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相続土地国庫帰属法の負担金は土地の区分により違う

相続土地国庫帰属法の負担金
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相続した土地を国庫帰属するには、土地の区分によって計算した負担金を納める必要があります。負担金を納めなければ国庫帰属できません。

土地の区分は以下の4つです。

  • 宅地
  • 農地
  • 森林
  • その他

土地の存在する区域によっても、負担金の額は違います。

今回の記事では、相続土地国庫帰属法の負担金について説明しているので、国庫帰属を検討しているなら参考にしてください。

注意相続土地国庫帰属法の施行日は令和5年(2023年)4月27日です。

1.宅地を国庫帰属する場合の負担金

相続土地国庫帰属法の宅地とは、「直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地」のことです。

以下は、政令の条文です。

(負担金の算定)
第四条 (省略)
一 宅地(その現況及び従前の使用状況に照らして直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地をいう。)

出典:e-Govウェブサイト(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令4条1項1号)

宅地に該当するかどうかは、不動産登記簿上の地目だけでなく、現況や使用状況からも判断されます。

したがって、不動産登記簿上の地目が宅地以外であっても、宅地と判断される可能性はあります。

1-1.市街化区域・用途地域内にある宅地の負担金

国庫帰属する宅地が、市街化区域または用途地域が指定されている区域にあれば、以下の計算で負担金は決まります。

宅地(市街化区域・用途地域)の負担金
地積区分 負担金
50㎡以下 地積×4,070円+20万8,000円
50㎡超100㎡以下 地積×2,720円+27万6,000円
100㎡超200㎡以下 地積×2,450円+30万3,000円
200㎡超400㎡以下 地積×2,250円+34万3,000円
400㎡超800㎡以下 地積×2,110円+39万9,000円
800㎡超 地積×2,010円+47万9,000円

国庫帰属する宅地の地積が大きいほど、1㎡あたりの負担金は低くなります。

(例1)国庫帰属する宅地の地積が40㎡

40×4,070円+20万8,000円=37万800円

負担金は37万円
※1,000円未満切り捨て

(例2)国庫帰属する宅地の地積が90㎡

90×2,720円+27万6,000円=52万800円

負担金は52万円
※1,000円未満切り捨て

負担金の計算結果に1,000円未満があれば切り捨てとなります。

その他の宅地は一律20万円

国庫帰属する宅地が、市街化区域または用途地域が指定されている区域外にあれば、負担金は一律20万円となります。

宅地の存在する区域は重要なので、あらかじめ市役所等の都市計画課に確認しておきましょう。

 

2.農地を国庫帰属する場合の負担金

相続土地国庫帰属法の農地とは、「主に農地として利用されている土地」のことです。

以下は、政令の条文です。

(負担金の算定)
第四条 (省略)
二 主に農地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地をいう。)として利用されている土地

出典:e-Govウェブサイト(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令4条1項2号)

主に農地として利用されている土地と規定されていますが、現に耕作されている農地に限定するわけではありません。

国庫帰属する農地(田・畑)が、以下の区域内にあれば、表の区分により負担金が決まります。

  • 都市計画法の市街化区域内
  • 農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内
  • 土地改良法の土地改良事業等の施行区域内

上記の区域外の農地は一律20万円です。

農地(市街化区域・農用地区域等)の負担金
地積区分 負担金
250㎡以下 地積×1,210円+20万8,000円
250㎡超500㎡以下 地積×850円+29万8,000円
500㎡超1,000㎡以下 地積×810円+31万8,000円
1,000㎡超2,000㎡以下 地積×740円+38万8,000円
2,000㎡超4,000㎡以下 地積×650円+56万8,000円
4,000㎡超 地積×640円+60万8,000円

国庫帰属する農地の地積が大きいほど、1㎡あたりの負担金は低くなります。

(例1)国庫帰属する農地の地積が100㎡

100×1,210円+20万8,000円=32万9,000円

負担金は32万9,000円

(例2)国庫帰属する農地の地積が300㎡

300×850円+29万8,000円=55万3,000円

負担金は55万3,000円

相続後に放置している田畑が、農地または雑種地のどちらになるかは、現時点では判断材料が少なく分からないです。

 

