相続放棄をしても受け取れる財産があるのは、ご存知でしょうか。
相続放棄を検討されている人でも、受け取れる財産を知らない人は多いです。
相続放棄をすると相続財産を受け取ることはできません。
ですが、相続財産以外は受け取ることができます。
今回の記事では、相続放棄をしても受け取れるものについて説明しているので、忘れずに受け取ってください。
目次
1.生命保険金は受取人で判断する
相続放棄しても受け取れるもの1つ目は、生命保険金です。
「相続放棄をしても生命保険金は受け取っても大丈夫ですか?」
実際の相談でもよく質問されます。
生命保険金に関しては、受取人が誰であるかで答えが変わります。
1-1.受取人が本人(相続放棄する人)なら受け取れる
生命保険金の受取人が本人(相続放棄する人)なら、相続放棄とは関係なく受け取ることができます。
なぜなら、生命保険金を受け取る権利は本人固有の権利だからです。
相続人として受け取るのではなく、本人の権利として受け取ります。
ですので、相続放棄をしても生命保険金を受け取ることができます。
関連記事を読む『相続放棄をしても生命保険金は原則として受け取れる』
1-2.受取人が亡くなった人なら受け取れない
生命保険金の受取人が亡くなった人なら、相続放棄をすると受け取ることはできません。
なぜなら、受取人の権利は相続人が引き継ぐからです。
相続放棄をすると相続人ではないので受け取ることができません。
亡くなった人が受け取る生命保険金があるなら、負債額と比較して相続放棄を検討してください。
2.葬祭費・埋葬料は喪主が受け取れる
相続放棄しても受け取れるもの2つ目は、葬祭費・埋葬料です。
一番よく聞かれる質問が「役所から5万円貰えるんですが、受け取っても大丈夫ですか?」になります。
亡くなった人が健康保険に加入していると、葬祭費・埋葬料を受け取ることができます。
葬祭費・埋葬料の受取人は葬儀をした人(喪主)です。相続人であるかは関係ありません。
2-1.国民健康保険なら葬祭費が受け取れる
亡くなった人が国民健康保険に加入してたなら葬祭費です。
市役所等で保険証を返還する際に、窓口で葬祭費についても確認してみてください。
各自治体により金額は違いますが、5万円が一番多いです。
2-2.社会保険等なら埋葬料が受け取れる
亡くなった人が社会保険等に加入したなら埋葬料です。
埋葬料については各保険組合等にお問い合わせください。
3.未支給年金は生計同一者が受け取れる
相続放棄しても受け取れるもの3つ目は、未支給年金です。
未支給年金とは死亡日までに発生していた年金で、支給前に被相続人が亡くなっていると発生します。
未支給年金の受取人は法律で決まっているので、相続人が受け取るわけではありません。
3-1.未支給年金の受取順位は決まっている
未支給年金を受け取れるのは、亡くなった人と生計を同一としていた人です。
未支給年金の受取順位も決まっています。
上記を並べると以下になります。
- 配偶者
- 子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- その他(3親等内の親族)
同順位の人が複数存在する場合は人数で割ります。
3-2.年金を受給していた場合は必ず発生する
亡くなった人が年金を受給していた場合、未支給年金は必ず発生します。
なぜなら、年金は偶数月に前2ヶ月を支払うので、亡くなった月の分は必ず未支給になるからです。
※年金は死亡月まで発生。
例えば、4月20日に亡くなったとします。4月15日に2月分と3月分は支払われていますが、亡くなった4月分は未支給となります。
*偶数月の15日が支給日。
亡くなった人が年金を受給していたなら、年金事務所に連絡して未支給年金の手続きをしてください。
関連記事を読む『相続放棄しても未支給年金は請求できる|相続財産に含まれない』
4.遺族年金等は遺族が受け取れる
相続放棄しても受け取れるもの4つ目は、遺族年金等です。
遺族年金や死亡一時金を受け取るのは相続人ではなく遺族です。
遺族年金等は法律で受取人が決まっているので、相続放棄をしても受け取ることができます。
主に以下の年金が該当します。
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生年金
- 死亡一時金
- 寡婦年金
詳しい支給条件等は社会保険労務士等にご確認ください。
関連記事を読む『相続放棄しても遺族年金は受け取れる|受給要件と相続は無関係』
5.死亡退職金は規定により結論が違う
相続放棄しても受け取れるもの5つ目は、死亡退職金です。
亡くなった人の死亡退職金を受け取れるかは、退職金支給規定等で受取人を定めているかで結論が違います。
5-1.社内規定等で受取人を定めているなら受け取れる
退職金支給規定等で受取人を定めているなら、受取人固有の権利として受け取ります。
一般的には、配偶者が受け取れるようにしている規定が多いです。
5-2.社内規定等に定めがないなら受け取れない
社内規定等で特に受取人を指定していなければ、退職金は相続財産となります。
したがって、相続放棄をするなら受け取ることはできません。
6.祭祀財産を受け継ぐのは祭祀承継者
相続放棄しても受け取れるもの6つ目は、祭祀財産です。
- 祭祀財産
- 祖先を祀るための財産
祭祀財産は相続財産ではないので相続放棄とは無関係です。祭祀財産を受け継ぐのは祭祀承継者となります。
祭祀承継者は亡くなった人の指定や慣習に従い決めます。
以下が主な祭祀財産です。
- お墓
- 仏壇
- 位牌
- 遺骨
- 家系図
相続放棄をしても仏壇や位牌は受け取れますので大丈夫です。
7.お香典やご霊前は葬儀主宰者が受け取る
相続放棄しても受け取れるもの7つ目は、お香典やご霊前です。
亡くなった人の葬儀を誰がするかは自由なので、相続放棄をした人が葬儀を主宰しても大丈夫です。
相続放棄した人が喪主となって葬儀を執り行った際の、香典や霊前は相続財産ではありません。
香典や霊前は参列者から葬儀主宰者への贈与と判断されるので、相続放棄とは関係ありません。
8.さいごに
相続放棄をすると相続人ではありません。
そのため、相続財産を受け取ることはできません。
ただし、相続放棄をしても、相続財産以外は受け取ることができます。
- 生命保険金
- 葬祭費・埋葬料
- 未支給年金
受け取れる財産に共通するのは、固有の権利や法律で受取人が決まっているということです。
相続するわけではないので相続放棄をしても関係ありません。
相続放棄を検討しているなら、受け取れる財産についても確認しておいてください。