贈与は当事者間の意思表示で成立するので、相続人であるかは関係ないです。
したがって、同性カップルも上手く使うことで、メリットを最大限に活かすことができます。
同性カップルが生前贈与を使うメリットは、2つあります。
- 同性パートナーに財産を残せる
- 同性パートナーの相続税を減らせる
ただし、同性カップルが生前贈与を使う際には注意点もあります。贈与した財産が無駄になったり、税金が高くなる可能性です。
今回の記事では、同性カップルと生前贈与について説明しているので、生前贈与を検討しているなら参考にしてください。
目次
- 生前贈与は相続対策の1つ
- 同性パートナーが先に亡くなる可能性
- 贈与すると取り戻せない
- 贈与税は高額になるので注意
- 生前贈与でも遺留分侵害の可能性
- 生前贈与で相続税を減らす
- 生前贈与を相続財産に含める
- 贈与が否認される
- 定期贈与
- まとめ
1.生前贈与は相続対策の1つ
同性パートナーに財産を残す方法として、生前贈与を使うこともできます。
生前に贈与しておけば、相続財産をあらかじめ同性パートナーに移すことができます。亡くなる前なので相続人かどうかは関係ありません。
ただし、同性カップルが相続対策として生前贈与を使う場合、複数の注意点があるので確認しておいてください。
- 同性パートナーが先に亡くなる可能性
- 取り戻すことができない
- 贈与税は高額
- 遺留分侵害に注意
1-1.同性パートナーが先に亡くなる可能性
同性パートナーに贈与しても、相手が先に亡くなる可能性はあります。
贈与を受ける側が相続対策をしておかないと、贈与した財産が亡くなった同性パートナーの相続人に渡ります。
図のように相続対策をしていないと生前贈与した財産が、結果として同性パートナーの相続人に渡ります。贈与を受ける人が先に亡くなることも考慮して、遺言書等で対策を立てる必要があります。
遺言書については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『LGBT・同性婚と遺言書|同性カップルは7つのポイントに気を付けよう』
1-2.贈与すると取り戻せない
贈与した財産は、同性パートナーの財産となります。
ですので、贈与後に別れたとしても、贈与した財産を取り戻すことはできません。
別れた後で贈与した財産の返還で揉めるのは、異性間でも同性間でも同じです。
多額の財産を生前贈与すると、自分の生活を圧迫する恐れもあるので、贈与をする場合は計画的に行いましょう。
1-3.贈与税は高額になるので注意
贈与をすると受け取った同性パートナーに贈与税が発生します。
*貰った人が税金を払います。
ただし、すべての贈与で税金を払うわけではないです。
贈与税には基礎控除額が年間110万円あります。
年間(1月1日~12月31日)で貰った金額が、110万円以下なら贈与税は発生しません。
基礎控除額を除いた金額に贈与税が発生します。
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超 300万円以下 |
15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 |
30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
40% | 125万円 |
1000万円超 1,500万円以下 |
45% | 175万円 |
1500万円超 3,000万円以下 |
50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
(例)400万円を生前贈与 した場合
400万円-110万円=290万円(基礎控除後の課税価格)
290万円×15%-10万円=33.5万円
贈与税は33万5,000円
贈与税は高額になるので、計算は必ずしましょう。
1-4.生前贈与でも遺留分侵害の可能性
同性カップル間の生前贈与であっても、遺留分の計算に含める場合が2つあります。
- 亡くなる前1年以内の贈与
- 遺留分を害すると知って行った贈与
たとえば、全財産1,000万円を亡くなる2年前に生前贈与すると、遺留分を害すると知って行った贈与に該当する可能性が高いです。
遺留分を害すると知って行った贈与の場合、時期は関係ないので注意が必要です。
2.生前贈与で相続税を減らす
同性カップル間の生前贈与には、相続税対策としての意味もあります。
なぜなら、生前贈与をすることで、相続財産の額を下げることができるからです。
相続税にも基礎控除額があります。
- 相続税の基礎控除額
- 3,000万円+600万円×法定相続人の数
同性パートナーは法定相続人の数には含みません。
法定相続人 | 計算式 | 基礎控除額 |
0人 | 3,000万円+600万円×0人 | 3,000万円 |
1人 | 3,000万円+600万円×1人 | 3,600万円 |
2人 | 3,000万円+600万円×2人 | 4,200万円 |
3人 | 3,000万円+600万円×3人 | 4,800万円 |
相続財産が基礎控除額以下なら、相続税は発生しません。
たとえば、財産が4,000万円で全部遺贈する場合。
法定相続人は兄弟が1人とします。
4,000万円‐3,600万円=400万円に相続税が発生します。
あらかじめ400万円を同性パートナーに贈与しておけば、相続財産は基礎控除額以下になるので、遺贈を受けても相続税は発生しません。
相続税については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『LGBT・同性婚と相続税|パートナーには厳しい税金のルール』
同性カップルが相続税対策として、生前贈与を使う際には注意点もあります。
- 生前贈与加算
- 贈与が否認される
- 定期贈与
2-1.生前贈与を相続財産に含める
遺贈により同性パートナーが財産を取得した場合、亡くなる前3年以内の贈与に関しては相続財産に含んで相続税を計算します。
贈与税の基礎控除に関係なく相続税の計算に含めます。
したがって、110万円を3年間贈与している場合は、330万円を相続財産に含めます。
基礎控除額を超えるような贈与をしていた場合は、支払った贈与税分が相続税から控除されます。
相続税対策のためには、同性パートナーに早めに贈与することが重要です。
2-2.生前贈与が否定される恐れあり
あなたが亡くなった後に、生前贈与が否定されるケースもあります。
贈与契約の成立には、贈与者(本人)と受贈者(同性パートナー)の意思表示が必要です。
したがって、同性パートナーが贈与の事実を知らないと判断されると、生前贈与の成立も否定されます。
例えば、同性パートナーに黙って口座に振り込んでいたとします。同性パートナーが気付いていなければ、贈与契約は成立していません。
贈与を否定されないためには、以下のような対策が必要です。
- 口約束ではなく贈与契約書を作成する。
- 現金手渡しではなく口座振り込みにする。
- 口座名義は自分ではなく同性パートナー名義にする
贈与の証拠能力を上げるには、公正証書で契約書を作成する方法もあります。
関連記事を読む『同性婚と公正証書|カップルには気になる作成費用』
2-3.定期贈与と判断される
定期贈与とは、一定金額を毎年贈与することが、最初から決まっている贈与のことです。
たとえば、同性パートナーとの間で、10年間に渡って毎年100万円贈与することを、最初から決めている場合です。決めた年に1,000万円の定期金を贈与したとして贈与税が課税されます。
1,000万円の定期金と判断されると、231万円の贈与税が発生します。
税務署に定期贈与と判断されないためには、贈与契約書を毎年作成し、契約内容も少し変化させましょう。
(例)贈与する金額を毎年変える
1年目は100万円、2年目は105万円、3年目は95万円。
3.まとめ
贈与はお互いの意思表示だけで成立するので、同性パートナーに財産を残す方法として便利です。同性カップル間で生前贈与を上手く使うことにより、相続対策や相続税対策に効果があります。
注意点は贈与は単純で便利ですが、無駄になったり税金が高額になる可能性もあります。生前贈与を考える際には、メリットだけではなく注意点にも気を配りましょう。
贈与契約の証拠能力を高めるには、公正証書での作成がお勧めです。公正証書の費用がネックになる場合でも、書面での作成は必ずしてください。税務署や相続人に対して口約束で対抗するのは難しいです。