【同性カップルと相続税】パートナーも課税対象者になる

同性カップルと相続税
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同性パートナーが相続財産を取得した場合も、相続税の課税対象になるのはご存知でしょうか。

相続人なら当然に認められている控除や特例が、同性パートナーには認められていません。

そのため、相続人よりも相続税が発生しやすくなります。

今回の記事では、同性パートナーと相続税について説明しているので、財産を残す際の参考にしてください。

目次

  1. 同性パートナーも相続税の対象となる
  2. 法定相続人の人数が基礎控除額に関係
    1. 同性パートナーの相続人が0人でも3,000万円は控除
    2. 相続人の人数は戸籍謄本で確認
  3. 同性パートナーは相続税で不利になる
    1. 同性パートナーは配偶者控除が適用されない
    2. 同性パートナーに土地を遺贈するなら注意
    3. 同性パートナーは相続税が2割加算
  4. 同性パートナーが受け取る生命保険金も相続税の対象
    1. 生命保険金はみなし相続財産
    2. 同性パートナーは生命保険金の非課税枠が適用されない
  5. 同性カップルも相続税の注意点を知っておこう
    1. 相続税は現金一括納付
    2. 相続税を払わないと連帯納付義務
  6. 同性パートナーに相続税が発生する可能性
    1. 生命保険金を受け取る同性パートナーが増える
    2. 不動産を購入する同性カップルが増える
    3. 亡くなった同性パートナーの相続人が少ない
  7. 同性カップルの養子縁組は相続税にも影響
    1. 同性パートナーを法定相続人として相続税を計算
    2. 養子縁組により基礎控除額が減る可能性
  8. さいごに

1.同性パートナーも相続税の対象となる

同性パートナーが遺贈により財産を取得すると、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。

(相続税の納税義務者)
第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
イ 一時居住者でない個人

出典:e-Govウェブサイト(相続税法1条の3)

相続人ではないのに相続税の対象となるので、贈与税と間違えないように注意してください。

ただし、常に相続税が発生するわけではなく、亡くなった人の財産が基礎控除額を超えた場合のみ発生します。

基礎控除額を超えたら相続税

相続税が発生するかを知るには、相続税の基礎控除額を知る必要があります。

 

2.法定相続人の人数が基礎控除額に関係

相続税の基礎控除額がいくらになるかは、亡くなった同性パートナーの法定相続人が関係します。

相続税の基礎控除額の計算式
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額

法定相続人の人数が多いほど、基礎控除額も増えるようになっています。

2-1.同性パートナーの相続人が0人でも3,000万円は控除

亡くなった同性パートナーに法定相続人がいない場合でも、3,000万円は基礎控除されます。

3,000万円+(600万円×0)=3,000万円

したがって、亡くなった同性パートナーの財産が3,000万円以下なら、相続税は発生しないことになります。

2-2.同性パートナーの相続人は戸籍謄本で確認

同性パートナーの家族構成を聞いている場合は別ですが、疎遠になっている場合は相続人を知らないこともあります。

相続税の基礎控除額は、相続人の人数で違いが生まれます。

〈例題1〉同性パートナーの相続人が母親1人の場合

3,000万円+600万円×1=3,600万円(基礎控除額)

3,600万円を超えた部分に相続税がかかります。

〈例題2〉同性パートナーの相続人が兄弟2人の場合

3,000万円+600万円×2=4,200万円(基礎控除額)

4,200万円を超えた部分に相続税がかかります。

相続税の基礎控除額を計算するなら、法定相続人の人数は必ず戸籍謄本等を取得して確認してください。

 

3.同性パートナーは相続税で不利になる

相続税には基礎控除以外にも、さまざまな控除や特例があります。

  • 相続税の配偶者控除
  • 小規模宅地の特例

上記の控除や特例は同性パートナーには適用されません。

そのため、法定相続人が相続する場合より、相続税が発生する可能性が高くなります。

また、同性パートナーに相続税が発生すると、2割加算の対象となります。

3-1.同性パートナーは配偶者控除が適用されない

実際の相続で配偶者に相続税が発生することは、ほとんどありません。

なぜなら、相続税には配偶者控除があるからです。

相続税の配偶者控除
配偶者が取得する財産が1憶6,000万円または法定相続分までは、相続税が非課税になる制度のこと

相続税の配偶者控除が適用されるのは、法律上の配偶者のみです。同性パートナーは適用されません。

3-2.同性パートナーに土地を遺贈するなら注意

不動産に関する重要な相続税の特例に、小規模宅地等の特例があります。

詳しい説明は省きますが、相続した土地の評価額を最大80%減額する特例です。

ただし、小規模宅地の特例は同性パートナーには適用されません。

同性パートナーに土地を遺贈するなら、相続税の発生に気を付けてください。

3-3.同性パートナーは2割加算の対象

同性パートナーに相続税が発生する場合、相続税は2割加算されます。

(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。

出典:e-Govウェブサイト(相続税法18条)

