遺言執行者の報酬を決める方法は3つあります。
- 遺言書に記載して決める
- 相続人との話し合いで決める
- 家庭裁判所に決めてもらう
遺言書で報酬額を決める場合は、誰が読んでも報酬額が分かるように記載してください。
可能であれば、前もって相続人に報酬額を説明しておきましょう。
今回の記事では、遺言執行者の報酬について説明しているので、報酬に疑問があれば解決の参考にしてください。
目次
1.遺言執行者の報酬は遺言書に記載できる
遺言執行者の報酬の決め方1つ目は、遺言書で定めておくです。
遺言執行者の報酬は遺言書で定めることができます。
以下は、民法の条文です。
家族を遺言執行者に指定する場合は別ですが、第3者を指定する場合は報酬も決めておくことが多いです。
1-1.遺言書で遺言執行者の報酬を定める書き方
遺言書で遺言執行者の報酬を定める場合、大きく分けると2通りの書き方があります。
遺言執行者の報酬を固定にする
あらかじめ、遺言執行者(予定者)と具体的な金額を決めておき、遺言書に金額を記載しておきます。
遺言書
遺言執行者の報酬は、金〇〇万円とする。
報酬額を固定にするメリットは、相続人が読んでも分かりやすい点になります。
一方、報酬額を固定にするデメリットは、想定していたよりも相続財産が減っていても、固定の金額を請求される点です。
遺言執行者の報酬を割合で決める
遺言執行者の報酬を相続財産に対する割合で決めます。
遺言書
遺言執行者の報酬は、遺言執行対象財産の〇パーセントとする。
報酬額を割合にするメリットは、相続財産が増減していれば報酬額も増減する点です。
一方、報酬額を割合にするデメリットは、相続財産の評価額で相続人と遺言執行者が揉めやすい点です。
1-2.遺言執行者の報酬額が少なければ就任を拒否できる
第3者を遺言執行者に指定するなら、前もって報酬額についても同意を得ておく必要があります。
なぜかというと、遺言書で遺言執行者を指定しても、就任するかどうかは自由に決めれるからです。
遺言書に記載している報酬額が少なければ、第3者は就任を拒否するでしょう。
遺言執行者の就任を拒否されると余計な手間や費用が増えるので、報酬額で断られないように気を付けてください。
関連記事を読む『遺言執行者の辞退と辞任では手続きが大きく違う』
2.遺言執行者の報酬は相続人と決めることも可能
遺言執行者の報酬の決め方2つ目は、相続人との話し合いで決めるです。
遺言書に遺言執行者の報酬が記載されていない場合、相続人および受遺者との話し合いで決めることもできます。
なぜなら、遺言執行者の報酬は相続財産から支払われるので、話し合いで決めても問題ないからです。
ただし、相続人等からすると報酬額は低くしたいですし、遺言執行者からすると報酬額は高くしたいので、上手くいかない可能性もあります。
話し合いが上手くいかない場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てをしましょう。
3.家庭裁判所に遺言執行者報酬付与の申立て
遺言執行者の報酬の決め方3つ目は、家庭裁判所に決めてもらうです。
遺言書で遺言執行者の報酬を定めていない場合や、家庭裁判所から遺言執行者として選任された場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てをすることができます。
以下は民法の条文です。
3-1.遺言執行者報酬付与の申立て手続き
遺言執行者報酬付与の申立て手続きについて、簡単に説明していきます。
報酬付与の申立人は遺言執行者
遺言執行者報酬付与の申立人は遺言執行者自身です。
たとえ家庭裁判所から選任された遺言執行者であっても、申立をしなければ報酬は付与されません。
報酬付与の申立先は遺言者の住所地
遺言執行者報酬付与の申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
最後の住所地は住民票(除票)または戸籍の附票で確認できます。
報酬付与の申立手数料
遺言執行者報酬付与の申立手数料は800円です。
ただし、現金ではなく収入印紙で納めます。申立書に800円分の収入印紙を貼ってください。
また、家庭裁判所に予納切手も提出する必要があります。
予納切手は管轄家庭裁判所により違うので、申立をする前に確認しておいてください。
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報酬付与申立書の添付書類
遺言執行者報酬付与申立書の添付書類は複数あります。
- 遺言者の戸籍謄本(死亡記載)
- 遺言書の写し
- 遺言執行者の住民票
- 遺言執行報告書・相続財産目録
遺言執行者が家庭裁判所の選任手続きにより選任されている場合は、戸籍謄本や住民票は省略できます。
3-2.家庭裁判所は遺言執行者の報酬をどのように決めるのか?
遺言執行者報酬付与の申立てがあると、家庭裁判所は以下の事情等を考慮して報酬額を決めます。
- 相続財産の内容
- 遺言者と遺言執行者の関係
- 遺言執行の所要日数
- 遺言執行の内容
- 遺言執行者の職業
家庭裁判所が決めた報酬額に不満を抱いても、不服申し立てはできません。
4.遺言執行者の報酬は誰が支払うのか?
遺言執行者の報酬は遺言執行費用の一部です。
したがって、遺言執行者の報酬も相続財産から支払われます。
以下は、民法の条文です。
通常は、相続財産から遺言執行者の報酬を引いて、残額を相続人に引き渡します。
ちなみに、遺言執行者の報酬以外にも、遺言執行費用はあります。
- 遺言書の検認手続き費用
- 相続財産の管理費用
- 不動産の移転登記費用
- 遺言執行者の交通費
- 相続財産目録の作成費用
遺言執行者の報酬以外についても、計算しておく必要があります。
5.弁護士を遺言執行者に指定する際の報酬額目安
弁護士を遺言執行者に指定する際の報酬額については目安があります。
なぜかというと、かつては弁護士会で報酬の目安が設定されていたからです。現在は廃止されていますが、目安をそのまま使用している事務所は多いと言われています。
経済的な利益の額 | 報酬額 |
300万円以下 | 30万円 |
300万円超 3,000万円以下 |
2%+24万円 |
3,000万円超 3億円以下 |
1%+54万円 |
3億円超 | 0.5%+204万円 |
当然ですが、遺言執行の内容が特殊(複雑)であれば、報酬額は増えていきます。
あくまでも目安なので、上記の金額より高い事務所もあります。
6.さいごに
遺言執行者の報酬額を決める方法は3つあります。
- 遺言書に記載して定める
- 相続人と話し合いで決める
- 家庭裁判所に決めてもらう
一般的に、遺言書で第3者を遺言執行者に指定する場合、報酬額についても記載します。
遺言書に報酬額の記載が無ければ、相続人と話し合いで決めることもできます。
相続人との話し合いが上手くいかなければ、家庭裁判所に報酬付与の申立てをしましょう。
遺言執行者の報酬額は相続人と遺言執行者の間でトラブルになりやすいので、遺言書に記載するなら分かるように記載しましょう。