法務局より身に覚えのない書面が届き、何のことか分からず検索されていませんか。
あるいは、何十年も前に亡くなった祖父の名前に驚かれていませんか。
結論から言えば、通知書面が届いたということは、あなたが登記名義人の法定相続人だということです。
土地の相続登記が長期間申請されていないので、促す(知らせる)意味もあり書面が届いています。
今回の記事では、長期相続登記等未了土地の通知について説明しているので、疑問を解消する参考にしてください。
目次
1.相続登記が長期間申請されていない土地の法定相続人
「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知」が届いたということは、あなたが長期間相続登記がされていない土地の法定相続人だということです。
ですが、通知書に記載されている土地や登記名義人を知っている人もいれば、まったく何のことか分からない人もいます。
まずは、何のために通知書が送られてきたのかを説明します。
1-1.相続登記未了状態を解消するための作業
結論から言えば、相続登記が長期間されていないので、相続登記の申請を促すお知らせになります。
細かい話は省略しますが、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」によって、戸籍上の法定相続人を調べた結果、あなたが法定相続人だったというわけです。
相続登記の申請も義務化されますし、放置状態が続くと相続登記の申請が困難になります。放置状態が長期間になるほど、相続登記の費用は増えやすいです。
ですので、相続登記の申請を書面で促しています。
関連記事を読む『【相続登記の義務化】罰則もあるので忘れずに申請しよう』
1-2.他の法定相続人を調べる必要がある
通知書面に記載されている土地の法定相続人が1人であれば、相続登記未了状態を解消するのは簡単です。
ですが、他に法定相続人がいれば、遺産分割協議等も必要になるので難しくなります。
まずは、法定相続人が何人存在するのかを、法務局で確認する必要があります。
2.長期相続登記等未了土地である旨の付記登記
通知書面に記載されている土地の不動産登記簿には、長期相続登記等未了土地である旨の登記がされています。
以下が、登記簿の記載例です。
上記の付記1号や付記2号が、長期相続登記等未了土地である旨の登記になります。
2-1.法定相続人情報で他の相続人を確認
法務局は登記名義人の法定相続人を調べたうえで、あなたに書面を通知しています。
つまり、法務局は他の相続人(共有者)も把握しています。
そして、長期相続登記等未了土地の法定相続人は、法務局に対して「法定相続人情報」の閲覧を請求できます。
法定相続人情報には、以下の情報が記載されています。
- 被相続人(登記名義人)の氏名
- 被相続人の住所・登記簿上の住所・本籍地
- 被相続人の死亡日
- 法定相続人の氏名・住所・生年月日
法定相続人情報を閲覧して、他の相続人を確認することが相続登記への第一歩となります。
2-2.法定相続人情報の閲覧請求の手続き
法定相続人情報の閲覧請求をまとめると、以下のようになります。
- 閲覧請求は相続人等の利害関係人のみ
- 閲覧請求は管轄登記所の窓口
- 閲覧請求には「作成番号」が必要
- 閲覧手数料は450円
閲覧請求は利害関係人のみ
法定相続人情報を閲覧請求できるのは、法定相続人等の利害関係人のみです。
法定相続人情報は登記簿の付属書類なので、利害関係人以外は請求することができません。
閲覧請求は管轄登記所の窓口だけ
法定相続人情報の閲覧請求は、土地を管轄する登記所の窓口でしかできません。
現時点では、郵送やインターネット申請に対応していません。
司法書士から一言時期は未定ですが、郵送請求に対応するようです。
閲覧請求には作成番号が必要
法定相続人情報等閲覧申請書には、作成番号の記入が必要です。
通知書面には作成番号が記載されているので、間違えないように記入してください。
閲覧請求には手数料450円
閲覧請求には手数料450円が必要です。
ただし、現金ではなく閲覧申請書に収入印紙を450円分貼付ます。
3.長期相続登記等未了土地の相続登記を申請するメリット
法務局からの通知書面に、相続登記を強制させる効力はありません。
ですが、相続登記を申請するメリットはあります。
- 法務局が法定相続人を調べている
- 戸籍謄本や住民票の省略が可能
3-1.法務局が法定相続人を調べている
通常の相続登記では、自分で戸籍謄本等を収集して法定相続人を調べます。
それに対して、長期相続登記等未了土地については、法務局が法定相続人を調べているので、自分で調べる手間が省けます。
共同相続人に連絡が取れるのであれば、相続登記に関する問題を解消するのも難しくありません。
3-2.戸籍謄本等や住民票の省略が可能(例外有り)
長期相続登記等未了土地の相続登記を申請する際に、法定相続人情報の作成番号を提供すれば、添付書類である戸籍謄本等や住民票を省略できます。
なぜかというと、すでに法務局が戸籍謄本等を収集して確認しているからです。
放置されていた相続登記に必要な戸籍謄本等を自分で収集すると、安くても数千円で高ければ数万円かかることもあります。戸籍謄本等の収集を省略できるのは金銭面でもメリットがあります。
ただし、相続人が不明だった場合は戸籍謄本等が足りていないので、申請人が収集して提出する必要があります。
4.通知書面や法定相続人情報に関する注意点
通知書面や法定相続人情報に関する注意点です。
間違えやすい点があるので、一応確認しておいてください。
4-1.相続人全員に通知しているわけではない
「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知」は、法定相続人全員に通知しているわけではありません。
通知書にも記載されていると思いますが、相続人の1人に通知しています。
誰に通知するかは、以下の順位で決められています。
ですので、あなた以外の法定相続人は、相続登記が未了であることに気付いていない可能性があります。
4-2.相続放棄を済ませていても届くことはある
相続放棄を済ませていても書面が届くことはあります。
なぜなら、戸籍謄本には相続放棄の有無は記載されないので、法定相続人と判断して通知することもあるからです。
相続放棄を済ませている場合や、通知書が届いた後に相続放棄をした場合は、通知書に記載されている電話番号に連絡しましょう。
法務局は相続放棄を確認したうえで、法定相続人情報を変更する必要があります。
4-3.法定相続人情報は他の相続手続では使用不可
法定相続人情報を取得しても、他の相続手続で使用することはできません。
名称は似ていますが、「法定相続人情報一覧図」とは別の書面になります。
あくまでも、相続登記等の未了を解消するために使用できる情報です。
5.相続の開始を通知書面で知った場合は相続放棄できる
相続登記が長期間放置されている理由は様々です。
場合によっては、相続の開始を知らなかったから、相続登記を申請していないのかもしれません。
相続の開始を通知書面で知った場合は、知った日から3ヶ月以内であれば相続放棄できます。
亡くなった人(登記名義人)の財産を相続するつもりがなければ、相続放棄をした方が簡単かもしれません。
ただし、亡くなった人に他の財産が有っても、相続放棄すると相続することはできません。
相続放棄は3ヶ月以内になりますので、通知書面が届いたら早めの判断が必要です。
注意登記名義人の直接の相続人でない場合、相続放棄が難しいこともあります。
6.さいごに
「長期間にわたり相続登記等がされていないことの通知」が届いたということは、あなたが土地の登記名義人の法定相続人だということです。
ただし、書面が届いたからといって、相続登記が強制されるわけではありません。
あくまでも、相続登記も義務化されますし、放置すると解決するのが困難になるので、「相続登記を申請しておいた方が良いですよ」と促しているだけです。
法務局の方で戸籍謄本等を調べて、法定相続人情報も作成しています。作成番号を提供すれば戸籍謄本等や住民票の省略も可能です。
相続登記の未了状態を続けることにメリットは特に無いので、通知書面をキッカケにして司法書士等に相談してください。
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