遺産分割調停により不動産の取得者を決めた場合でも、不動産登記の変更は自分で申請する必要があります。
相続登記を申請する際には、遺産分割調停調書謄本(正本)を証拠として添付します。
ご自身で相続登記を申請するなら、今回の記事を参考にしてください。
目次
1.遺産分割調停で相続内容を決める
亡くなった人が遺言書を残していなければ、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
ですが、遺産分割協議の成立には、相続人全員の同意が必要です。誰か1人でも反対すると遺産分割協議は不成立となり、相続手続が進まなくなります。
相続人間の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることができます。
- 遺産分割調停
- 家庭裁判所の裁判官と調停委員の仲介によって、相続内容を決める手続きのこと
第3者が間に入ることにより、感情的な争いを避けやすくなります。相続人全員が納得できる内容を、調停委員と話し合うことで目指していきます。
相続内容に相続人全員が合意した場合は、遺産分割調停が成立となります。
2.不動産の取得者は単独で申請できる
調停により相続人間の合意が得られた場合は、調停調書を作成します。
- 調停調書
- 調停で合意した内容を記載した文書のこと
遺産分割調停調書の記載は、遺産分割審判と同一の効力を有します。
遺産分割調停により不動産を取得する相続人は、調停終了後に相続登記を申請します。遺産分割調停が成立したからといって、不動産登記簿が変更されるわけではありません。
遺産分割調停による相続登記は、不動産を取得する相続人からの単独申請となります。他の相続人に協力を頼む必要はありません。
相続登記を申請する際には、相続を証明する情報として遺産分割調停調書を添付します。
3.調停による相続登記の添付書類
遺産分割調停による相続登記の添付書類は、通常の相続登記とは違います。
添付書類は3つだけで大丈夫
以下の3つが添付書類です。
- 遺産分割調停調書謄本
- 不動産を取得する人の住民票
- 固定資産評価証明書
【遺産分割調停調書謄本】
遺産分割調停調書の謄本を添付します。正本でなくても大丈夫です。
【不動産を取得する人の住民票】
不動産登記簿の記載事項に住所があるので、取得者の住民票を添付します。
【固定資産評価証明書】
不動産の課税価格を証明するために、固定資産評価証明書を添付します。
省略される添付書類
遺産分割調停による登記では、以下の書類が省略されます。
- 亡くなった人の戸籍謄本等
- 亡くなった人の住民票
- 相続人の戸籍謄本
亡くなった人の戸籍謄本や住民票は基本的に省略となります。
なぜなら、亡くなった人の死亡日や最後の住所は、遺産分割調停調書に記載されているからです。
不動産を取得する相続人の戸籍謄本が省略されるのは、遺産分割調停をする際に相続人であることは確認されているからです。
司法書に依頼する場合は、委任状が追加で添付書類となります。
基本的な相続登記の添付書類は、下記の記事で説明しております。
4.調停成立前に法定相続分で登記している場合
遺産分割調停が成立していなくても、法定相続分による相続登記はすることができます。
なぜかというと、遺産分割が成立する前は、相続人全員による共有状態となっているからです。
法定相続分による相続登記がされた後に遺産分割調停が成立した場合は、相続による登記ではなく遺産分割による持分移転登記を申請します。
以下が遺産分割による持分移転登記です。
- 登記原因
- 遺産分割
- 原因日付
- 遺産分割調停成立の日
- 登記権利者
- 不動産を取得する相続人
- 登記義務者
- 他の相続人
遺産分割を原因とする所有権移転登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請となります。
ただし、遺産分割調停調書に登記義務者の登記義務履行に関する条項があれば、登記権利者(不動産の取得者)が単独で申請することができます。
以下は、遺産分割調停成立後の不動産登記の違いについてです。
調停成立時の 登記名義人 |
亡くなった人 | 共同相続人 |
登記原因 | 相続 | 遺産分割 |
原因日付 | 相続発生日 | 調停成立日 |
申請方法 | 単独申請 | 共同申請 *単独も可能 |
5.さいごに
遺産分割調停により不動産を取得する相続人は、遺産分割調停調書を添付して相続登記を申請します。
相続登記は他の相続人の協力を必要とせず、不動産の取得者が単独で申請します。
ただし、調停成立前に相続登記をしている場合は、調停調書に登記義務履行の条項が無ければ、他の相続人と共同申請をする必要があります。
遺産分割調停が成立しても、相続登記は自分で申請する必要がありますので、忘れないように気を付けてください。