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公正証書遺言を撤回する方法は3つある

公正証書遺言の撤回方法
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公正証書遺言を作成しても、撤回するのは遺言者の自由です。

ですが、公正証書遺言の撤回方法は決まっているので、間違わないように気を付けてください。

以下の3つが撤回方法となります。

  • 公証役場での撤回手続き
  • 新しく遺言書を作成する
  • 遺言書の内容に抵触する行為をする

今回の記事では、公正証書遺言の撤回について説明しているので、撤回を検討しているなら参考にしてください。

1.公証役場で公正証書遺言の撤回手続き

公正証書遺言の撤回1つ目

1つ目の撤回方法は、公証役場での撤回手続きです。

公正証書遺言は公証役場で撤回することができます。分かりやすく言うなら、作成した公正証書遺言を無かったことにする手続きです。

公正証書遺言を作成したときと同じく証人2人を用意して、公証人に対し公正証書遺言を撤回する旨を申述します。

遺言者は、令和〇〇年〇月〇日、〇〇法務局所属公証人〇〇作成同年第〇〇号公正証書遺言による遺言者の遺言の全部を撤回する。

公正証書に署名捺印するので、実印と印鑑証明書(3ヶ月以内)が必要です。手数料は1万1,000円となります。

公証役場で撤回すると遺言書が無い状態になるので、新しく作成するのを忘れないように気を付けてください。

 

2.新しく遺言書を作成すると古い遺言書は撤回とみなす

公正証書遺言の撤回方法2つ目

2つ目の撤回方法は、新しく遺言書を作成するです。

新しく遺言書を作成することで、結果として古い遺言書を撤回することができます。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

出典:e-Govウェブサイト(民法1023条)

新しい遺言書の内容と古い遺言書の内容が抵触するときは、抵触する部分については撤回したとみなされます。

遺言書による撤回

例えば、長男に自宅を相続させる旨の遺言書を作成していたとします。新しい遺言書の内容が次男に自宅を相続させるであれば、長男に自宅を相続させる旨の遺言書は撤回したとみなされます。

新しい遺言書は公正証書遺言・自筆証書遺言のどちらでも可能です。

2-1.公正証書遺言を作り直す

新しい遺言書も公正証書遺言にするなら、改めて公証役場で公正証書遺言を作成します。

撤回の範囲が小さいと公証人が認めた場合は、更正証書を作成することで撤回することも可能です。

ですが、基本的には改めて作成し直すことを勧められます。

公証人に遺言書を作成し直すことを伝えておけば、遺言書に以下のような文言を入れてくれるはずです。

遺言者は、令和〇年〇月〇日付け〇〇地方法務局所属公証人〇〇作成同年第〇〇号遺言公正証書による遺言を撤回し、あらためて以下のとおり遺言をする。

上記の文言が無くても撤回の効力は発生しますが、文言の記載があれば撤回の意思も伝わります。

デメリットは、公正証書の作成費用が再度発生することです。2回目でも割引等はありません。

2-2.自筆証書遺言での撤回はリスクがある

新しく作成したのが自筆証書遺言であっても、抵触する部分については撤回したとみなされます。

勘違いしやすいのですが、公正証書遺言と自筆証書遺言どちらであっても、遺言書の効力は同じです。あくまでも、作成日の前後で判断するだけです。

ただし、自筆証書遺言での撤回には以下のようなリスクがあります。

  • 形式不備により撤回無効
  • 紛失により撤回が確認できない

形式不備により撤回無効

新しく作成した自筆証書遺言が形式不備により無効になると、遺言の撤回自体も無効になってしまいます。

したがって、遺言者が亡くなると、公正証書遺言の効力が発生します。

紛失により撤回が確認できない

新しく作成した自筆証書遺言を紛失してしまうと、遺言の撤回を確認することができません。

結果として、公正証書遺言の効力が発生することになります。新しく作成した自筆証書遺言を、保管する方法を考えておきましょう。

 

3.公正証書遺言の内容に抵触する行為をする

公正証書遺言の撤回方法3つ目

3つ目の方法は、遺言書の内容に抵触する行為をするです。

遺言書の内容に抵触する行為をすると、抵触する部分は撤回したものとみなされます。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

出典:e-Govウェブサイト1023条

新しく遺言書を作成していなくても、抵触する行為をすると撤回とみなされます。

抵触する行為は撤回とみなす

例えば、長男に自宅を相続させる旨の遺言書を作成していたとします。その後に自宅を売却すると、長男に自宅を相続させる旨の遺言書は撤回したとみなされます。

気を付ける点としては、自分の行為が遺言書の内容に抵触していることに気付かず、意図せずに遺言を撤回してしまう可能性があることです。

 

4.公正証書遺言を破棄しても撤回にならない

間違えやすい撤回方法として、公正証書遺言を破棄するがあります。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

出典:e-Govウェブサイト(民法1024条)

ですが、公正証書遺言を破棄しても、遺言を撤回したことにはなりません。

なぜなら、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているので、手元にある正本や謄本を破棄しても意味がないからです。正本や謄本を破棄しても原本には何の影響もありません。

公正証書遺言を撤回するには、3つの方法のどれかを実行するしかないです。

 

5.さいごに

作成した公正証書遺言を撤回する方法は3つあります。

  • 公証役場での撤回手続き
  • 新しく遺言書を作成する
  • 遺言書の内容に抵触する行為をする

上記いずれでも撤回できますが、公正証書遺言を破棄しても撤回したことにはなりません。間違えやすいので気を付けてください。

公正証書遺言の撤回を検討しているなら、撤回方法についても知っておきましょう。