分かりやすく説明するなら、配偶者と親・子ども以外の人に相続税が発生する場合は、2割加算した金額を相続税とします。

例えば、同性パートナーに相続税が100万円発生するなら、2割加算されて120万円が相続税となります。

相続税の計算をする場合は、最後に2割加算するのを忘れないでください。

 

4.同性パートナーが受け取る生命保険金も相続税の対象

同性パートナーを生命保険金の受取人にできる保険会社も増えています。

同性カップルにとっては良いことですが、相続税では注意が必要になります。

なぜなら、同性パートナーが生命保険金を受け取った場合も、相続税の課税対象となるからです。

4-1.生命保険金はみなし相続財産

生命保険金は相続財産ではないのですが、相続税の計算上は相続財産とみなされます。

みなし相続財産
相続財産ではないが相続税の計算上では相続財産とみなすこと

ですので、同性パートナーが遺贈を受けていなくても、生命保険金を受け取っている場合は、相続税が発生する場合もあります。

そして、同性パートナーは生命保険金の計算でも不利になります。

4-2.同性パートナーは生命保険金の非課税枠が適用されない

生命保険金をみなし相続財産として計算するときは、非課税枠を差し引いて計算します。

ただし、同性パートナーは生命保険金の非課税枠が適用されません。

生命保険金の非課税枠は同性パートナーには適用されない

同性パートナーが生命保険金を受け取ると、全額が相続税の計算に組みこまれます。

同性パートナーが生命保険金を受け取ると相続税が発生しやすくなるので、前もって計算しておきましょう。

 

5.同性カップルも相続税の注意点を知っておこう

相続税に関係するその他の注意点です。

5-1.相続税は現金一括納付になる

相続税は亡くなった日から10ヶ月以内に、現金一括納付となります。

同性パートナーに残す財産の大半が不動産であれば、相続税を支払うための現金を用意する必要があります。

最悪の場合、相続税を支払うために不動産を処分しなければなりません。

相続税が発生しそうな場合は、前もって現金を用意しておきましょう。

5-2.相続税を払わないと連帯納付義務

相続税を払わない人がいると、他の納税義務者が連帯して納付する義務を負います。

(連帯納付の義務等)
第三十四条 同一の被相続人から相続又は遺贈(第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下この項及び次項において同じ。)により財産を取得した全ての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。(省略)

出典:e-Govウェブサイト(相続税法34条1項)

相続財産を同性パートナーが全部取得する場合は別ですが、親や兄弟姉妹も財産を取得する場合は注意してください。

相続税を払わない親や兄弟姉妹がいると、税務署から同性パートナーに連絡が届きます。連帯納付義務は拒否できないので、最終的には支払う必要があります。

相続財産を複数人で取得する場合は、相続税の連帯納付義務に気を付けてください。

 

6.同性パートナーに相続税が発生する可能性

同性パートナーに相続税が発生する可能性は、昔に比べると高くなると思われます。

主な理由としては、以下の3つがあります。

  • 生命保険金の受取人が増える
  • 不動産を購入しやすくなっている
  • 相続人が少ない

それぞれ簡単に説明していきます。

6-1.生命保険金を受け取る同性パートナーが増える

2015年11月より生命保険金の受取人に、同性パートナーを指定することが保険会社によっては可能になりました。

ですが、実際に生命保険金を受け取った同性パートナーは、今はまだ少ないはずです。5年後10年後ぐらいからは、生命保険金を受け取る同性パートナーは増えていくでしょう。

