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特定遺贈を一部放棄することは可能なのか?

特定遺贈の一部放棄
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不動産は受け取っても住む気がないや、預貯金を全額受け取るのは申し訳ないと思う受遺者もいます。

特定遺贈の受遺者だからといって、すべての財産を受け取る必要はありません。財産の内容が可分であれば、一部だけ放棄して残りを受け取ることは可能です。

特定遺贈の受遺者になっているなら、今回の記事を参考にしてください。

1.遺贈の内容が可分であれば可能

特定遺贈の内容が可分であれば、一部放棄をすることは可能です。

一部放棄には以下の様なケースがあります。

  • 特定の財産だけ放棄
  • 財産の一部だけ放棄

1-1.特定の財産だけ放棄

特定遺贈で複数の財産を遺贈されている場合に、特定の財産だけ放棄するケースです。

例えば、不動産と預貯金100万円を特定遺贈されている場合、不動産は放棄して預貯金100万円は受け取る。

特定の財産だけ放棄

逆に預貯金だけ放棄して、不動産は受け取るということも可能です。

イメージとしては、不動産の特定遺贈と預貯金100万円の特定遺贈の2つがあり、それぞれの特定遺贈について個別に判断しています。

1-2.財産の一部だけ放棄

預貯金等を遺贈されている場合に、一部だけ放棄するケースです。

例えば、預貯金1,000万円を特定遺贈されている場合、500万円だけ放棄して500万円は受け取る。

預貯金の一部を放棄

亡くなった人から遺贈されている金銭が高額であれば、一部だけ受け取ることも可能です。

預貯金だけではなく、土地の一部を放棄することも可能と言われています。

受贈者において、遺贈を受けた土地の一部を相続人のために放棄することができる。この場合の手続としては、遺言執行者において、放棄に係る部分の分筆登記を行い、その他の部分につき遺贈の登記を申請するものとされる。

出典:(昭和40年7月31日民甲1899局長通達)

土地も分筆することにより、可分することができるからです。

2.意思表示は遺贈義務者に対して行う

遺贈放棄の意思表示を遺言者にすることはできません。遺贈の放棄ができる時には、遺言者はすでに亡くなっているからです。

(遺贈の放棄)
第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法986条)

ですので、一部放棄の意思表示は、遺贈義務者に対して行います。

遺贈義務者
遺贈を実行するための引き渡し等の義務を負う人

遺贈義務者とは以下の人です。

  • 遺言執行者
  • 相続人
  • 相続財産管理人

2-1.遺言執行者が選任されている

遺言執行者が選任されていれば、一部放棄の意思表示は遺言執行者に対して行っても大丈夫です。

遺言執行者とは言葉どおり、遺言を執行する人のことです。遺言書で指定されている場合や、家庭裁判所に選任申立てをする場合があります。

遺言執行者がいなければ、相続人に対して意思表示を行います。

遺言執行者も相続人も存在しない場合は、相続財産管理人が遺贈義務者となります。

2-2.放棄の意思表示は書面で行う

一部放棄する意思表示の方法は、法律で特に決まりがありません。口頭でも放棄の効力は発生します。

ですが、トラブルを防ぐために、遺贈放棄書を内容証明郵便で郵送するのが一般的です。

遺贈義務者の立場からしても、後から揉めないために書面にするでしょう。

 

3.放棄した財産は相続人が相続する

特定遺贈の一部を放棄した場合、放棄された財産は相続人が相続します。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第九百九十五条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

出典:e-Govウェブサイト(民法995条)

相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議で放棄された財産の取得者を決めます。

ただし、遺言者が放棄された場合について遺言書で定めていた場合は、遺言者の意思に従うことになります。

例えば、「Aさんに不動産を遺贈するが、放棄した場合は長男に相続させる」と遺言書に記載してあれば、長男が不動産を相続することになります。

分かりやすく説明するなら、拒否された場合について第2候補を決めておくということです。

 

4.まとめ

特定遺贈を受けるかどうかは受遺者の自由です。ですので、遺贈の内容が可分であれば、一部だけ放棄することもできます。

特定遺贈の一部放棄は2つに分けることが出来ます。

  • 特定の財産を放棄
  • 財産の一部を放棄

不動産だけ放棄して預貯金は受け取るや、預貯金の半分は放棄して残りを受け取る等が一部放棄となります。

一部放棄の意思表示は遺贈義務者に対して行います。口頭でも効力は発生しますが、トラブル防止のために書面で行った方が良いです。

放棄された財産は相続人が相続することになります。遺言書に定めがなければ、遺産分割協議で取得者を決めます。