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同性婚と生前贈与|確実に渡せるが注意点もある

同性パートナーへの生前贈与には注意が必要
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贈与は当事者間の意思表示で成立するので、相続人であるかは関係ないです。
したがって、同性カップルも上手く使うことで、メリットを最大限に活かすことができます。

同性カップルが生前贈与を使うメリットは、2つあります。

  • 同性パートナーに財産を残せる
  • 同性パートナーの相続税を減らせる

ただし、同性カップルが生前贈与を使う際には注意点もあります。贈与した財産が無駄になったり、税金が高くなる可能性です。

今回の記事では、同性カップルと生前贈与について説明しているので、生前贈与を検討しているなら参考にしてください。

目次

  1. 生前贈与は相続対策の1つ
    1. 同性パートナーが先に亡くなる可能性
    2. 贈与すると取り戻せない
    3. 贈与税は高額になるので注意
    4. 生前贈与でも遺留分侵害の可能性
  2. 生前贈与で相続税を減らす
    1. 生前贈与を相続財産に含める
    2. 贈与が否認される
    3. 定期贈与
  3. まとめ

1.生前贈与は相続対策の1つ

同性パートナーに財産を残す方法として、生前贈与を使うこともできます。

生前に贈与しておけば、相続財産をあらかじめ同性パートナーに移すことができます。亡くなる前なので相続人かどうかは関係ありません。

ただし、同性カップルが相続対策として生前贈与を使う場合、複数の注意点があるので確認しておいてください。

  • 同性パートナーが先に亡くなる可能性
  • 取り戻すことができない
  • 贈与税は高額
  • 遺留分侵害に注意

1-1.同性パートナーが先に亡くなる可能性

同性パートナーに贈与しても、相手が先に亡くなる可能性はあります。

贈与を受ける側が相続対策をしておかないと、贈与した財産が亡くなった同性パートナーの相続人に渡ります。

同性パートナーへの生前贈与対策

図のように相続対策をしていないと生前贈与した財産が、結果として同性パートナーの相続人に渡ります。贈与を受ける人が先に亡くなることも考慮して、遺言書等で対策を立てる必要があります。

遺言書については、下記の記事で詳しく説明しています。

1-2.贈与すると取り戻せない

贈与した財産は、同性パートナーの財産となります。

ですので、贈与後に別れたとしても、贈与した財産を取り戻すことはできません。

別れた後で贈与した財産の返還で揉めるのは、異性間でも同性間でも同じです。

多額の財産を生前贈与すると、自分の生活を圧迫する恐れもあるので、贈与をする場合は計画的に行いましょう。

1-3.贈与税は高額になるので注意

贈与をすると受け取った同性パートナーに贈与税が発生します。
*貰った人が税金を払います。

ただし、すべての贈与で税金を払うわけではないです。

贈与税には基礎控除額が年間110万円あります。
年間(1月1日~12月31日)で貰った金額が、110万円以下なら贈与税は発生しません

基礎控除額を除いた金額に贈与税が発生します。

基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
300万円以下
15% 10万円
300万円超
400万円以下
20% 25万円
400万円超
600万円以下
30% 65万円
600万円超
1,000万円以下
40% 125万円
1000万円超
1,500万円以下
45% 175万円
1500万円超
3,000万円以下
50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

(例)400万円を生前贈与 した場合

400万円-110万円=290万円(基礎控除後の課税価格)
290万円×15%-10万円=33.5万円
贈与税は33万5,000円

贈与税は高額になるので、計算は必ずしましょう。

1-4.生前贈与でも遺留分侵害の可能性

同性カップル間の生前贈与であっても、遺留分の計算に含める場合が2つあります。

  • 亡くなる前1年以内の贈与
  • 遺留分を害すると知って行った贈与

たとえば、全財産1,000万円を亡くなる2年前に生前贈与すると、遺留分を害すると知って行った贈与に該当する可能性が高いです。

遺留分を害すると知って行った贈与の場合、時期は関係ないので注意が必要です。

遺留分については、下記の記事で詳しく説明しています。

 

