同性婚と信託契約|可能性を秘めた新しい対策

信託契約は比較的新しい対策になります。言葉自体を聞いたことが無い人も、まだまだいると思います。

同性カップルが信託契約を活用することで、どんな対策が可能になるのか。当事者にどんなメリットや注意点があるのか。

あまり知られていない信託契約について、同性カップルが利用することを考えて説明していきます。

目次

  1. 信託契約とは
    1. どんなメリットがあるのか
    2. デメリットになる部分
  2. 受託者は誰
    1. 同性パートナー型
    2. 法人設立型
  3. 注意点
    1. 相続対策
    2. 身上監護権
    3. 認知症
    4. 相続税対策
    5. 遺留分
  4. まとめ

 

1.信託契約とは

信託契約とは、自分(委託者)の財産を第三者(受託者)に預けて、指定した人(受益者)のために管理運用してもらうことです。
信託契約
信託契約の登場人物は主に3人です。

委託者
財産を信託する人
受託者
財産を管理・運用する人
受益者
信託財産から利益を得る人

*同一人物が委託者と受益者を兼ねることもできます。

信託契約には銀行等が受託者となる商事信託がありますが、同性カップルが使うのは民事信託と呼ばれる方です。
*〇〇信託銀行が信託業務を行っています。

商事信託と民事信託の違いは営利目的かどうかです。民事信託は非営利目的で信託を行います。

1‐1.どんなメリットがあるのか

同性カップルが民事信託を利用するメリットは2つです。

①相続対策

信託した財産は相続のルールではなく、信託契約に従って承継されます。
信託財産は信託契約に従って承継される

信託契約で自分(委託者)が死亡した際の、信託財産の帰属先について定めることができます。同性パートナーを承継人に指定することで財産を残すことが可能です。

信託財産以外の財産は、相続財産として遺言書や法定相続に従って相続されます。

②認知症対策

同性パートナーが認知症になった場合、自分で財産の管理や処分ができなくなります。結果として、医療費や生活費を出すことが難しくなります。

同性パートナーと信託契約を結んでおけば、信託財産から必要に応じて生活費や医療費を払うことができます。

1‐2.デメリットになる部分

同性カップルにとってデメリットになる部分もあります。

①初期費用がかかる

信託契約を結ぶ際の初期費用が高額になりやすいです。ケースバイケースですが数十万円はかかります。

信託契約自体が複雑なので、比例する形で報酬も高額になってしまいます。

②家族の理解

自分の財産を同性パートナーに託すことについて、家族の理解が得られるかどうか。信託財産は相続財産ではなくなるので、相続人と利害関係が生まれます。

カミングアウトの有無によっては、信託契約を利用するのは困難かもしれないです。

 

2.受託者を誰にするか

同性カップルの信託契約では受託者を誰にするのかで、2つの型に分けることができます。

2‐1.同性パートナー型

同性パートナーが受託者
自分を委託者兼受益者、同性パートナーを受託者とします。お互いが信託契約を結ぶことで、2人の財産を使うことができます。

同性パートナー型の注意点

受託者が病気や認知症等になってしまうと、信託契約が機能しなくなります。

信託契約で第2受託者を決めておくことはできますが、同性カップルは候補者を確保するのが難しいです。

 

2‐2.法人設立型

法人を設立して受託者にする
同性カップルで一般社団法人を設立して、法人を受託者とします。
株式会社は営利を目的としているので、受託のためだけに設立するのは難しいです。

一般社団法人の設立には社員が最低2人以上必要ですが、同性カップル当事者が就任すればクリアできます。
*社員とは一般的な会社の社員とは違って、法人の構成員のことです。

受託者を法人とすることで、病気や認知症等で信託契約が機能不全になるのを、防ぐことができます。

法人型の注意点

法人を設立して受託者にする注意点は、主に3つあります。

  • 設立費用が発生する
  • 売り上げが0円でも法人住民税が毎年発生する
  • 信託契約のための法人でも管理運営は必要になる

 

3.気を付けるポイント

信託契約を結ぶだけで、すべてが可能になるわけではないです。気を付けるポイントも説明します。

3‐1.相続対策は別に必要

信託契約で定めていない財産については、別に相続対策が必要になります。

現実的には、全財産を信託契約の内容にすることは考えにくいです。
したがって、遺言書は書く必要があります。

3‐2.身上監護権には対応していない

信託契約の対象は財産なので、身上監護権の設定はできません。任意後見契約との併用も必要に応じて考える必要があります。

身上監護権
生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を行う権利

たとえば、介護施設の費用は信託財産から払えますが、介護施設との契約は受託者ではできないです。

任意後見契約については、下記の記事で詳しく説明しています。

詳細記事

任意後見制度とは成年後見制度の一つで、自分の判断能力が低下する前に、契約で後見(代理)人を決めておく制度です。同性カップルが生活をしていく中で、任意後見契約という言葉を耳にするすることがあると思います。なぜなら、新宿区のパートナ[…]

同性パートナーに後見を任せる

3‐3.認知症等になる前に結ぶ

信託契約は認知症対策として有効ですが、契約自体は同性パートナーが認知症になる前に結ぶ必要があります。発症してしまうと契約を結ぶことが難しくなります。

早めの対策が何事も重要です。

3‐4.相続税対策にはならない

信託契約では、相続税対策にはならないです。
ただし、同性婚では相続税の優遇が、最初から無いので影響は少ないです。

相続税対策は別の方法を、選択する必要があります。

相続税については、下記の記事で詳しく説明しています。
LGBT・同性婚と相続税|パートナーには無慈悲な相続税

3‐5.遺留分に関しては未知数

信託契約を利用すれば、すべての財産を同性パートナーに承継させることもできます。
しかしながら、遺留分の適用があるとする考え方もあるので、遺留分侵害には注意する必要があります。
*裁判で争った前例がないので明確な答えはでていませんが、私は遺留分の適用はあると思います。

同性カップルと遺留分については、下記の記事で詳しく説明しています。
同性婚と遺留分|パートナーにとって迷惑な制度

 

4.まとめ

同性カップルで信託契約を結ぶと、遺言書とは違う形で相続対策をすることが可能です。認知症対策として生前から効力も発揮します。

ただし、信託契約は内容が複雑になるので、安易にするのはお勧めしません。しっかりと説明を受けたうえで、お互いが納得して利用してください。

信託契約自体が新しい方法なので、まだまだ試行錯誤を続けている段階です。必ずしも信託契約がベストとは限らないので、他の対策と比較検討することが大事です。

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