説明しました。

限定承認が家庭裁判所に受理されると、官報公告をする必要があります。

ただし、官報公告は家庭裁判所がするわけではなく、限定承認者(相続財産清算人)が行います。

官報公告の費用は約5万円なので、あらかじめ用意しておきましょう。

官報公告掲載までの日数については、法律で定められている日数に間に合わないケースが多いです。実際のデータを参考にしてください。

限定承認をご自身ですることは少ないと思いますが、知っておくと専門家の説明も理解しやすいです。

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