同性パートナーと養子縁組を結ぶことで、親族関係を得ることができます。親族になることで生活面でメリットが発生します。
生活するうえでの費用については様々なメリットがあります。所得控除の発生や年金を受け取ることもできます。
今回の記事は生活面に関してなので、相続面は『同性カップルと養子縁組|相続対策にはリスクもある』で説明しております。
目次
- 親族として権利と義務が発生
- 親子として相続人になる
- 2人の間に扶け合う義務
- 家族として付き添いや面会
- 所得控除も発生する
- 扶養親族として扶養控除
- その他の控除も適用
- 親子として年金の受取人
- 贈与税の特例税率が適用
- 相続税の基礎控除額に影響
- まとめ
1.親族として権利と義務が発生
同性パートナーと養子縁組を結ぶことにより、親族として権利と義務が発生します。
1-1.親子として相続人になる
同性カップルが養子縁組を結ぶことで、親子として相続権が発生します。
「実子と養子」「実親と養親」の相続人としての地位は同じです。
養子は第1順位の相続人となるので、確実に相続することができます。
それに対して、養親は第2順位の相続人となるので、先順位相続人がいる場合は相続できません。
相続順位については『法定相続人|誰がなるかは法律により定められている』でご確認ください。
1-2.2人の間に扶け合う義務が発生
養子縁組を結ぶと同性カップル間で扶け合う義務が発生します。
直系血族には養親と養子も含まれるので、同性カップルは法律上も扶け合わなければなりません。
注意貞操義務や同居義務は発生しません。
1-3.家族として付き添いや面会
同性カップルにとって困ることが多い、医療関係においてもメリットがあります。
同性パートナーの入院時に家族として付き添いや面会等ができますし、手術の同意書への署名も求められます。
法律上は養親と実親(養子と実子)に区別は無いので、医療機関も断ることはできません。
2.所得控除も発生する
養子縁組を結ぶことで所得控除も発生します。長期間になると費用面のメリットも増えます。
2-1.扶養親族として扶養控除
同性パートナーを扶養親族として、控除を受けることができます。
扶養親族とは、その年の12月31日の現況が以下の4つをすべて満たす人です。
- 配偶者以外の親族
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が38万円以下であること
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下) - 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと。
2-2.その他の控除も適用される
養子縁組を結ぶと、その他の控除も適用されます。
医療費控除
同性パートナーのために医療費を支払った場合、一定額を超えるときは医療費控除を受けることができます。
社会保険料控除
同性パートナーが負担すべき社会保険料を支払った場合に、支払い金額について社会保険料控除を受けることができます。
生命保険料控除
通常、生命保険金の受取人に同性パートナーを指定しても、生命保険料控除を受けることはできないです。
ですが、養子縁組を結ぶと親族になるので、生命保険料控除を受けることができます。
3.親子として年金の受取人
年金に関しては説明が複雑になるので、簡略化して記載しています。
【遺族厚生年金】
同性パートナー(養子)が厚生年金に加入していて、養子が先に亡くなり養親が55歳以上の場合は、条件を満たすと遺族厚生年金が受け取れます。
【死亡一時金】
同性パートナーが国民年金第1号被保険者として36ヶ月以上保険料を納めていて、年金を受給する前に亡くなった場合は、条件を満たすと死亡一時金を受け取れます。
【未支給年金】
すでに年金を受給している同性パートナーが亡くなった場合は、未支給年金が受け取れます。
*年金は2ヵ月に一度支給なので、未支給分が発生します。
4.贈与税の特例税率が適用
養親から養子(20歳以上)への贈与については、一般の贈与税の税率よりも低い特例税率が適用されます。
基礎控除110万円を除いた価格に税率を適用します。
基礎控除後 の課税価格 |
一般税率 | 特例税率 | ||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万以下 | 10% | – | 10% | – |
200万超 300万以下 |
15% | 10万 | 15% | 10万 |
300万超 400万以下 |
20% | 25万 | ||
400万超 600万以下 |
30% | 65万 | 20% | 30万 |
600万超 1,000万以下 |
40% | 125万 | 30% | 90万 |
1,000万超 1,500万以下 |
45% | 175万 | 40% | 190万 |
1,500万超 3,000万以下 |
50% | 250万 | 45% | 265万 |
3,000万超 4,500万以下 |
55% | 400万 | 50% | 415万 |
4,500万超 | 55% | 640万 |
(例)養親から養子に1,000万円贈与した場合
養子縁組をしていない同性カップル
1,000万円-110万円=890万円
890万円×40%=356万円
356万円-125万円=231万円
贈与税は231万円
養子縁組をした同性カップル
1,000万円-110万円=890万円
890万円×30%=267万円
267万円-90万円=177万円
贈与税は177万円
注意養子から養親への贈与は一般税率になります。
贈与する金額が増えるとメリットも増えますが、相続税との比較も必要です。
『同性婚と生前贈与|確実に渡せるが注意点もある』で注意点等について説明しております。
5.相続税の基礎控除額に影響
同性カップル間で養子縁組をすると、相続税に影響を及ぼします。
なぜなら、法定相続人の数に変更があると、基礎控除額等も変更するからです。
例えば、養子縁組を結ぶ前の法定相続人が兄弟3人だったとします。養子縁組を結ぶことにより法定相続人は1人となります。
- 法定相続人3人:基礎控除額4,800万円
- 法定相続人1人:基礎控除額3,600万円
相続税に関しては、養子縁組をすると結果として増額になる可能性もあります。
6.まとめ
同性カップルが親子の養子縁組をすると、生活面において様々なメリットが発生します。
同性婚では認められなかった権利や義務が、法律上の家族になることで認められるようになります。
同性パートナーに相続させるためだけに、養子縁組を利用するのはリスクが多いです。
しかしながら、生活面も考慮するならメリットも多いです。
今回の記事では、すべてを書くことはできませんでした。年金や社会保険等は複雑になるので簡略化しています。
あなたにとって何がベストなのかは、本当のところはわからないです。それでも、2人で考えたうえでの結果なら、後悔は少ないのではないでしょうか。