2.生前贈与で相続税を減らす

同性カップル間の生前贈与には、相続税対策としての意味もあります。

なぜなら、生前贈与をすることで、相続財産の額を下げることができるからです。

相続税にも基礎控除額があります。

相続税の基礎控除額
3,000万円+600万円×法定相続人の数

同性パートナーは法定相続人の数には含みません。

相続税の基礎控除額
法定相続人 計算式 基礎控除額
0人 3,000万円+600万円×0人 3,000万円
1人 3,000万円+600万円×1人 3,600万円
2人 3,000万円+600万円×2人 4,200万円
3人 3,000万円+600万円×3人 4,800万円

相続財産が基礎控除額以下なら、相続税は発生しません。
相続税の基礎控除

たとえば、財産が4,000万円で全部遺贈する場合。
法定相続人は兄弟が1人とします。
4,000万円‐3,600万円=400万円に相続税が発生します。

あらかじめ400万円を同性パートナーに贈与しておけば、相続財産は基礎控除額以下になるので、遺贈を受けても相続税は発生しません。

相続税については、下記の記事で詳しく説明しています。

同性カップルが相続税対策として、生前贈与を使う際には注意点もあります。

  • 生前贈与加算
  • 贈与が否認される
  • 定期贈与

2-1.生前贈与を相続財産に含める

遺贈により同性パートナーが財産を取得した場合、亡くなる前3年以内の贈与に関しては相続財産に含んで相続税を計算します。

贈与税の基礎控除に関係なく相続税の計算に含めます。
したがって、110万円を3年間贈与している場合は、330万円を相続財産に含めます。

基礎控除額を超えるような贈与をしていた場合は、支払った贈与税分が相続税から控除されます。

相続税対策のためには、同性パートナーに早めに贈与することが重要です。

2-2.生前贈与が否定される恐れあり

あなたが亡くなった後に、生前贈与が否定されるケースもあります。

贈与契約の成立には、贈与者(本人)と受贈者(同性パートナー)の意思表示が必要です。

したがって、同性パートナーが贈与の事実を知らないと判断されると、生前贈与の成立も否定されます。

例えば、同性パートナーに黙って口座に振り込んでいたとします。同性パートナーが気付いていなければ、贈与契約は成立していません。

贈与を否定されないためには、以下のような対策が必要です。

  • 口約束ではなく贈与契約書を作成する。
  • 現金手渡しではなく口座振り込みにする。
  • 口座名義は自分ではなく同性パートナー名義にする

贈与の証拠能力を上げるには、公正証書で契約書を作成する方法もあります。

2-3.定期贈与と判断される

定期贈与とは、一定金額を毎年贈与することが、最初から決まっている贈与のことです。

たとえば、同性パートナーとの間で、10年間に渡って毎年100万円贈与することを、最初から決めている場合です。決めた年に1,000万円の定期金を贈与したとして贈与税が課税されます。

1,000万円の定期金と判断されると、231万円の贈与税が発生します。

税務署に定期贈与と判断されないためには、贈与契約書を毎年作成し、契約内容も少し変化させましょう。

(例)贈与する金額を毎年変える
1年目は100万円、2年目は105万円、3年目は95万円。

 

3.まとめ

贈与はお互いの意思表示だけで成立するので、同性パートナーに財産を残す方法として便利です。同性カップル間で生前贈与を上手く使うことにより、相続対策や相続税対策に効果があります。

注意点は贈与は単純で便利ですが、無駄になったり税金が高額になる可能性もあります。生前贈与を考える際には、メリットだけではなく注意点にも気を配りましょう。

贈与契約の証拠能力を高めるには、公正証書での作成がお勧めです。公正証書の費用がネックになる場合でも、書面での作成は必ずしてください。税務署や相続人に対して口約束で対抗するのは難しいです。