亡くなった人に相続人がいない場合には、生前に特別の縁故があった人に財産分与の可能性があります。
家庭裁判所に特別縁故者と認められて、無事に財産を取得すると相続税の課税対象者となります。相続人でなくても相続税は発生しますので、申立てをする段階で相続税が発生するかどうかを注意しておく必要があります。
目次
- 相続税が発生するラインを確認
- 特別縁故者は相続税が増える
- 相続税が2割加算
- 控除や特例が適用されない
- 相続税の基本的な計算
- その他の注意点
- 申告先
- 相続税の計算に含める財産
- まとめ
1.相続税が発生するラインを確認
特別縁故者は相続人ではないですが、相続税法により相続税の課税対象となります。
*遺贈を受けると相続税の課税対象です。
(遺贈により取得したものとみなす場合)
第四条 民法第九百五十八条の三第一項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす。
ただし、財産分与を受けても、すべての人に相続税が発生するわけではないです。
相続税には基礎控除があるので、取得した財産が基礎控除額を超えた場合のみ相続税が発生します。
相続税の基礎控除額は下記の計算式で求めます。
- 相続税の基礎控除額
- 3,000万円+600万円×法定相続人の数
特別縁故者の基礎控除額は、基本的に3,000万円です。
なぜなら、特別縁故者が財産を取得している場合は、法定相続人は0人だからです。
*例外はありますが、可能性は低いので除外しています。
財産分与により取得した財産が、3,000万円を越えなかった場合は相続税は発生しません。相続税申告書の提出も不要です。
2.特別縁故者は相続税が増える
特別縁故者は相続人に比べて相続税が増えます。
相続人よりも基礎控除が少ないのと、下記の2つも該当するからです。
- 2割加算の対象
- 控除・特例が適用されない
2‐1.相続税が2割加算
財産を取得した人が、配偶者と1親等以外の人は相続税が2割加算されます。
(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。
特別縁故者に該当する人は配偶者と1親等以外なので、特別縁故者の相続税は2割加算となります。
*例外はあります。
相続税の申告を税理士に依頼している場合は別ですが、ご自身で計算される場合は2割加算を忘れずにしてください。
2‐2.控除や特例が適用されない
特別縁故者は相続税法上の、控除や特例が適用されません。
- 配偶者控除
- 小規模宅地等の特例
- 相次相続控除
- 未成年者控除
- 障害者控除
結果として、特別縁故者の相続税は増えやすくなります。
3.相続税の基本的な計算
特別縁故者が財産を取得した場合の、基本的な計算となります。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
①基礎控除額3,000万円を超えた部分が課税価格です。
②課税価格に税率を掛けます。
③控除額を引きます。
④特別縁故者は2割加算です。
(例)財産分与の額が5,000万円
5,000万円-3,000万円=2,000万円(課税価格)
2,000万円×15%=300万円(3,000万円以下の税率)
300万円-50万円=250万円(3,000万円以下の控除額)
250万円×1,2倍=300万円(相続税の2割加算)
相続税は300万円
(例)財産分与の額が7,000万円
7,000万円-3,000万円=4,000万円(課税価格)
4,000万円×20%=800万円(5,000万円以下の税率)
800万円-200万円=600万円(5,000万円以下の控除額)
600万円×1,2倍=720万円(相続税の2割加算)
相続税は720万円
4.その他の注意点
特別縁故者と相続税に関して細かい注意点です。
4‐1.相続税の申告先
相続税の申告先は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する税務署です。
あなたの住所地ではないので、ご注意ください。
管轄税務署は『国税庁のホームページ』で確認できます。
申告期限は財産分与を受けたことを、知った日から10ヶ月以内です。
原則として、現金一括納付なので準備しておいてください。
4‐2.相続税の計算に含める財産
財産分与で取得した財産以外にも、相続税の計算に含める財産があります。
- 遺贈により受け取った財産
- 死因贈与により受け取った財産
- 生命保険金
遺言書で遺贈を受けていても、記載に抜けがあると特別縁故者の申立てをすることがあります。
実際に財産を取得している場合は、相続税専門の税理士に相談してください。
5.まとめ
特別縁故者も相続税の課税対象者になります。
- 基礎控除額は3,000万円
- 相続税は2割加算
- 不動産を取得する際は注意
- 相続税は現金一括納付
特別縁故者の申立てを検討されている方は、相続税が発生するかどうかも考慮しておいてください。