遺産分割協議に相続人以外は原則として参加しないが例外もある

遺産分割協議に相続人以外が参加
  • URLをコピーしました!

遺産分割協議は、相続人全員で行うものだと説明されることが一般的です。そのため、「相続人以外の人が関わっているけれど、これで問題ないのか」と不安に感じる方も少なくありません。

実際には、遺産分割協議に相続人以外が関与するケースもあり、その立場や関わり方によって扱いは異なります。
一方で、相続人ではない人を相続人と勘違いしてしまい、不要なトラブルにつながることもあります。

この記事では、

  • 遺産分割協議の原則
  • 相続人以外が関与する例外的なケース
  • 相続人だと間違えやすい人
  • 相続人以外が参加していた場合の扱い
  • 知っておくべき注意点

を順番に整理して解説します。

「相続人以外が関係しているけれど、どう考えればいいのか知りたい」という方は、ぜひ最後までお読み下さい。

目次

1.原則として遺産分割協議に相続人以外は参加しない

原則として、遺産分割協議に相続人以外は参加しません。

なぜなら、遺産分割協議とは相続財産の分け方を、相続人全員で協議して決める手続きだからです。

第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
出典:e-Govウェブサイト(民法907条1項)

共同相続人が協議して決める手続きなので、相続人以外の人は参加する権利がありません。

ちなみに、相続財産の分け方を共同相続人で協議するのは、相続財産が相続人全員で共有になっているからです。

第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
出典:e-Govウェブサイト(民法898条1項)

共有になっている相続財産の分け方を協議するので、原則として相続人以外は参加しません。

2.相続人以外でも正当な権利があれば遺産分割協議に参加する

前章では、原則として遺産分割協議に相続人以外は参加しないと説明しました。

ただし、相続人以外であっても、正当な権利があれば遺産分割協議に参加します。

  • 法定代理人(親権者や成年後見人)
  • 任意代理人(弁護士や家族)
  • 不在者財産管理人
  • 包括受遺者 (相続人と同一権利)
  • 相続分譲受者(第三者)

遺産分割協議に参加する正当な権利を有している以上、除外すると遺産分割協議が成立しません。

2-1.相続人の法定代理人(親権者や成年後見人)

相続人の中に未成年者や被後見人が含まれている場合、法定代理人(親権者や成年後見人)が遺産分割協議に参加します。

法定代理人

本人に代わって契約や手続きを行う権利を、法律によって認められた人のこと

なぜなら、未成年者や被後見人は、遺産分割協議を単独ではできなからです。

たとえ親権者や成年後見人が相続人以外であっても、正当な権利(法定代理権)があるので参加します。

未成年者の代わりに親権者が参加

相続人に未成年者が含まれる場合、遺産分割協議には親権者が参加します。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男(未成年)
※二男の親権者は母親
※父親と母親は離婚している

▼遺産分割協議の参加者

父親の遺産分割協議は、長男と母親(二男の親権者)が参加者となります。


親権者が代理人として遺産分割協議に参加する場合、利益相反など注意点も多いので、下記の記事で確認しておいてください。

被後見人の代わりに成年後見人が参加

相続人に被後見人が含まれる場合、遺産分割協議には成年後見人が参加します。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男(被後見人)
※二男の成年後見人はA

▼遺産分割協議の参加者

父親の遺産分割協議は、長男とA(二男の成年後見人)が参加者となります。


相続人に成年後見人が選任されている場合、本人(被後見人)は遺産分割協議に参加しないので、参加者を間違えないよう注意してください。

2-2.相続人から委任された任意代理人(弁護士や家族)

通常、遺産分割協議には相続人本人が参加しますが、任意代理人が参加するのも珍しくありません。

任意代理人

本人の意思によって、自分の代わりに手続きを行う権限を与えられた人のこと

遺産分割協議も法律上の手続きなので、正式な委任さえあれば相続人以外も参加できます。

  • 専門家(弁護士に限られる)
  • 専門家以外(誰でも可能)

