遺産分割協議は債務不履行で解除できる?原則できない理由を説明

遺産分割協議は債務不履行で解除できない
  • URLをコピーしました!

遺産分割協議で決めた負担を履行しなくても、遺産分割協議を解除することはできません。

遺産分割協議は成立しているので、債務不履行は当事者間の問題となるからです。話し合いなのか裁判なのか、解決方法も当事者が決めます。

遺産分割協議の内容で債務負担を定めるなら、債務不履行のリスクに注意してください。

今回の記事では、遺産分割協議と債務不履行による解除について説明しているので、遺産分割協議の参考にしてください。

目次

1.債務不履行があっても遺産分割協議は解除できない

相続人が遺産分割協議で決めた債務を履行しない場合でも、債権者である相続人は遺産分割協議を解除できません。

一般的な契約では、当事者の一方が債務を履行しなければ、相手方は債務不履行を理由に契約を解除できます。ですが、遺産分割協議では結論が違います。

1-1.最高裁で解除は否定されている

なぜ、遺産分割協議で決めた債務を履行しないのに、解除が認められないかというと、最高裁で否定されているからです。

以下は、最高裁の判例です。

共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が右協議において負担した債務を履行しないときであつても、その債権を有する相続人は、民法五四一条によつて右協議を解除することができない。

出典:裁判所ウェブサイト(平成元年2月9日最高裁判所第一小法廷判決)

以下は、民法541条の条文です。

(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(省略)
出典:e-Govウェブサイト(民法541条)

遺産分割協議が成立すると、相続発生時に遡って効力が発生します。

もし債務不履行を原因に一方的に解除できてしまうと、法的安定性が著しく害されるので、解除はできないと判決の理由で説明されています。

1-2.遺産分割協議の成立後は当事者の問題

遺産分割協議の成立後は、債務不履行についても当事者(相続人同士)の問題となります。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男

▼遺産分割協議

不動産|長男
長男は二男に500万円を支払う

遺産分割協議が成立した後に長男が二男に500万円を支払ない場合、債務不履行は長男と二男の問題となります。


債務の不履行を話し合いで解決するのか、あるいは訴訟で解決するのかも当事者の自由です。

遺産分割自体は終了しているので、債務の不履行は当事者の問題として解決を目指していきます。

2.遺産分割協議と債務不履行の具体例4選

遺産分割協議と債務不履行の具体例を4つ紹介します。

これから遺産分割協議をするのであれば、下記に該当しないように注意してください。

2-1.遺産分割の条件である負担を履行しない

具体例1つ目は、遺産分割の条件である負担を履行しないです。

何かを負担する条件付きで、相続財産を多く取得することは珍しくありません。

例えば、父親が亡くなった際の遺産分割協議で、母親と同居するという条件付きで相続財産を多く取得するケースです。

本来であれば、遺産分割協議終了後に母親と同居するのですが、忙しい等の理由を述べ同居を先延ばしにしました。

結局、他の相続人が同居するか、母親は一人暮らしをするかです。他の相続人が約束が違うと怒っても、遺産分割協議の解除はできません。

2-2.代償分割の対価である金銭の債務不履行

具体例2つ目は、代償分割の対価である金銭の債務不履行です。

相続財産が不動産しかなければ、遺産分割の方法として代償分割するケースは珍しくありません。

代償分割
相続財産を取得する代わりに代償金(代償物)を支払う分割方法

例えば、相続人がAとBの2人で不動産をAが取得して、代償としてAからBに金銭を支払うケースです。

不動産を取得する代わりに金銭を支払う

本来であれば、遺産分割協議終了後に代償金を支払うのですが、いつまで経っても振り込みがありません。

結局、相続人Aが支払ってくれるのを待つか、あるいは相続人Aを相手に訴訟をすることになります。

代償分割をするのであれば、債務不履行のリスクを知っておいてください。

2-3.遺産分割で決めた相続債務の履行をしない

具体例3つ目は、遺産分割で決めた相続債務の履行をしないです。

遺産分割協議の中で、相続債務の負担者を決めることもあります。

例えば、相続人がA・B・Cの3人で、相続債務を含めてAが相続財産を取得するとしたケースです。

Aが相続債務を支払っている限り問題は起こりません。ですが、Aが支払いを滞ると、相続債権者はBとCにも請求をしてきます。

なぜなら、遺産分割協議の中で相続債務の負担者を決めても、相続債権者には対抗できないからです。相続債権者は法定相続分の割合にしたがって、BとCにも相続債務を請求できます。

Aが相続債務を支払わないからといって、遺産分割協議は解除できません。

2-4.遺産分割で決めた葬儀費用を支払ってくれない

具体例4つ目は、遺産分割で決めた葬儀費用を支払ってくれないです。

遺産分割協議の中で、葬儀費用の負担者(負担割合)を決めることもあります。

ただし、他の相続人が葬儀費用を支払わなくても、遺産分割協議を解除することはできません。

遺産分割は終了しているので、葬儀費用は相続人同士の問題となります。話し合いや訴訟等で解決を目指します。

葬儀費用は相続で揉めやすいので、遺産分割協議で話し合うなら注意してください。

3.相続人全員が合意すれば債務不履行でも解除できる

前章までで説明したとおり、債務不履行があっても遺産分割協議は解除できません。

ただし、相続人全員が合意するなら、遺産分割協議の合意解除はできます。一方的な解除ではなく、全員が合意したうえでの解除です。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男

▼遺産分割協議

不動産|長男
長男は二男に500万円を支払う

遺産分割協議が成立した後に長男が二男に500万円を支払ない場合、相続人全員(長男・二男・三男)が合意すれば、遺産分割協議は合意解除できます。


気を付ける点としては、遺産分割協議をやり直しても、税法上は相続とは扱われない点です。

簡単に言えば、所有権移転に対して贈与税等の税金が課税されます。合意解除により不動産の所有者が代わるなら、税金の発生に注意してください。

遺産分割協議のやり直しについては、下記の記事を参考にしてください。

4.遺産分割協議と債務不履行に関するQ&A

遺産分割協議と債務不履行について、よくある質問と回答を説明します。

お金が支払われない場合、どうやって回収すればいいですか?

相手に履行を求める催告を行い、解決しない場合は裁判所へ調停や訴訟を申し立てて、給付判決を得た上で強制執行(差し押さえ)を検討します。

支払いが遅れたことに対して「利息」を請求できますか?

はい。支払期日が決まっていた場合は、「遅延損害金」を請求できます。

不動産の名義変更に協力してくれない相続人がいる場合は?

協議書の内容に基づいて、登記手続きを求める裁判を起こします。勝訴判決を得れば、相手の協力がなくても単独で登記申請ができます。

相手が「お金がないから払えない」と言い出した場合はどうなりますか?

支払い能力がなくても法的義務は消えません。調停や訴訟を申し立てて、強制執行を検討します。

5.さいごに

遺産分割協議で債務負担を決めていても、債務不履行を原因に解除することはできません。

  • 遺産分割で定めた負担を履行しない
  • 遺産分割で定めた代償金を支払わない
  • 遺産分割で定めた相続債務を支払わない

遺産分割協議成立後は、当事者の問題として債務不履行の解決を目指します。

債務不履行を話し合いで解決するのか、それとも訴訟で解決するのかは当事者の自由です。

遺産分割協議の内容で債務負担を定めるなら、債務不履行のリスクに注意してください。

目次