3. 森林を国庫帰属する場合の負担金

相続土地国庫帰属法の森林とは、「主に森林として利用されている土地」のことです。

以下は、政令の条文です。

(負担金の算定)
第四条 (省略)
三 主に森林として利用されている土地

出典:e-Govウェブサイト(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令4条1項3号)

国庫帰属する土地が森林であれば、以下の表に当てはめて計算するだけです。
※森林は区域による違いがありません。

森林の負担金
地積区分 負担金
750㎡以下 地積×59円+21万円
750㎡超1,500㎡以下 地積×24円+23万7,000円
1,500㎡超3,000㎡以下 地積×17円+24万8,000円
3,000㎡超6,000㎡以下 地積×12円+26万3,000円
6,000㎡超12,000㎡以下 地積×8円+28万7,000円
12,000㎡超 地積×6円+31万1,000円

国庫帰属する森林の地積が大きいほど、1㎡あたりの負担金は低くなります。

(例1)国庫帰属する森林の地積が500㎡

500×59円+21万円=23万9,500円

負担金は23万9,000円
※1,000円未満切り捨て

(例2)国庫帰属する農地の地積が1,000㎡

1,000×24円+23万7,000円=26万1,000円

負担金は26万1,000円

放置されている山林であっても、相続土地国庫帰属法の森林に含まれる可能性があります。

 

4.宅地・農地・森林以外の負担金

相続土地国庫帰属法で定める宅地・農地・森林以外の土地は、地積に関わらず一律20万円となります。

ただし、土地の区分を判断する際は、十分に注意してください。

負担金が20万円だと思って申し立てをしても、調査の結果により土地の区分が変わり、想定していた負担金よりも増える可能性があります。

司法書士から一言国庫帰属の運用がスタートすれば、判断基準の具体例も増えてくるはずです。

 

5.隣接する土地を国庫帰属するなら負担金の特例

国庫帰属の承認申請をする土地が複数あり、かつ、土地が隣接していれば、負担金の計算に特例があります。

以下は、政令の条文です。

(隣接する二筆以上の土地の負担金の算定の特例)
第五条 承認申請者は、隣接する二筆以上の承認申請に係る土地のいずれもが前条第一項各号に掲げる土地の区分で同一のものに属するときは、法務大臣に対し、当該隣接する二筆以上の承認申請に係る土地を一筆の承認申請に係る土地とみなして負担金を算定すべき旨の申出をすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令5条1項)

特例を簡単に説明するなら、複数の土地を一つとみなして負担金を計算をします。土地が一つとみなされることにより、負担金の額は少なくなります。

5-1.負担金の特例には条件がある

負担金の特例を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 隣接する土地の区分が同じ
  • 一筆の土地とみなす申出

それぞれ簡単に説明していきます。

隣接する土地の区分が同じ

国庫帰属の承認申請をする土地が、それぞれ同じ土地の区分であるか確認してください。

隣接する土地が同じ土地の区分でなければ、負担金の特例は受けられません。

例えば、土地Aが宅地で土地Bが農地であれば、負担金の特例は受けられないので、それぞれ負担金を計算します。

一方、土地Aも土地Bも宅地であれば、土地を一つとみなして負担金を計算します。

一筆の土地とみなす特例の申出が必要

国庫帰属の承認申請をする土地が隣接していても、特例の申出がなければ適用されません。

勘違いして、特例の申出をしなければ、各土地ごとに負担金を計算します。

土地の条件を満たしているなら、忘れずに特例の申出をしましょう。

 

6.さいごに

今回の記事では「相続土地国庫帰属法の負担金」について説明しました。

相続により取得した土地を国庫帰属する際の負担金は、土地の区分により金額が違います。

  • 宅地
  • 農地
  • 森林
  • その他

土地の区分は不動産登記簿上の地目だけで判断するのではなく、現況調査や過去の使用状況等も判断基準となります。

相続土地国庫帰属法の施行日は令和5年(2023年)4月27日なので、現時点では不明な部分も多いです。今後、さらに細かい部分も決まっていくので、情報は随時追加していきます。