専門家への委任は弁護士に限られる

相続人は遺産分割協議への参加を弁護士に委任できます。

委任を受けた弁護士は相続人に代わり、他の相続人と相続財産の分け方を協議します。

ちなみに、弁護士以外の専門家は、代理人として遺産分割協議には参加できないので注意してください。

専門家以外への委任も可能

相続人は遺産分割協議への参加を専門家以外にも委任できます。

例えば、相続人から委任を受けて、相続人の配偶者が遺産分割協議に参加するケースです。

正式な委任があれば、相続人の親族も代理人として参加できます。

2-3.包括受遺者は相続人と同一の権利を有する

亡くなった人が遺言書で包括遺贈をしていた場合、包括受遺者も遺産分割協議に参加します。

なぜなら、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有しているので、相続人と一緒に遺産分割協議する権利義務も有しているからです。

(包括受遺者の権利義務)
第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
出典:e-Govウェブサイト(民法990条)

▼家族構成

被相続人|父親
子ども |長男・二男

▼遺言書

遺言者は、全財産の2分の1をA(生年月日、住所)に遺贈する。
※Aは内縁の妻

▼遺産分割協議の参加者

父親の遺産分割協議は、長男と二男だけでなく、A(内縁の妻)も参加者となります。


被相続人が包括遺贈していた場合、遺産分割協議の参加者に包括受遺者が加わるので、遺言書の内容はしっかりと確認しておいてください。

遺産分割協議と包括遺贈を読む包括遺贈の受遺者は遺産分割協議の参加者となる

2-4.相続分の譲渡を受けた人も参加する

相続人が相続人以外に「相続分の譲渡」をした場合、相続分の譲受人も遺産分割協議に参加します。

相続分の譲渡

自分が持っている相続人としての権利を他の人へ譲り渡すこと

相続分の譲渡をする相手は相続人以外も可能なので、譲受人が相続人以外であっても遺産分割協議に参加する権利を有します。


▼家族構成

被相続人|父親
子ども |長男・二男

▼相続分の譲渡

二男|Aに相続分を譲渡

▼遺産分割協議の参加者

父親の遺産分割協議は、長男とA(相続分の譲受人)が参加者となります。


相続人以外に相続分を譲渡することは少ないですが、相続人同士の仲が悪いと譲渡する可能性はあります。

3.相続人と間違えやすい人(相続人以外に該当)

前章では、相続人以外でも正当な権利があれば、遺産分割協議に参加すると説明しました。

この章では、逆に相続人と間違えやすい人について説明していきます。

  • 相続放棄した人
  • 内縁の配偶者
  • 特定受遺者

上記の人は、相続人以外なので遺産分割協議には参加しません。

3-1.相続放棄した人は相続人ではない

相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったとみなされるので、遺産分割協議にも参加しません。

第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
出典:e-Govウェブサイト(民法939条)

▼家族構成

被相続人|父親
子ども |長男・二男・三男

▼相続放棄

三男は相続放棄した

▼遺産分割協議の参加者

父親の遺産分割協議は、長男と二男が参加者となる。


亡くなった人の相続人であっても、相続手続きに関わりたくないので相続放棄する人もいます。

相続放棄した人は遺産分割協議の参加者ではないので、協議書に署名捺印する必要もないですし、印鑑証明書を渡す必要もないからです。

遺産分割協議と相続放棄を読む遺産分割協議書に相続放棄した人は記載するのか?

