亡くなった人のペットは、相続放棄をすると引き取ることはできないのでしょうか。ネット上で頻繁に見かける質問であり、明確な答えが無い質問でもあります。
答えがない理由は、過去に裁判で争ったことがないからです。裁判例があれば参考にできるのですが、現状は法律解釈で判断するしかないです。
法律解釈は人それぞれになってしまうので、参考程度に留めておいてください。
目次
- ペットも相続財産
- 引き取ると何が問題なのか?
- 財産を取得すると単純承認
- 金銭的価値はあるのか?
- 餌をあげるのは保存行為
- 亡くなる前に譲る
- さいごに
1.ペットも相続財産
日本の法律では犬や猫は「物」として扱われるので、所有している人の財産となります。
人が亡くなると有していた財産は、相続財産として相続人に引き継がれます。
ペットも相続財産として判断されるので、引き継ぐのは相続人です。
したがって、相続放棄をすると初めから相続人ではないので、ペットを相続することはできません。
相続する以外の方法で、ペットを引き取れるか考える必要があります。
2.引き取ると何が問題なのか?
相続放棄をした人がペットを引き取ると、何が問題になるのでしょうか?
2-1.財産を取得すると単純承認
相続放棄を検討している人にとって一番怖いのは、単純承認とみなされることです。
- 単純承認
- プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続すること
相続放棄をすると相続人ではないので、相続財産を取得することはできません。相続財産を取得すると、相続人であると認めたことになります。
ペットは相続財産なので、ペットを引き取ると単純承認とみなされる可能性はあります。
ただし、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する際に、ペットが問題になることはないです。家庭裁判所の判断基準は、期間制限と財産処分の2つだからです。
ペットを引き取ったことが問題になるとすれば、相続放棄の取消し理由になるかどうかです。
相続放棄をした家族がペットを引き取ることは、実際には行われているはずですが、相続放棄が取り消された話は聞いたことがないです。
2-2.金銭的価値はあるのか?
亡くなった人の財産を取得しても、金銭的価値が無ければ単純承認には当たらないという裁判例があります。
通常、家で飼われている犬や猫に金銭的価値はありません。仮に売却しようとしても、お金を払って購入する人はいないでしょう。
ペットに金銭的価値が無ければ、形見分けとして引き取っても問題ないという考え方もできます。ただし、血統書付きの犬や猫は金銭的価値があると思われるので、単純承認とみなされる可能性はあります。
3.餌をあげるのは保存行為
相続放棄を検討している人が、ペットに餌をあげると単純承認とみなされるのでしょうか。現実問題として、誰かがペットを引き取りに来るまでの間も、餌をあげる必要があります。
餌をあげるということは、自分が飼い主(相続人)であると認める行為でしょうか。
ペットに餌をあげる行為は保存行為になると考えられるので、単純承認には当たらないです。
- 保存行為
- 財産の現状を維持する行為
餌をあげなければペットは死んでしまうので、現状を維持するために餌をあげるのは保存行為となります。
結論としては、亡くなった人の飼っていた犬や猫に餌をあげても、相続放棄をすることは問題ありません。
4.亡くなる前に譲っておく
あなたが亡くなる前に、ペットを相続人に譲っておくのも有効です。
生前贈与で問題になるのは、金銭価値が有るものを生前贈与する場合です。
したがって、金銭的価値がないペットを受け取っていても、相続放棄をすることはできます。
親や兄弟姉妹がペットを飼っているが、借金もあるので相続放棄する予定である。それならば、亡くなる前にペットを譲ってもらうのも方法の一つです。
贈与契約は口頭でも成立するので、家族で話し合ったときにでも譲っておいてください。ペットを譲ってもどこで飼うかは自由です。
5.さいごに
亡くなった人が飼っていたペットは、相続放棄をしても引き取れるのか。
結論としては明確な答えはないです。
ただし、ペットを引き取ったことを理由に、相続放棄が取り消された事例は見つからなかったです。
相続放棄した人も亡くなった人のペットを、色々な法律解釈により引き取っているのでしょう。
ペットを引き取っていいのか不安であれば、相続放棄をする際に相談してみてください。