特別縁故者も相続税の課税対象者になるので金額に注意

特別縁故者も相続税
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特別縁故者として財産を取得すると、相続税法上は遺贈による取得とみなされます。

ですので、特別縁故者も相続税の課税対象者です。

ただし、相続税には基礎控除があるので、すべてのケースで発生するわけではありません。

今回の記事では、特別縁故者の相続税について説明しているので、財産を取得した場合は参考にしてください。

1.特別縁故者も相続税の課税対象者

特別縁故者は相続人ではないですが、相続税法により相続税の課税対象者となります。

以下は、相続税の条文です。

(遺贈により取得したものとみなす場合)
第四条 民法第九百五十八条の三第一項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす。

出典:e-Govウェブサイト(相続税法4条)

特別縁故者に対する相続財産の分与により財産を取得した人は、遺贈により取得したとみなされます。

遺贈により財産を取得した人は相続税の課税対象者なので、特別縁故者も相続税の課税対象者です。

特別縁故者の財産分与により財産を取得すると相続税の課税対象

特別縁故者に対する財産分与の申立をする段階で、相続税まで気にする人は少ないですが、課税対象者になる点は知っておきましょう。

 

2.相続税の基礎控除は特別縁故者も適用される

特別縁故者が財産を取得しても、相続税が課税されないこともあります。

なぜなら、相続税には基礎控除があり、特別縁故者が財産を取得した場合も適用されるからです。

相続税の基礎控除

相続税の基礎控除額は下記の計算式で求めます。

相続税の基礎控除額
3,000万円+600万円×法定相続人の数

特別縁故者の基礎控除額は、基本的に3,000万円になります。

なぜかというと、特別縁故者が財産を取得できているなら、法定相続人はいない(0人)はずです。
*例外はありますが、可能性は低いので除外しています。

財産分与により取得する財産が、3,000万円を超えているか確認しましょう。

 

3.特別縁故者は相続人に比べて相続税が増える

特別縁故者に相続税が発生する場合、相続人に比べて相続税が増えます。

基礎控除額が少ないのも関係しますが、下記の2つも影響するからです。

  • 2割加算の対象
  • 控除・特例が適用されない

それぞれ説明していきます。

3-1.特別縁故者は2割加算の対象

相続財産を取得した人が、配偶者と1親等以外の場合は相続税が2割加算されます。

以下は、相続税の条文です。

(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。

出典:e-Govウェブサイト(相続税法18条)

特別縁故者に該当する人は配偶者と1親等以外なので、特別縁故者の相続税は2割加算されます。
※例外はあります。

相続税の申告を税理士に依頼している場合は別ですが、ご自身で計算される場合は2割加算に注意してください。

3-2.特別縁故者は控除や特例が適用されない

特別縁故者が財産を取得する場合、相続税法上の控除や特例が適用されません。

  • 配偶者控除
  • 小規模宅地等の特例
  • 相次相続控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除

細かい説明は省略しますが、相続人に比べて特別縁故者は相続税が増えやすいです。

 

4.特別縁故者の相続税を計算(基本例)

特別縁故者が財産分与により財産を取得した場合の、基本的な計算例となります。

まずは、以下の表を確認してください。

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税は以下の順番で計算します。

  1. 基礎控除額3,000万円を超えた部分が課税価格
  2. 課税価格に税率を掛ける
  3. 計算結果より控除額を控除
  4. 特別縁故者は2割加算

計算例を2つ説明します。

【財産分与の額が5,000万円の場合】

5,000万円-3,000万円=2,000万円(課税価格)
2,000万円×15%=300万円(3,000万円以下の税率)
300万円-50万円=250万円(3,000万円以下の控除額)
250万円×1,2倍=300万円(相続税の2割加算)
相続税は300万円

【財産分与の額が7,000万円の場合】

7,000万円-3,000万円=4,000万円(課税価格)
4,000万円×20%=800万円(5,000万円以下の税率)
800万円-200万円=600万円(5,000万円以下の控除額)
600万円×1,2倍=720万円(相続税の2割加算)
相続税は720万円

あくまでも基本的な計算例なので、実際の金額は税理士に確認してもらいましょう。

 

5.特別縁故者と相続税に関する注意点

特別縁故者と相続税に関する注意点です。

  • 特別縁故者の相続税は知った日から10ヶ月以内
  • 財産分与以外に取得している財産がある
  • 特別縁故者が複数人存在する

それぞれ説明していきます。

5-1.特別縁故者は知った日から10ヶ月以内に申告

特別縁故者に相続税が発生する場合、申告期限は財産分与を知った日から10ヶ月以内になります。

相続税の申告先は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する税務署です。特別縁故者の住所地ではないので注意してください。

管轄税務署は『国税庁のホームページ』で確認できます。

原則として、相続税は現金一括納付なので気を付けてください。

5-2.財産分与以外で取得している財産がある

特別縁故者の財産分与以外に取得している財産があると、相続税の計算は複雑になります。

  • 遺贈により財産を取得していた
  • 生命保険金を受け取っていた

特別縁故者が遺贈を受けていたり、生命保険金を受け取っていることもあります。

例えば、遺贈や生命保険の金額だけなら基礎控除額以下だった場合です。

特別縁故者の財産分与を加えると相続税が発生する

当初は相続税が発生しない金額でも、特別縁故者の財産分与を加えることで基礎控除額を上回れば、相続税を納める必要があります。

非常に複雑なケースなので、税理士に相談してください。

5-3.特別縁故者が複数人存在している

特別縁故者が複数人存在する場合、相続税の計算を間違えないように注意してください。

  1. 特別縁故者が取得した財産を合算
  2. 合算した金額から基礎控除額を控除
  3. 相続税を計算して財産割合で按分
  4. 按分した金額に1.2倍する

例えば、特別縁故者が2名で、それぞれ3,000万円取得した場合です。

3,000万円+3,000万円=6,000万円(合算額)
6,000万円-3,000万円=3,000万円(課税価格)
3,000万円×15%=450万円(3,000万円以下の税率)
450万円ー50万円=400万円(3,000万円以下の控除)
400万円を2人で按分すると200万円
200万円×1.2=240万円(1人分)

相続税はそれぞれ240万円となります。

特別縁故者が複数人存在する場合、1人の取得した金額ではなく、合算額で相続税を計算します。

他の特別縁故者が取得した財産額が分からない場合は、相続財産管理人に相続税の申告で必要になると伝えてください。
※相続財産管理人は財産額を知っています。

 

6.さいごに

今回の記事では「特別縁故者の相続税」について説明しました。

特別縁故者が財産分与により財産を取得すると、相続税の課税対象者になります。

ただし、相続税の基礎控除は特別縁故者にも適用されるので、原則として3,000万円以下であれば相続税は課税されません。

例外は、財産分与以外で財産を取得している場合や、特別縁故者が複数人存在する場合です。

特別縁故者に相続税が発生するケースは少ないですが、財産額によっては発生するので注意してください。