3-2.内縁の配偶者は相続人ではない

亡くなった人の相続人になるのは、法律上の配偶者なので、内縁の配偶者は相続人ではありません。

たとえ内縁関係が数十年以上だったとしても、法律上の婚姻関係でなければ、遺産分割協議の参加者ではないです。


▼家族構成

被相続人|A
内縁の妻|B
子ども |C・D

▼遺産分割協議の参加者

Aの遺産分割協議の参加者は、子であるCとDの2人です。内縁の妻(B)は参加者となりません。


内縁の配偶者(事実婚)は相続人と間違えやすいので、遺産分割協議をする際は注意してください。

3-3.特定遺贈の受遺者は相続人ではない

包括遺贈の受遺者は「相続人と同一の権利」を有しているので、遺産分割協議に参加する権利も有しています。

一方、特定遺贈の受遺者は「特定の財産を取得する権利」を有しているだけなので、遺産分割協議に参加する権利は有していません。


▼家族構成

被相続人|A
内縁の妻|B
子ども |C・D

▼遺言書

内縁の妻|家と土地を遺贈

▼遺産分割協議の参加者

Aの遺産分割協議の参加者は、子であるCとDの2人です。内縁の妻(B)は特定遺贈により財産を取得しているだけなので、参加者とはなりません。


特定遺贈により財産を取得する人は、遺産分割協議に参加しないと覚えておいてください。

4.正当な権利なく相続人以外が遺産分割協議に参加

すでに相続人以外(正当な権利者除く)が参加して遺産分割協議している場合は、次の3点を確認してください。

  1. 原則として遺産分割協議の効力は有効
  2. 相続人以外の人が取得した部分は無効
  3. 相続人以外の参加が大きな影響を与えると無効

それぞれ説明していきます。

4-1.原則として遺産分割協議の効力は有効

遺産分割協議に相続人以外(正当な権利がない人)が参加していても、相続人全員が参加して同意していれば遺産分割協議は有効に成立します。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男

▼遺産分割協議

長男|家
二男|預貯金
三男|預貯金
元妻

被相続人の元妻は相続人ではありませんが、子供たちの母親なので遺産分割協議に参加していた。

ただし、相続人全員(長男・二男・三男)が同意しているので、遺産分割協議は有効に成立します。


遺産分割協議の成立要件を満たしている限り、相続人以外(正当な権利がない人)が参加しても、原則として有効に成立します。

4-2.相続人以外の人が取得した部分は無効となる

相続人以外の人が参加しても、原則として遺産分割協議は有効ですが、相続人以外が財産を取得していると、その部分については無効となります。

なぜなら、相続人でない以上、遺産分割協議では財産を取得できないからです。
※包括受遺者や相続分の譲受者を除く。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男

