土地の相続登記が未了なら、登録免許税の免税措置に該当していないか確認してください。
もし登録免許税の免税要件に該当するなら、相続登記の登録免許税は非課税になります。
- 死亡した相続人への土地の相続登記
- 100万円以下の土地の相続登記
上記のどちらかに該当するなら、できる限り早めに相続登記を申請しておきましょう。
今回の記事では、相続登記の登録免許税が非課税になるケースを説明しているので、相続登記が未了なら参考にしてください。
目次
1.相続登記の登録免許税が免税措置により非課税
通常、相続による土地の所有権移転登記には、登録免許税という税金を納める必要があります。
ですが、平成30年度の税制改正により、一部の相続登記には期間限定で免税措置が設けられました。免税要件に該当すると登録免許税は非課税です。
1-1.相続登記の登録免許税が非課税になるケースは2つ
すべての相続登記が非課税になるわけではなく、免税要件に該当する相続登記のみです。
- 死亡した相続人への土地の相続登記
- 100万円以下の土地の相続登記
上記の相続登記を申請する場合は、登録免許税が非課税になります。
それぞれの詳しい説明は、各項目をご確認ください。
1-2.登録免許税の免税措置は期間が延長された
当初の予定では、登録免許税の免税措置は期間満了により終了でした。
しかし、令和4年度の税制改正により、令和7年3月31日まで3年間延長されました。
相続登記をまだ申請されていない場合は、期間が延長されている間に申請しましょう。
2.死亡した相続人への相続登記は非課税
相続登記の登録免許税が非課税になるケース1つ目は、死亡した相続人への相続登記です。
亡くなった人(土地の登記名義人)の相続人が、相続登記をする前に死亡することもあります。
そして、死亡した相続人に名義変更する相続登記に関しては、登録免許税が非課税となります。
2-1.死亡した相続人に名義変更する相続登記
「死亡している人に不動産の名義を変更できるの?」
上記のような疑問を持たれたかもしれません。
ですが、死亡している人が不動産を取得(相続)していた以上、不動産登記簿には記録する必要があります。
例えば、登記名義人Aが亡くなってBが相続し、相続登記前に相続人Bが死亡した場合です。
登記名義人Aから亡Bに相続登記を申請します。相続登記の申請人は亡Bの相続人となります。
2-2.死亡した相続人に対する遺贈登記も非課税
亡くなった人が遺言書で土地を相続人に遺贈していた場合も、受遺者(相続人)が登記前に死亡していると非課税になります。
なぜなら、相続人に対する遺贈は、実質的に相続登記と変わらないからです。
※相続人に対する遺贈登記の登録免許税は相続登記と同じ。
相続人に遺贈することは少ないですが、遺言書が残されているなら確認しておきましょう。
2-3.死亡した相続人から土地を取得したのが第3者でも適用
死亡した相続人への相続登記が非課税になるのは、土地を死亡した相続人から取得したのが第3者でも適用されます。
例えば、相続人が死亡する前に土地を売却していた場合や、相続人が遺言書で遺贈していた場合等です。
土地の名義を第3者に変更するには、相続人名義に変更しておく必要があります。亡相続人名義から第3者に名義変更します。
3.100万円以下の土地の相続登記は非課税
相続登記の登録免許税が非課税になるケース2つ目は、100万円以下の土地を相続した場合です。
令和4年度の税制改正により、土地の価格は10万円から100万円に変更されました。
相続した土地の価格が100万円以下であれば、相続登記の登録免許税は非課税となります。
3-1.土地の価格は固定資産課税台帳で判断
相続登記が非課税になる土地の価格とは、固定資産課税台帳に登録されている価格です。
- 固定資産課税台帳
- 固定資産税の課税対象となる不動産等を登録した帳簿のこと
固定資産課税台帳は不動産の所在する市役所等で確認できます。
ちなみに、固定資産課税台帳に登録されていない場合は、登記官が土地の価格を認定します。
関連記事を読む『相続登記の課税価格は不動産ごとに違うので確認しておこう』
3-2.土地の持分を相続した場合は持分割合で計算
土地の持分を相続した場合も、登録免許税の減免措置は適用されます。
「不動産全体の価格×持分割合」が100万円以下であれば、土地持分の相続登記も非課税になります。
例えば、不動産の価格が300万円で持分が3分の1なら、持分の相続登記は非課税です。
不動産全体の価格が高くても、相続する持分割合によっては減免措置が適用されます。
3-3.免税措置の適用対象が全国の土地に拡大
令和4年度の税制改正前は、免税措置の対象となる土地が限られていました。
ですが、適用対象となる土地の要件が撤廃されたので、全国の土地が対象となります。
したがって、過去に相続登記の非課税を調べていた時は対象外でも、現在は対象になっているかもしれません。
土地の相続登記が未了になっているなら、改めて価格を確認しておいてください。
4.相続登記の免税措置に関する注意点
登録免許税の免税措置には注意点もあります。
相続登記を申請する前に、今一度確認しておいてください。
4-1.相続登記の申請書に根拠条文の記載が必要
相続登記の減免措置を適用するには、相続登記の申請書に根拠条文の記載が必要です。
根拠条文を記載していなければ、登録免許税は非課税になりません。
死亡した相続人に相続登記する場合
死亡した相続人に相続登記する場合は、登録免許税を記載する箇所に以下のように記載します。
「登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」
租税特別措置法第84条の2の3第1項が根拠条文になります。
以下は、登記申請書の記載例です。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原因 令和○年○月○日相続
(省略)
登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税
少額(100万円以下)の土地を相続した場合
100万円以下の土地を相続した場合は、登録免許税を記載する箇所に以下のように記載します。
「登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」
租税特別措置法第84条の2の3第2項が根拠条文になります。
以下は、登記申請書の記載例です。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原因 令和○年○月○日相続
(省略)
登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税
4-2.登録免許税の免税であって減税ではない
相続登記の登録免許税が免税されるのであって、減税されるわけではありません。
例えば、相続した土地の価格が200万円だった場合、「200万円-100万円」にはなりません。
あくまでも、相続した土地の価格が100万円以下だったら、登録免許税の免税措置により非課税になるだけです。
「免税」と「減税」は間違えやすいので注意しましょう。
4-3.免税措置があるのは土地の相続登記
相続登記の登録免許税が非課税になるのは、「土地」の相続登記だけです。
間違いやすいのですが、建物の相続登記は対象外になります。
亡くなった人が建物と土地を所有していた場合、建物に関しては登録免許税が必要です。
5.免税要件に該当するなら今のうちに相続登記
登録免許税の免税要件に該当するなら、今のうちに相続登記を申請しておきましょう。
なぜかというと、令和6年4月1日から相続登記は義務化されたからです。
どのみち相続登記を申請するなら、免税措置の期間内に申請しましょう。
また、相続登記を放置しておくと、さまざまな問題が発生します。できる限り早めの相続登記をお勧めします。
関連記事を読む『相続登記を放置すると5つの問題(デメリット)が発生する』
6.さいごに
登録免許税の免税措置により、要件に該当する土地の相続登記は非課税となります。
- 死亡した相続人への土地の相続登記
- 100万円以下の土地の相続登記
上記のどちらかに該当するなら、相続登記の登録免許税は非課税です。
ただし、相続登記の申請書に根拠条文を記載しなければ、登録免許税は非課税になりません。
相続登記の義務化も決定しているので、免税要件に該当しているなら相続登記を申請しておきましょう。