当然ですが、生命保険金を受け取れば、相続税が発生する可能性も高くなります。

6-2.不動産を購入する同性カップルが増える

同性カップルが不動産を購入するハードルが、今までよりは低くなっています。

ただし、不動産を購入する同性カップルが増えれば、相続財産に不動産が含まれるケースも増えます。不動産の評価額が高ければ、相続税が発生する可能性も高くなります。

不動産が単独名義になっているなら、残す対策だけでなく相続税についても気を付けてください。

6-3.亡くなった同性パートナーの相続人が少ない

昔に比べると出生人数が減っているので、同性パートナーに兄弟姉妹がいる可能性も低くなっています。

同性パートナーの相続人は兄弟姉妹が一番可能性が高いので、同性パートナーの兄弟姉妹が少なくなると、相続税の基礎控除額も少なくなります。

結果として、同性パートナーに相続税が発生する可能性は高くなります。

注意相続税の基礎控除額は、法改正により下げられる可能性もあります。

 

7.同性カップルの養子縁組は相続税にも影響

同性カップルが養子縁組を結ぶと相続税にも影響があります。

  • メリット:法定相続人として判断される
  • デメリット:基礎控除額が減る可能性

メリット・デメリット両方あるので、それぞれ説明していきます。

7-1.同性パートナーを法定相続人として相続税を計算

同性パートナーの相続人になることで、相続税においては次のようなメリットが考えられます。

  • 2割加算の対象ではない
  • 法定相続人の人数に含む
  • 生命保険金の非課税枠
  • 小規模宅地の特例

①2割加算の対象ではない

養子縁組をしたことにより、相続税の2割加算の対象ではなくなります。

通常は同性パートナーに相続税が発生すると2割加算されて課税されます。

②法定相続人の人数に含む

相続税の基礎控除額キソコウジョガクや生命保険金の非課税枠を計算する際の、法定相続人の人数に同性パートナーも含まれます。

③生命保険金の非課税枠

生命保険金を受け取った際の相続税の計算で、同性パートナーにも非課税枠が適用されます。
同性パートナーも生命保険金の非課税枠が適用される
生命保険金の非課税枠が適用されることにより、相続税が発生する可能性が低くなります。

④小規模宅地の特例

相続財産に土地がある場合、条件を満たすことで小規模宅地の特例が使えます。

7-2.養子縁組により基礎控除額が減る可能性

一般的に相続税対策のために養子縁組を使うのは、法定相続人の数を増やすのが目的です。

なぜなら、基礎控除額を増やすことができるからです。

相続税の基礎控除額
3,000万円+600万円×法定相続人の数

ただし、同性カップルの養子縁組では、基礎控除額が減る可能性があります。

なぜかというと、養子縁組により養子が相続人になると、兄弟姉妹(両親)が存在した場合には、法定相続人の数が減ることもあるからです。

養子縁組により法定相続人が変更
養子の方が兄弟姉妹より相続順位が高いので、養子縁組により法定相続人が変更します。

つまり、法定相続人の数(基礎控除額)も変更になります。

法定相続人の数が変更することにより、相続税がどれぐらい変わるのか計算してみましょう。

(前提条件)
相続財産は5,000万円(預貯金)で兄弟姉妹が2人。
全額を同性パートナーが取得。

①養子縁組をしなかった場合
(法定相続人は2人)

5,000万円-4,200万円=800万円(課税価額)
800万円を2人で割ると400万円

400万円×10%=40万円
400万円×10%=40万円
40万円+40万円=80万円(相続税の全体額)

80万円×1.2倍=96万円(2割加算)

相続税は96万円

②養子縁組をした場合
(法定相続人は1人)

5,000万円-3,600万円=1,400万円(課税価額)

1,400万円×15%-50万円=160万円

相続税は160万円

養子縁組をしない方が相続税は低かったです。

相続財産の内容によって相続税は変わるので、正確な金額は税理士に相談してください。

 

8.さいごに

同性カップルはパートナーに財産を残す方法だけでなく、相続税についても知っておく必要があります。

なぜなら、相続税の控除や特例は同性パートナーには適用されないからです。

また、同性パートナーが生命保険金を受け取ると、全額が相続税の課税対象となります。

相続税は現金一括納付なので、用意していなければ支払うことが難しいです。

同性カップルを取り巻く環境は、これから先も常に変化していくので、知っておくことが重要になります。実際に相続税が発生するのは、まだ先になると思いますが知識として知っておいて損はないです。

分からないことや疑問に思ったことは、気兼ねく尋ねてみましょう。