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遺贈は相続放棄をしても受け取ることができる

相続放棄をしても受遺者である
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相続人であっても遺贈の受取人になれます。では、相続放棄をすると遺贈がどうなるかは、ご存知でしょうか。

相続放棄をしても遺贈の効力に影響はありません。相続人以外の第3者として遺贈を受け取るだけです。

ただし、相続人ではなくなるので、不動産関連の税金に影響を及ぼします。

相続放棄と遺贈の関係について、ご存知ない部分があれば参考にしてください。

1.相続人も遺贈の受遺者になれる

まず初めに、相続人も遺贈の受遺者(受取人)になれます。

遺言書に記載する際は、相続人に対しては「相続させる」、相続人以外に対しては「遺贈する」と記載することが多いです。

ですが、相続人に対して「遺贈する」と記載しても、遺贈は有効に成立しています。

遺贈を受けた相続人は、2つの立場を兼ねることになります。

  • 受遺者(遺贈の受取人)
  • 相続人

相続人と受遺者を兼ねる

遺贈の受遺者として財産を受け取り、相続人として残りの財産を相続します。

 

2.相続放棄をすると相続人ではない

遺贈の受遺者であっても、相続人として相続放棄をすることは可能です。

相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされます。

(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

出典:e-Govウェブサイト(民法939条)

つまり、受遺者は相続放棄が認められると、相続人以外の第3者として遺贈を受け取ることになります。

相続放棄をしても受遺者

相続人と受遺者の立場は別なので、相続放棄をしても受遺者として遺贈を受けることが可能です。

 

3.不動産関連の税金に影響を及ぼす

受遺者である相続人が相続放棄をすると、不動産を取得した場合の税金に影響があります。

  • 登録免許税
  • 不動産取得税

3-1.登録免許税は5倍になる

不動産を遺贈により取得すると、不動産名義を変更する必要があります。不動産名義を変更する際に発生するのが、登録免許税という税金です。

登録免許税の税率は、相続人か相続人以外かで変わります。

  • 相続人:0.4%
  • 相続人以外:2%

相続放棄をすると相続人ではないので、登録免許税は5倍になります。

3-2.不動産取得税が発生する可能性

不動産を取得した際に発生するのが、不動産取得税という税金です。

ただし、常に発生するわけではなく、特定遺贈で第3者が取得した場合のみ発生します。

遺贈が包括遺贈であれば、相続放棄をしても不動産取得税は発生しません。一方、遺贈が特定遺贈であれば、相続放棄によって不動産取得税が発生します。

 

4.相続債権者が優先されるケース

相続放棄をしても遺贈は有効なのですが、相続債権者が優先して弁済を受けるケースもあります。

相続債権者
亡くなった人に対する債権を有する人のこと
  • 相続財産分離の請求
  • 相続財産管理人の選任

上記2つでは、相続債権者の方が受遺者よりも優先して、弁済を受けることが出来ます。

4-1.相続財産分離の請求

遺贈を受けた相続人が相続放棄をしても、相続債権者はその他の相続人に対して借金等の請求をすることができます。ただし、相続人にお金がなければ回収することができません。

本来であれば遺言者の財産から弁済を受けれるので、相続債権者が不利になってしまいます。

相続債権者を保護する方法が相続財産分離の請求です。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百四十七条
2 財産分離の請求があったときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産をもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした相続債権者及び受遺者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
3 第九百三十条から第九百三十四条までの規定は、前項の場合について準用する。
(受遺者に対する弁済)
第九百三十一条 限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法947条・931条)

相続財産分離の請求があった場合、相続人は相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者(遺贈の受取人)に財産を渡すことができません。

4-2.相続財産管理人の選任

相続人が全員相続放棄をすると、相続債権者は相続財産管理人の選任申立てをすることが出来ます。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
(受遺者に対する弁済)
第九百三十一条 限定承認者は、前二条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法957条・931条)

相続財産管理人は相続債権者に弁済した後でなければ、受遺者(遺贈の受取人)に財産を渡すことができません。

 

5.さいごに

相続放棄をしても遺贈を受け取ることは可能です。相続人と受遺者の立場は別なので、相続人以外の第3者として受遺者となります。

ただし、相続人ではなくなるので、不動産関連の税金に影響があります。登録免許税は5倍になりますし、不動産取得税が発生する可能性もあります。

本当に相続放棄が必要なのかどうかは、個々の事例によって違いますので、判断に悩まれる場合は専門家に相談してみてください。