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同性婚と遺留分|パートナーにとって迷惑な制度

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同性カップルが遺言書を書く際に気を付けるのが遺留分です。残された人を守る遺留分制度が、同性パートナーにとって邪魔になることもあります。

ですが、遺留分のルールを知ることで上手く対応することも可能です。

誰が遺留分権利者なのか、遺留分侵害額請求とは何なのか、同性カップルに関係する部分を中心に書いています。

目次

  1. 遺留分とは
  2. 遺留分権利者
    1. 子ども(直系卑属)
    2. 親(直系尊属)
  3. 遺留分を計算する際の財産
    1. 亡くなった時点の財産
    2. 計算に加える贈与
  4. 遺留分侵害額請求
  5. まとめ

 

1.遺留分は迷惑な存在

遺留分とは相続人に認められた最低限の相続保障です。

遺留分制度は残された人の生活を保障する意味もあり、実際に助けられている人もいます。遺留分制度が無ければ、全財産を愛人に遺贈するような事態に対応することができません。

けれども、同性カップルにとっては迷惑な存在となります。同性パートナーに財産をすべて残したくても、遺留分は請求される恐れがあります。遺言書を書いてもすべて残せる保証はないです。

一方、遺言書を書いていなかった場合、残された同性パートナーを遺留分制度は助けてくれません。相続人ではないので保護の対象ではないからです。

遺留分制度は同性カップルにとって、邪魔はするが味方はしてくれない存在です。

 

2.誰が遺留分権利者なのか

相続人すべてが遺留分権利者ではないです。

遺留分が認められるのは次の相続人です。

  • 配偶者
  • 直系卑属(子ども)
  • 直系尊属(親)

兄弟姉妹は遺留分がありません。ですので、相続人が兄弟姉妹だけであれば、遺言書を書くだけで同性パートナーに財産をすべて残せます。

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同性カップルが想定する遺留分権利者は子どもと親です。当然ですが法律上の配偶者はいないことを前提にしています。

2‐1.子ども(直系卑属)

同性パートナーが過去に結婚していて、別れた配偶者との間に子どもがいる場合等が考えられます。何十年会っていなくても相続人なので遺留分があります。
子供の遺留分
子どもの遺留分は全体の2分の1です。複数人いる場合は2分の1を頭数で割ります。

注意点は子どもが亡くなっていても、孫がいる場合は代襲相続人になります。

2‐2.親(直系尊属)

平均寿命が延びているので、実際に発生しやすいです。
親の遺留分
親の遺留分は全体の3分の1です。子どもとは割合が違うので遺言書を書く際は気を付けましょう。

注意点は親が亡くなっていても、祖父母が健在なら相続人になります。

 

3.遺留分を計算する際の財産

遺留分を計算する際の財産は、亡くなった時点で有していた財産だけではないです。

亡くなった時点の財産に一定の贈与を加えて債務を控除します。

3‐1.亡くなった時点の財産

亡くなった時点の財産には、遺贈や死因贈与の分を含めます。

財産には含まない物もあります。

  • 祭祀財産
  • 生命保険金
  • 死亡退職金
  • 一身専属的な権利

同性パートナーを生命保険金の受取人にしている場合は、下記記事も読んでみてください。

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3‐2.計算に加える贈与

遺留分の算定に含まれる贈与です。

  • 相続開始前1年以内の生前贈与
  • 遺留分を害すると知って行われた生前贈与
  • 相続人への特別受益となる生前贈与
    (2019年7月1日以降の相続は過去10年間)

同性カップルに関係するのは、1年以内の贈与と遺留分を害すると知って行った贈与です。

分かりにくいのは、遺留分を害すると知って行った贈与です。

「害すると知って」とは、遺留分を侵害することを知っていたかどうかです。損害を与える目的や意思の有無は関係ないです。

知っていたかどうかは総合的に判断されます。

  • 贈与時の財産総額
  • 贈与者の年齢や健康状態
  • 贈与後に財産が増える可能性

たとえば、1,000万円は大金ですが、1億円の財産を持っている人からの贈与だと、遺留分を害する贈与には該当しないです。
*贈与の時期が亡くなる前1年以内だと含みます。

知っていたかの証明は、遺留分権利者(相続人)がする必要があります。

 

4.遺留分侵害額請求は金銭請求

同性パートナーは請求される側です。

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求は金銭の支払いを請求できる権利です。
したがって、遺言書で遺留分を侵害していても、遺贈自体は有効に成立します。

同性パートナーが不動産を遺贈をされた場合でも、支払うのは金銭であって不動産を返す必要はないです。
遺留分侵害額請求は金銭
支払いに充てる現金が用意できているのなら、遺言書で全部遺贈するという考え方もあります。

遺留分侵害額請求をできる期間は、相続およ侵害の事実を知ってから1年間、または相続開始から10年間です。

 

5.まとめ

同性カップルと遺留分は切っても切れない関係です。

遺留分権利者が分からなければ、遺言書を書いても目的を達成することは難しいかもしれません。同性パートナーに全部遺贈しても請求される可能性はあります。

しかしながら、遺留分侵害額請求の知識があれば、金銭を用意しておく等で対策を打つことも可能です。不動産を遺贈したい場合は、あえて侵害する必要もあります。

相続のルールを知ることは対策の第一歩です。まずは知ることから始めましょう。