相続放棄は財産を受け取ってしまったら無理なのか?

財産を受取っても相続放棄
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相続財産を受け取ってしまったら、相続放棄できないのかと悩んでいる人は多いです。

ですが、亡くなった人の財産を受け取ってしまっても、相続放棄を諦める必要はありません。よほど悪質でなければ認められています。

もちろん受け取らない方がいいので、安易に財産を受け取るのは止めましょう。

知らずに(勘違いして)財産を受け取ってしまったら、慌てずに専門家に相談してください。

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目次

1.受け取ってしまったら相続放棄に影響するのか

相続財産の受け取りは処分行為または保存行為

まずは、財産を受け取ってしまったら、相続放棄に影響するのかという点について説明します。

亡くなる前から相続放棄を検討していた人は別ですが、亡くなった直後に財産を受け取ってしまう人は珍しくありません。

相手方から金銭の受取を求められたら、相続放棄に影響するか分からず、受け取ってしまうのでしょう。

では、亡くなった人の財産を受け取ってしまうと、相続放棄に影響はあるのでしょうか。

以下の、どちらに該当するかで、結論は変わります。

  • 財産の受取は処分行為に該当する
  • 財産の受取は保存行為に該当する

それぞれ説明していきます。

1-1.財産の受取は処分行為に該当する

相続放棄するうえで注意すべき点に、相続財産の処分があります。

相続財産を処分すると単純承認とみなされて、3ヶ月経過していなくても相続放棄できなくなります。

以下は、民法の条文です。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

出典:e-Govウェブサイト(民法921条1項)

問題は、相続財産の受取が、処分行為に該当するかです。

過去の判例では、自分の財産だと認識して受け取ると、処分行為になると判断されています。

当然ですが、受け取った財産を自己のために消費していれば、処分行為になるので注意してください。

1-2.財産の受取は保存行為に該当する

財産の受取が保存行為に該当するという考えもあります。

  • 未払い給与の受取
  • 還付金の受取
  • 身の回り品の受取

上記の金銭等を受け取っても、自分のために消費するのではなく、相続財産として保管しているのであれば、保存行為に該当するという考えです。

財産の受取が保存行為に該当するなら、単純承認とはみなされないので、相続放棄も認められます。

ただし、受取を処分行為と考える人もいます。安易に受け取るのは止めた方が良いでしょう。

2.財産を受け取ってしまったら分けて保管

亡くなった人の財産を受け取ってしまった場合、相続放棄するなら自分の財産とは分けて保管しましょう。

なぜかというと、受け取った財産を自分の財産と一緒にしていると、相続放棄で不利になる可能性があるからです。

例えば、受け取った金銭を自分の口座に入金している場合、第3者から見ると相続(単純承認)しているように見えます。

受け取った財産は自分財産と分けて保管

あくまでも間違えて(知らずに)受け取った財産なので、自分の財産とは違うと第3者が見ても分かるように保管してください。

相続人や相続財産清算人が現れたら、保管していた財産を引き渡してください。

3.受け取ってしまったら慌てずに相続放棄を相談

亡くなった人の財産を受け取ってしまった場合、慌てずに相続放棄を相談してください。

なぜなら、勘違いしているケースも多いからです。

  • 相続財産以外は受け取れる
  • 財産を受け取った人が自分ではない

それぞれ説明していきます。

3-1.相続財産以外は受け取れる

固有財産を受け取っても相続放棄に影響しない

みかち司法書士事務所では、相続放棄の電話相談もしているので、以下のような電話をよく受けます。

相続人

財産を受け取ってしまったので相続放棄は無理ですか?

