世界では同性カップルに子どもがいるのは珍しくありません。それに対して、日本では決して多いとは言えないでしょう。
けれども、子どもについて2人で話し合っているカップルは、日本でも多いと思います。
同性カップルと子どもの相続関係は複雑になりやすいので、あらかじめ確認しておいてください。
1.パートナーに子どもがいる
同性パートナーに実子がいるケースです。
異性との間に子どもを授かっていて、その後同性パートナーと知り合った。あるいは、女性カップルで精子提供を受けて子どもを授かった等が考えられます。
1-1.同性パートナーに連れ子がいる
同性パートナーに連れ子がいるケースです。
2通り考えられます。
- 離婚して子どもを引き取っている
- 籍を入れずに子どもを授かっている
離婚して子どもを引き取っている
パートナーの子どもと相続関係を発生させるなら、普通養子縁組を結ぶ必要があります。ただし、子どもの親が3人になるので、相続が発生すると複雑になりやすいです。
なぜなら、離婚していて親権を持っていなくても、実親と実子の相続関係が無くなるわけではないからです。
籍を入れずに子どもを授かっている
母親と子どもの親子関係は分娩の事実により証明されています。ですので、母親と子どもについては特に問題は発生しません。
問題になるのは、父親が認知をするのかどうかです。認知をしなければ父親と子どもの親子関係は発生しません。つまり、相続においても無関係ということです。
同性カップルとして父親の登場が望ましいかどうかです。場合によっては、認知をしてほしくない人もいるでしょう。
1-2.精子提供を受けて子どもを授かった
女性カップルなら精子提供を受けて子どもを授かることもできます。
出産をした人と子どもの関係は分娩の事実により証明されています。問題になるのは、精子提供をした男性との関係です。
匿名で提供を受けているなら認知による父親の登場は無いでしょう。それに対して、知り合いから提供を受けているなら認知により父親が登場する可能性は残っています。
2.代理出産をしたら相続権はどうなる?
代理出産という言葉を聞いたことがあると思います。ただし、代理出産をした場合に相続権がどうなるかはご存知でしょうか?
ちなみに、日本の法律では代理出産を禁止していません。ですが、日本産婦人科学会が代理出産を認めないとの見解を示しているので、日本で代理出産をすることは事実上できません。
『日本産婦人科学会の代理懐胎に関する見解』から確認することができます。
2-1.子どもの母親は出産した人
日本では出産した人が子どもの母親になるとされています。
つまり、男性カップルが国外で代理出産を利用すると、生まれてきた子どもの相続関係が複雑になってしまいます。
ちなみに、法律上の夫婦が代理出産を利用するケースでは、特別養子縁組をして相続関係を断ち切っているはずです。
関連記事を読む『代理出産と養子縁組|特別養子縁組が認められないと相続が複雑になる』
2-2.特別養子縁組を利用することは出来ない
同性カップルは特別養子縁組を利用することができません。
なぜなら、法律で養親になるには配偶者がいることも要件となっているからです。
養親の夫婦共同縁組)
第八百十七条の三 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
特別養子縁組が利用できない以上、代理出産をした人と子どもの相続関係は残ることになります。
関連記事を読む『特別養子縁組の成立には条件がある|法改正による養子の年齢変更に注意』
3.里親制度は子どものため
同性カップルも里親制度を利用することができます。厚生労働省のガイドラインでも禁止されていません。
- 里親制度
- 児童福祉法第27条第1項第3号の規定に基づき、児童相談所が要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)の養育を委託する制度のこと
実際に同性カップルが里親になったという記事を、ネット等でご覧になったことがあるかもしれません。
ただし、同性カップルが子どもを欲しいからといって、里親制度を利用することは難しいでしょう。
なぜなら、里親制度は子どもが欲しい人の制度ではなく、子どものための制度だからです。
あなたが子どもの為に家庭環境を提供したいと検討されているなら、里親制度についても調べてみてください。
4.2人で同じ人を養子にする
同性カップルの後継ぎ問題として、2人の財産を最終的に誰が相続するかという問題があります。
2人の親族等に財産を残したい人がいるなら、2人で同じ人と養子縁組をするという方法もあります。
同じ人を養子にしておけば、同性カップルの財産は最終的に養子が引き継ぐことになります。
注意養子縁組のタイミング等によっては、相続が複雑になる可能性があります。
5.さいごに
同性カップルと子ども相続関係は複雑になりやすいので、ご自身の状況に当てはめて確認しておいてください。
「パートナーの連れ子との養子縁組」「精子提供を受けた場合の父親」「代理出産を利用した場合の母親」等について、相続の繋がりを確認しておかなければ、相続対策をする際に思わぬトラブルを招く可能性もあります。
誰が相続人になるのかを確認するのは、相続対策において一番初めにすることになります。まずは、2人で相続人について確認してみてください。