不動産が共有名義の場合、固定資産税は共有者全員に納付義務があります。自分の持分だけ支払うのではなく全額を支払う義務です。
亡くなった人の相続人が複数人いれば、相続人全員に固定資産税の納付義務が発生します。
1人で固定資産税を全額支払った場合、他の共有者に負担額を請求できます。
今回の記事では、共有名義不動産の固定資産税について説明しているので、不動産が共有状態であれば参考にしてください
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【解消方法は複数ある】
1.固定資産税は共有者が連帯納付
まず初めに、固定資産税について簡単に説明しておきます。
固定資産税とは、固定資産の所有者が市町村に納める税金のことです。
土地と建物はどちらも固定資産となります。
そして、不動産が共有であれば、固定資産税は連帯納付となります。
分かりやすく説明するなら、共有者が何人であっても、固定資産税の納付は連帯責任となります。
例えば、共有者が3人(A・B・C)の場合、Aは3分の1を納めるのではなく、全額を納める義務があります。
*BやCも同じです。
たとえ共有持分が少しであっても、固定資産税の連帯納付者です。
共有者が固定資産税を納めれば、他の共有者の納税義務は消滅します。
固定資産税の請求は共有者全員にするのではなく、代表者に請求することになっています。
2.共有者の中から代表者を決める
不動産が共有の場合、固定資産税の請求は代表者に対して行われます。
固定資産税の納付書も代表者の住所地に送付されます。
2-1.代表者の決め方を知っておこう
代表者の決め方は、共有になった経緯により少し違います。
- 最初から共有
- 相続により共有
市町村ごとに決まっている
最初から共有とは、複数人で不動産を購入(新築)した場合です。
最初から共有の場合は、市町村ごとに代表者の決め方があります。
- 不動産に居住している人
- 市内に居住している人
- 持分の多い人
- 登記簿の記載順
各市町村ごとに決め方が違うので、ご注意ください。
ただし、代表者は市町村の強制ではなく、共有者同士で決めることもできます。
市町村に代表者変更届を提出することで、固定資産税の代表者は変更可能です。
相続人の代表者を決める
相続により共有になった場合は、市町村より相続人代表者指定届が送られてきます。
相続人の中から固定資産税の代表者を決めて、市町村に届出書を送付してください。
届出書を送付しなければ、市町村が代表者を決めます。
注意固定資産税の代表者を決めるのと遺産分割は別の手続きです。
2-2.代表者が納付しなければ他の共有者に請求
勘違いしやすいのですが、固定資産税の納付義務は共有者全員にあります。
あくまでも、手続き上の代表者を決めているだけなので、代表者が固定資産税を納付しなければ、他の共有者に請求が届きます。
たとえ共有者同士で固定資産税の負担について決めていても、納税義務とは無関係となります。
不動産の共有者である限り、固定資産税の納税義務者です。
3.不動産の相続と固定資産税の関係
不動産の相続と固定資産税の関係についてです。
- 登記名義と固定資産税
- 共有者の相続人も納税義務
3-1.相続登記が済んでいなくても納税義務
亡くなった人の相続人が相続登記を申請していなくても、固定資産税の納税義務は発生します。
なぜなら、不動産名義が亡くなった人であっても、不動産の所有権は相続人に移転しているからです。
市町村は固定資産税が納付されなければ、所有者が亡くなっているか確認します。そして、戸籍謄本等で死亡を確認すると、相続人の確認も同時に行います。
相続人が複数人であれば、市町村より相続人代表者指定届が送られてきます。
司法書士から一言亡くなった人と疎遠であれば、相続人代表者指定届で死亡を知ることも多いです。
相続放棄は相続の開始を知った日から3ヶ月以内なので、相続放棄をするなら期限経過に気をつけてください。
3-2.共有名義人の相続人も連帯納付義務
不動産の共有名義人が亡くなった場合、共有名義人の相続人も固定資産税の納付義務者となります。
また、共有名義人が亡くなる前に固定資産税を滞納していると、未払いの固定資産税も負債として相続財産となります。
亡くなった共有者が固定資産税の代表者だった場合、相続人も含めて新しい代表者を決めます。
相続人が複数人だったとしても、納付義務は全員にあるので注意しましょう。
関連記事を読む『不動産の共有名義人が死亡すると持分はどうなるのか?』
4.固定資産税を1人で支払った場合
一般的に代表者は他の共有者から金銭を受け取り、市区町村に固定資産税を支払います。
ただし、他の共有者が金銭を支払わず、代表者が全額負担することも珍しくありません。
あるいは、代表者が支払わないので、共有者が全額支払うこともあります。
4-1.他の共有者に負担額を請求できる
1人で固定資産税を全額支払うと、他の共有者に対して求償権を取得します。
- 求償権
- 他人のために債務を弁済した場合、その他人に弁済を求める権利のこと
例えば、共有者がAとBの2人(持分同じ)で、Aが固定資産税を全額負担した場合です。
Aは共有者Bに対して、固定資産税の2分の1(Bの負担額)を請求することができます。
固定資産税は連帯納付なのですが、共有持分により負担割合は決まっています。
4-2.不動産を単独で使用しているなら注意
固定資産税を支払った人が、不動産を単独で使用しているなら注意が必要となります。
なぜなら、共有者に固定資産税を請求すると、逆に家賃を請求される可能性があるからです。
共有者からすると、固定資産税を請求するなら、代わりに家賃を請求するになります。
固定資産税を共有者に請求するなら、家賃の負担についても確認しておきましょう。
5.さいごに
不動産が共有名義だった場合の固定資産税について説明しました。
- 固定資産税は連帯納付義務
- 代表者に請求が届く
- 登記名義と納付義務は別
- 1人で全額支払うと求償権
共有者が固定資産税を支払わないと、あなたが全額負担することになります。
また、共有名義人に相続が発生すると、相続人も連帯納付義務者となります。
不動産を共有状態で放置しておくと、さまざまな問題が発生します。できる限り早めに不動産の共有状態は解消しておきましょう。