遺留分侵害額の支払いに充てる現金は、すでに用意できていますか。
受け取った財産が不動産しかなければ、自分の財産で支払うしかありません。現金があれば良いのですが、現金が無ければ受け取った財産を処分して用意する必要があります。
ただし、あなたが現金を用意する間、請求権者(相続人)が支払いを待ってくれる保障はありません。
今回の記事では、遺留分を支払う現金がない場合について説明しているので、支払いに不安があるなら参考にしてください。
目次
1.遺留分侵害額は金銭で請求される
遺留分侵害額の請求は、令和元年7月1日に法改正があり金銭請求となりました。
あなたの受け取った相続財産が遺留分を侵害していた場合、侵害額相当分を金銭で請求されることになります。
ちなみに、令和元年6月30日までに発生した相続に関しては、法改正前の遺留分減殺請求となります。
- 遺留分減殺請求
- 遺留分を侵害している贈与または遺贈の効力を失わせる請求のこと
2.遺留分請求者と話し合いで決める
あなたの受け取った相続財産が遺留分を侵害している場合、以下のような流れになります。
- 遺留分侵害額請求の意思表示
- 遺留分侵害額を確認する
- 支払い方法などを決める
2-1.遺留分侵害額請求の意思表示を受ける
遺留分侵害額を請求する意思表示の方法に、法律上の定めはありません。
ただし、口頭では「言った言わない」になるので、証拠を残すためにも内容証明郵便で行われることが多いです。
亡くなった人の相続人から郵送物が届いたら、必ず内容を確認しておきましょう。
2-2.遺留分侵害額を当事者間で確認する
遺留分侵害額の請求を受けた後は、請求権者(相続人)との間で遺留分侵害額を確認します。
なぜなら、請求する側と請求される側で、遺留分侵害額が合わないこともあるからです。
亡くなった人の相続財産が預貯金だけであれば計算しやすいです。ですが、不動産などが相続財産にあると、遺留分侵害額が食い違うことも珍しくありません。
当事者間の話し合いで解決できなければ、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を行います。
2-3.請求権者と金銭の支払いについて決める
遺留分侵害額の支払日や支払い方法は、遺留分請求者との話し合いで決めます。
不動産や株券などを現金に換えるまで支払日を延ばすや、支払い方法を分割払いにすることも可能です。
ただし、こちらの事情を考慮してくれるかは、相手次第となります。
3.訴えにより支払期限の延長も可能
あなたの取得した相続財産が不動産などであれば、遺留分侵害額を請求されても現金が直ぐには用意できない場合もあります。
現金が用意できない場合は、裁判所に支払い期限の延長を訴えることができます。
3-1.遺留分権利者を相手方として訴えを提起
支払い期限を延長するには、遺留分権利者を相手方として訴えを提起する必要があります。
現実的には、弁護士に相談して訴訟という流れになるでしょう。
3-2.延長するかどうかは裁判所が判断する
支払期限の延長を訴えても、認めるかどうかは裁判所が判断します。
判断基準としては以下が考えられます。
- 受遺者・受贈者の資力
- 不動産などの売却期間
受遺者・受贈者の資力
当然ですが、受遺者・受贈者に資力があれば、期限の延長をする必要がありません。
また、遺留分侵害額の一部だけ期限の延長が認められる可能性もあります。
不動産などの売却期間
不動産などを売却して金銭に換えるには、一定の期間が必要になります。
裁判所が相当と認める期間が設定されます。
4.あらかじめ現金を用意しておくことが重要
あなたが受け取る予定の財産が不動産であれば、支払いに充てる現金を用意しておくことが重要となります。
なぜなら、せっかく不動産を残してもらっても、最悪の場合は不動産を処分して支払いに充てる可能性もあるからです。
遺留分侵害額を請求されると現金が必要になるので、用意できなければ不動産を処分するしかありません。
不動産などを受け取るなら、以下の点に気を付けておきましょう。
- 遺留分を侵害するかどうか?
- 侵害額を請求される可能性はあるか?
- 支払いに充てる現金は用意できるか?
上記の確認は必ずしておきましょう。
5.さいごに
遺留分侵害額の請求は、現金請求となります。
あなたが受け取った財産が預貯金であれば、支払いに困ることは少ないでしょう。
それに対して、受け取った財産が不動産などであれば、支払いに充てる現金が手元にないこともあります。
請求権者(相続人)との話し合いで解決できれば良いのですが、請求権者に支払いを待つ義務はありません。
そのような場合は、裁判所に訴えを提起することで、現金を用意する時間を確保することが可能です。
請求権者が支払いを待ってくれなければ、弁護士に相談して訴訟を検討してください。