独身の人が相続対策として養子縁組をするのは、昔から使われている方法の一つです。親から受け継いだ土地・建物の管理や、お墓の祭祀を任せる等が目的にあります。
相続対策としての養子縁組は、「大人と子ども」ではなく「大人と大人」の養子縁組がほとんどだと思います。ですので、子どものいない夫婦が養子縁組をするのとは、別ものと言えるでしょう。
養子縁組を検討されている人の参考になれば幸いです。
1.養子縁組は2種類ある
養子縁組は普通養子縁組と特別養子縁組の2種類あります。
ただし、独身者の相続対策として特別養子縁組を使うことはありません。特別養子縁組の要件を満たすことが出来ないからです。
普通養子縁組とは、親子ではない2人が法律上の親子関係を創る方法のことです。相続対策以外でも使われることがあり、要件も厳しくありません。
2.普通養子縁組の要件
独身の人がする普通養子縁組の要件は厳しくないのですが、一応確認しておいてください。
- 養親の年齢
- 養子の年齢
- 尊属は養子にできない
- 養子に配偶者いるなら同意
2‐1.養親の年齢
養親となる人が成年に達していれば大丈夫です。相続対策で養子縁組をする人は、間違いなく成年なので問題ないはずです。
2‐2.養子の年齢
養親になる人が養子より年長であればいいです。養子が未成年者の場合は家庭裁判所の許可が必要になりますが、相続対策で未成年者を養子にすることは少ないと思います。
2‐3.尊属を養子にはできない
養子になる人が養親の尊属でないことも要件となります。
- 尊属
- 自分よりも前の世代に属する血族のこと
分かりやすく説明するなら叔父・叔母のことです。世の中には自分よりも年下の叔父・叔母もいると思いますが、尊属に当たるので養子にすることはできません。
2‐4.養子が結婚しているなら配偶者の同意
養子になる人が結婚しているなら、配偶者の同意が必要となります。配偶者にとっても無関係な話ではないからでしょう。
3.養子縁組の相続における効力
養子縁組をすることで相続には、どのような効力があるのでしょうか。
主に以下のような効力があります。
- 相続権が発生
- 相続人が変更
- 相続税の基礎控除額に影響
3‐1.養親と養子間で相続権が発生する
養子縁組が成立すると法律上の親子となるので、お互いに相続権が発生します。
養親が亡くなると養子が相続人となりますし、養子に子どもがいなければ養親も相続人となり得ます。
3‐2.相続人が変更する可能性がある
養子縁組を検討している人が独身であれば、相続人は親(直系尊属)または兄弟姉妹の可能性が高いです。年齢的なことを考えると兄弟姉妹ではないでしょうか。
養子縁組をすることにより、養子が相続順位の第1位となります。ですので、養子縁組により相続人自体が変更することもあります。
3‐3.相続税の基礎控除額にも影響する
養子縁組をすることにより、相続税の基礎控除額にも影響があります。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の人数×600万円」です。養子縁組をすることにより法定相続人の人数に変更があれば、相続税の基礎控除額にも変更があります。
例えば、法定相続人が元々0人であれば、養子縁組をすることにより基礎控除額は増えることになります。
4.養子縁組の注意点を知っておこう
相続対策で養子縁組を使うと、想定していなかった事態が起こることもあります。後々困らないように確認しておいてください。
- 親族とトラブルになる
- 養子が先に亡くなる
- 養子が離縁に応じない
4‐1.親族とトラブルになる可能性
養子縁組をすることにより、親族とトラブルになる可能性があります。
具体的には、養親の兄弟姉妹と養子が揉めやすいです。なぜかというと、養子縁組をしなければ兄弟姉妹が相続人になるのですが、養子が登場することにより財産を相続することができなくなるからです。
養子縁組について兄弟姉妹が知らなければ、自分が相続人だと思ってしまいます。あなた(養親)が亡くなってから急に養子が登場すると、養子縁組自体を疑うことにも繋がりかねないです。
可能であれば養子縁組について兄弟姉妹と連絡を取っておいてください。
4‐2.養子が先に亡くなる可能性
あなた(養親)がいつ亡くなるのかを正確に知ることは難しいでしょう。同じように養子がいつ亡くなるかを知ることも難しいです。つまり、相続対策で養子縁組をしても、養子の方が先に亡くなる可能性は当然あります。
完全に防ぐことは無理なので、できる限り年齢の離れた人を養子にするぐらいしかないです。
4‐3.養子と離縁で揉める可能性
相続対策で養子縁組をしても、途中で気が変わることもあります。別の人に後を継いでほしくなった等も考えられます。
養親と養子が同意すれば離縁することは簡単です。養子離縁届を提出するだけで関係を解消できます。
問題は養子が離縁に応じない場合です。家庭裁判所が関与する調停離縁・審判離縁・裁判離縁をすることになります。
離縁するまでに時間がかかることを覚悟する必要があります。
5.さいごに
独身の人が後継ぎ対策で養子縁組を使うことは、昔からよく聞く話です。甥・姪や年齢の離れた弟・妹を養子にすることも珍しくありません。知り合いの子どもを養子にするといった話を聞いたこともあります。
養子縁組自体は難しくないのですが、トラブルになる可能性もあるので確認しておいてください。
相続に関する悩みは複雑になりやすいので、お気軽にお問い合わせください。