ただし、話を詳しく聞いてみると、受け取った財産が相続財産ではなかったケースも多いです。

当然ですが、相続財産以外を受け取っても、相続放棄には何の影響もありません。

生命保険金は受取人固有の財産なので、受取人が自分であれば受け取って問題ないです。

未支給年金の受取人は法律で決まっているので、相続放棄は関係ありません。

遺骨や位牌などは相続財産ではなく祭祀財産なので、受け取っても相続放棄に影響しないです。

以下の記事では、相続放棄しても受け取れる財産について説明します。

3-2.財産を受け取った人が自分ではない

単純承認したかは相続人ごとに判断する

相続財産を受け取った人が自分以外であれば、あなたの相続放棄には影響しません。

なぜなら、相続放棄は個別の手続きなので、単純承認したかどうかも個別に判断されるからです。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |子ども(A・B・C)
財産受取|Aが医療費の還付金を受け取った

BとCは財産を受け取っていないので、何の問題もなく相続放棄できます。

他の相続人が相続財産を受け取っても、あなたの相続放棄には影響しないので安心してください。

4.相続放棄するなら受け取りやすい財産に注意

相続放棄を検討しているなら、間違って受け取りやすい財産に注意してください。

  • 高額療養費の還付金
  • 介護保険料や税金の還付金
  • 身の回り品(現金等)

それぞれ説明していきます。

4-1.高額療養費の還付金は発生しやすい

高額療養費の還付金は相続財産

私が相続放棄の相談を受ける中で、高額療養費の還付金という言葉が出てくるのは珍しくありません。

なぜなら、亡くなる前に手術や治療を受けていると、高額療養費の還付金が発生しやすいからです。

高額療養費の還付

支払った医療費が自己負担額を超えていた場合、超過額が返還される制度のこと

ただし、高額療養費の還付金は相続財産なので、相続放棄するなら受け取らないでください。

間違えて受け取った場合は、分けて保管するなどの対策を取りましょう。

4-2.介護保険料や税金の還付金も相続財産

相続放棄すると介護保険料や税金の還付金は受け取れない

高額療養費に比べると発生する可能性は低いですが、介護保険料や税金の還付金にも注意してください。

あくまでも、還付金を受け取れるのは、本人および相続人です。

相続放棄するのであれば、受け取る必要がありません。気付かずに受け取った場合は、自分の財産とは分けて保管してください。

4-3.身の回り品(現金等)の影響は少ない

亡くなった人が孤独死すると、警察や生活福祉課から身の回り品を渡されるケースがあります。

例えば、家族が亡くなったと警察から連絡があり、警察署にて身の回り品(現金等)を手渡されたとします。警察相手に断るのは難しいので、ほとんどの人は受け取るはずです。

警察から手渡される身の回り品(現金等)であれば、受け取っても単純承認とはみなされないでしょう。

もし受け取った現金が高額であれば、自分の財産とは分けて保管してください。

5.受け取ってしまっても諦めずに相続放棄

相続財産を受け取っても相続放棄の申述はできる

最後に、相続放棄の専門家から、悩んでいる人に向けてアドバイスです。

亡くなった人の財産を間違えて(知らずに)受け取ってしまっても、諦めずに相続放棄することをお勧めします。

なぜなら、相続財産を受け取った人でも、家庭裁判所に相続放棄の申述書は提出できるからです。

家庭裁判所が問題ないと判断すれば相続放棄は認められます。仮に認められなくても、今より悪くなるわけではありません。

専門家が処分行為に該当するから無理だと言っても、相続放棄したい理由や事情があるなら、諦めずに挑戦する価値はあります。

6.まとめ

今回の記事では「財産を受け取ってしまったら相続放棄できるのか」について説明しました。

相続放棄するのであれば、亡くなった人の財産は受け取らない方が良いです。

ただし、相続放棄を検討する前に、財産を受け取ってしまうことは珍しくありません。

相続放棄するなら受け取った財産は、自分の財産と分けて保管してください。

間違えて相続財産を受け取った場合でも、諦めずに相続放棄することをお勧めします。家庭裁判所が問題ないと判断する可能性はあります。

受け取ってしまったらに関するQ&A

財産を受け取っても相続放棄できた人はいますか?

います。

兄弟が還付金を受け取っても相続放棄できますか?

あなたの相続放棄には影響しません。

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