▼遺産分割協議

長男|家
二男|預貯金
三男|預貯金
元妻|預貯金

被相続人の元妻は相続人ではありませんが、子供たちと一緒に遺産分割協議に参加していました。

ただし、元妻は相続人ではないので、被相続人の預貯金は取得できません。元妻が取得した預貯金の部分は無効となります。


相続人全員が参加して同意している以上、遺産分割協議全体が無効になるわけではなく、相続人以外の人が取得した部分だけが無効となります。

無効になった部分については、改めて相続人全員の遺産分割協議により取得者を決めます。

4-3.相続人以外の参加が結果に大きな影響を与えた

相続人以外の参加が、遺産分割協議の結果に大きな影響を与えた場合、遺産分割協議全体が無効になる可能性はあります。

例えば、相続財産の大部分を相続人以外が取得した場合などは、全体を無効として遺産分割協議をやり直すことになるでしょう。

もし相続人以外の参加が遺産分割協議の結果に影響を与えたと感じるなら、早めに弁護士に相談した方が良いです。

5.相続人以外が関与する遺産分割協議の注意点

相続人以外が関与する遺産分割協議の注意点も説明していきます。

  • 正当な権利を持つ人を除外する無効
  • 代理権の内容によっては参加できない
  • 相続人以外が署名捺印すると問題になりやすい

上記は間違えやすいので、しっかりと確認しておいてください。

5-1.正当な権利を持つ人を除外すると無効

遺産分割協議から正当な権利を持つ人(相続人以外)を除外すると、無効になるので注意してください。


▼家族構成

被相続人|父親
子ども |長男・二男・三男(未成年)
※長男・二男と三男の母親は違う
※三男の親権者はA

▼遺産分割協議

長男と二男は2人だけで父親の遺産分割協議をした。

しかし、三男の親権者であるAを除外しているので、遺産分割協議は無効となります。


遺産分割協議に参加する正当な権利を持っている人を除外すると、遺産分割協議が成立しないので注意してください。

5-2.代理権の内容によっては参加できない

相続人の親権者や成年後見人は、遺産分割協議に参加する権利を当然に有しています。

一方、相続人の任意後見人や保佐人・補助人は、遺産分割協議に参加する権利を当然に有しているわけではなく、代理権の内容によっては参加できません。

任意後見人は代理権目録の記載を確認

代理人が任意後見人なら、任意後見契約の代理権目録を確認してください。

遺産分割の協議が代理権目録に記載されていれば、任意後見人は遺産分割協議に参加できます。
※通常は記載されています。

それに対して、代理権目録に遺産分割の協議が記載されていなければ、任意後見人は遺産分割の協議に参加できません。
※成年後見人が必要になる可能性あり。

任意後見人の代理権については、下記の記事で詳しく説明しています。

保佐人や補助人は付与された代理権を確認

保佐人や補助人の代理権は成年後見人と違い、家庭裁判所に申立てをして付与された範囲のみです。

つまり、家庭裁判所に代理権(遺産分割の協議)付与の申立てをしていなければ、保佐人や補助人は遺産分割協議に参加できません。

当然に代理できるわけではないので、相続人の保佐人や補助人は注意してください。

5-3.相続人以外が署名捺印すると問題になりやすい

相続人以外の人が遺産分割協議書に署名捺印しても、相続人同士の間では問題にならないでしょう。

ですが、相続手続きで遺産分割協議書を使用する場合は、相続人以外(正当な権利者以外)の署名捺印が問題になる可能性はあります。

通常、遺産分割協議書に署名捺印するのは相続人だけなので、相続手続きの相手方(銀行や法務局)が不審に思って、作り直しを要求してくるかもしれません。

余計な手間を発生させないためにも、遺産分割協議書には相続人(正当な権利者含む)だけが署名捺印してください。

遺産分割協議と相続人以外に関するQ&A

遺産分割協議と相続人以外について、よくある質問と回答を説明します。

相続人以外が同席しただけでも遺産分割協議は無効になりますか?

原則として、相続人以外が同席して話を聞いていただけでは、無効になりません。
問題になるのは、遺産分割協議の結果に影響を与えた場合です。

相続人の配偶者や子どもが遺産分割協議に参加することはできますか?

相続人から代理人として正式に委任されていれば参加できます。

遺産分割協議に参加できない人が内容に口出しできますか?

相続人以外が意見を述べることはあっても、判断に法的拘束力はありません。

包括受遺者は必ず遺産分割協議に参加しなければいけませんか?

原則として参加する必要があります。
ただし、包括遺贈を放棄した場合や、代理人に依頼した場合は除きます。

結論|相続人以外も正当な権利があれば遺産分割協議に参加

遺産分割協議は、原則として相続人全員で行う手続きなので、相続人以外は参加する権利を有していません。

ただし、正当な権利を持っている場合は別です。

  • 相続人の法定代理人
  • 相続人の任意後見人
  • 包括受遺者
  • 相続分の譲受人

正当な権利を持っている人は、相続人以外でも遺産分割協議に参加します。

一方、相続人のように見えても、相続人以外に該当する人もいます。

  • 相続放棄した人
  • 内縁の配偶者
  • 特定受遺者

相続人以外が遺産分割協議に参加しても、原則として遺産分割協議の効力は有効です。

ただし、結果に大きな影響を与えた場合は、無効になる可能性もあるので注意してください。

遺産分割協議に相続人以外が関係している場合は、今回の記事を参考にして、参加する権利を有しているか確認してください。

目次