亡くなった人の口座から預金を引き出していても、相続放棄を諦める必要はありません。
実務上、預金を引き出しただけなら、相続放棄は認められています。
ただし、口座から引き出した預金を消費すると、単純承認とみなされて相続放棄はできません。
今回の記事では、相続放棄と預金引き出しについて説明しているので、相続放棄を検討しているなら参考にしてください。
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1.預金を引き出しても相続放棄を諦める必要はない
亡くなった人の預金を引き出しても、相続放棄を諦める必要はありません。
なぜかというと、預金を引き出しただけなら、相続放棄は受理されているからです。
ただし、引き出した預金の扱いには注意してください。
1-1.引き出した預金を消費したら単純承認
亡くなった人の口座から引き出した金銭を消費したら、単純承認とみなされるので相続放棄はできません。
口座から金銭を引き出したことよりも、金銭を消費することが問題になります。
関連記事を読む『相続放棄が認められない|単純承認とみなされる3つの行為』
1-2.引き出した預金を葬儀費用に使った
亡くなった人の財産(金銭)を処分すると、単純承認とみなされます。
ただし、口座から引き出した金銭を葬儀費用に使った場合は、相続放棄が認められています。
常識の範囲内であれば相続財産を葬儀費用に充てても、相続財産の処分には該当しないと考えられているからです。
関連記事を読む『相続放棄は葬儀代を支払っても認められるのか?』
1-3.引き出した預金を現金として保管
亡くなった人の口座から預金を引き出した後に相続放棄するなら、引き出した預金は自分の財産と分けて保管する必要があります。
何も考えずに自分の口座に振り込んでしまうと、相続財産を自分のものにしたと判断されます。
引き出した預金は封筒に入れるなどして、相続財産だと分かるようにしてください。封筒に日付や金額も記載しておくと分かりやすいです。
司法書士から一言亡くなった人の口座に戻すのも方法の一つと考えられます。
2.相続放棄が受理された後も引き出した預金は保管
被相続人の預金を引き出しても、相続財産(現金)を消費していなければ、相続放棄の申述書は受理されています。
ですが、相続放棄が受理された後で、相続放棄無効の裁判を起こされる可能性はあります。
2-1.相続放棄後でも引き出した預金を消費すると単純承認
相続放棄が受理された後でも、引き出した預金を消費すると単純承認とみなされます。
以下は、民法の条文です。
相続放棄が認められたからといって、引き出した預金を消費してはいけません。
また、相続放棄が受理された後に預金を引き出して消費すれば、当然ですが単純承認したとみなされます。
2-2.引き出した預金の消費に気付けば相続放棄無効の裁判
債権者が引き出した預金の消費に気付けば、相続放棄無効の審判を起こす可能性があります。
相続放棄が認められた後でも、相続放棄無効の訴えを起こすことは可能です。
裁判により相続放棄が無効と判断されると、借金を相続することになります。
3.相続財産管理人に引き出した預金を渡す
亡くなった人の相続人が全員相続放棄した場合、債権者等は相続財産管理人を選任することが可能です。
選任された相続財産管理人は相続財産の調査を行います。預貯金口座の履歴を確認すれば、死亡後に預貯金を引き出していることが判明します。
相続財産管理人から連絡があれば、保管しておいた預貯金を引き渡してください。
万が一、預貯金を引き渡すことができなければ、相続財産を消費したと判断されるでしょう。
4.相続放棄するなら預金は引き出さない方が安全
現在の実務では預貯金を引き出しただけなら相続放棄は認められています。
ですが、相続放棄をするなら亡くなった人の財産(預貯金口座)には関わらない方が安全だといえます。
なぜなら、今後取り扱いが変わる可能性もありますし、債権者が裁判を起こして勝つ可能性もあるからです。
すでに預貯金を引き出しているなら別ですが、わざわざ預貯金を引き出しても得することは何もありません。
相続放棄をするなら相続財産には関わらないことをお勧めします。
5.さいごに
亡くなった人の口座から預金を引き出しても、相続放棄を諦める必要はありません。
実務上、預金を引き出しただけなら相続放棄は受理されています。
ただし、引き出した金銭を消費すると、単純承認とみなされるので相続放棄できません。
亡くなった人の金銭は自分の財産と区別して保管します。間違っても自分の口座には振り込まないでください。
相続放棄が認められた後も金銭の保管は必要です。消費してしまうと単純承認とみなされます。
相続放棄するなら相続財産には関わらない方が安全です。