同性パートナーに財産を相続させるために、養子縁組を利用することはあります。
なぜなら、養子縁組により親族関係が発生すれば、法定相続人として相続できるからです。
養子縁組には親子型と兄弟姉妹型の2つがあります。どちらでも相続人の地位を得ることができます。
ただし、養子縁組にはリスクもあるので、すべての同性カップルにお勧めできるわけではないです。
今回の記事では、同性カップルと相続対策としての養子縁組について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
目次
1.同性カップルが養子縁組により親子になる
同性カップルが相続対策として昔から利用しているのが、同性カップル間で養子縁組をして親子になる方法です。
養子縁組をするのは簡単で、市役所等に養子縁組届を提出すれば成立します。
1-1.養子縁組により同性パートナーは第1順位の相続人
養子縁組の成立により、養子になった同性パートナーは第1順位相続人となります。
法律上、実子と養子に区別はないので、養親が亡くなると直系尊属や兄弟姉妹の存在に関係なく相続できます。
たとえ養親が遺言書を残していなくても、養子である同性パートナーが財産を取得します。
ただし、養親に実子がいると共同相続人になるので、遺言書等の相続対策は別に必要です。
1-2.親子型の養子縁組にも問題点がある
同性カップルが親子型の養子縁組を利用する際には、問題点もあるので気を付けてください。
- 養親を選べない
- 代襲相続の可能性
- 予期せぬ発覚
①どちらが養親になるか選べない
養子縁組を結ぶ際に、どちらが養親になるか選らぶことはできません。
同性カップルの年長者が自動的に養親になるので、財産を残す方が養子になることもあります。
養子が先に亡くなると、同性パートナーは親としての相続順位(第2位)になります。
実親が健在の場合に遺言書を書いていないと、同性パートナーは実親と遺産分割協議をする必要があります。
②代襲相続が発生する可能性
同性パートナー(養親)が亡くなった後で、代襲相続人になる可能性があります。
代襲相続とは、本来は同性パートナー(養親)が相続人になるはずだった相続を、子ども(養子)が代わりに相続することです。
亡くなった同性パートナーの兄弟姉妹と共同相続人になるので、余計なトラブルを招く可能性はあります。
*兄弟姉妹からすると、親の財産を他人が相続する形になる。
相続財産はプラスの財産だけではないので、マイナスの財産(借金)も相続することになります。
関連記事を読む『同性カップルと代襲相続|養子縁組が結ぶ予期せぬ財産』
③戸籍謄本から予期せぬ発覚
同性カップルが養子縁組を結ぶと、戸籍謄本に記載されます。
日常生活で他人に戸籍謄本を見せる機会は少ないですが、相続手続等では親族の戸籍謄本を集めます。
ですので、家族にカミングアウトしていない場合は、養子縁組に疑問を持たれる恐れがあります。
2.同性カップルが養子縁組により兄弟姉妹になる
同性カップルの養子縁組としては、親子型だけでなく兄弟姉妹型もあります。
兄弟姉妹型とは、同性カップルの親と養子縁組をして兄弟姉妹になる方法です。
※2人が第3者と養子縁組も結ぶケースも含む。
同性パートナーと親子関係を結ぶことに、精神的な抵抗がある人もいます。法律上は夫婦ではなく親子になるからです。
それに対して、兄弟姉妹型なら親子関係を結ばずに、相続人の地位を得ることが可能です。
ただし、親子型よりも相続対策として選ぶメリットは少ないです。
同性パートナーの相続順位は第3順位(兄弟姉妹)になるので、遺言書を書く等の対策は必要になります。
また、養親になる人の協力も必要なので、利用しにくい養子縁組の方法です。
3.同性カップルの養子縁組にはリスクもある
同性カップルの養子縁組にはリスクもあるので、養子縁組を結ぶ際には十分に気を付けてください。
- 同性パートナーの親族とトラブル
- 同性パートナーと結婚できない
- 同性パートナーと別れた後の離縁手続
3-1.養子縁組により同性パートナーの親族とトラブル
同性カップルが養子縁組を結ぶことにより、同性パートナーの親族とトラブルになる可能性があります。
主なトラブルとしては、養子縁組による相続人の変更です。
同性パートナーが養子になることにより、財産を相続することができなくなる親族が、養子縁組無効の訴えを起こす可能性はあります。
相続目的で養子縁組をするのは一般的なので、負ける可能性は低いですが揉めて得することはないです。
3-2.養子縁組により法改正があっても結婚できない
同性カップルが養子縁組を結ぶことにより、法改正により同性婚が認められても結婚できない可能性があります。
なぜなら、養子縁組により親子になると、養子縁組を解消しても結婚できないからです。
将来、法改正により同性婚が認められても、養子縁組を結んでいると結婚できないです。
法改正の際に国が同性カップルに特例を認める保障はありません。
関連記事を読む『養子縁組を解消しても結婚できない!法律で禁止されている』
3-3.同性パートナーと別れた後の離縁手続
同性カップルが養子縁組を結んだ後に別れることはあります。
ただし、同性カップルが別れても、養子縁組が自動的に解消されるわけではありません。
養子縁組を解消するには、養子離縁届を提出する必要があります。
相手方の協力が得られるのであれば問題ないですが、別れる際に揉めていると養子縁組を解消するのも大変です。
養子縁組は成立時よりも解消時の方が揉めやすいので、離縁手続には注意してください。
4.同性カップルの最終的な相続は養子縁組では解決できない
同性カップルの養子縁組により解決するのは、2人の間の相続についてです。
そのため、最終的な2人の財産の行方については、養子縁組では解決できていません。
相続対策を何もしていなければ、後に亡くなる人の法定相続人が2人の財産を相続します。
※法定相続人が存在しなければ国庫に帰属します。
同性カップル間の相続対策を話し合う際は、2人の財産の最終的な相続についても話し合っておきましょう。
関連記事を読む『養子縁組だけでは解決できない|2人が亡くなった後の相続』
5.同性カップルの養子縁組には相続対策以外のメリット
同性カップルの養子縁組には相続対策以外にもメリットがあります。
- 同性カップルで同じ氏を名乗ることができる
- 同性パートナーの緊急時に家族として医療行為の同意ができる
- 扶養家族として税務上のメリットがある
- 遺族年金を取得できる
何をメリットと感じるかは人それぞれですが、相続対策以外を目的に養子縁組を結ぶ人もいます。
今回の記事は、相続対策としての養子縁組について説明しているので、生活面に関しては以下の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『同性パートナーと養子縁組|生活面でのメリットは多い』
6.さいごに
同性カップルが財産を残すための手段として、養子縁組を利用することはあります。
ただし、相続させるためだけに養子縁組を利用するとリスクも大きくなります。安易に使うことで、残された同性パートナーが困ることにもなります。
同性パートナーに財産を残すためだけなら、他の方法で達成できます。ただし、年齢等を考慮した結果、養子縁組を選ぶ場合も当然あります。
同性カップルで養子縁組を利用するときは、得られるメリットとリスクについて熟慮する必要があります。