事実婚の配偶者は現時点では相続人になることができません。ただし、社会保険の被扶養者になることはできます。
相続とは関係ないように思えますが、相続対策という意味では関係あります。遺言書の信憑性を高めたり、特別縁故者と認められる為の証拠として提出できます。
収入要件を満たす必要はありますが、可能であれば手続きを済ませておいてください。
目次
1.事実婚でも被扶養者になれる理由
法律上の配偶者でなければ法定相続人にはなりません。では、社会保険において事実上の配偶者が被扶養者になれる理由は何でしょう。
社会保険制度では、扶養の判断基準を法律ではなく、実際の生活という事実を重視します。ですので、事実上の婚姻関係にあれば、配偶者として保障を受けることができるのです。
それに対して、相続は法律上の婚姻関係を絶対条件としているので、事実婚を何十年続けても法定相続人にはならないのです。
2.被扶養者になると何が違う
事実婚の配偶者が被扶養者になると以下が違います。
- 健康保険料の免除
- 国民年金の第3号被保険者となる
- 事実婚の証明に使える
2‐1.健康保険料の免除
世帯主が会社員や公務員であれば、事実婚の配偶者は扶養に入ることで保険料が免除になります。配偶者が扶養に入っても世帯主の保険料が増額されるわけではないです。
2‐2.国民年金の第3号被保険者となる
国民年金の第3号被保険者となることで、国民年金保険料の支払いもなくなります。
2‐3.事実婚の証明に使える
事実婚の配偶者が被扶養者になっていると、事実婚であることの証明として使うことができます。社会保険の被扶養者と認められていることが、実際に事実婚状態であることの証だからです。
被扶養者になるには事実婚であることを証明する必要があります。戸籍謄本等では婚姻関係を証明することができないので、別の書類等で事実を証明していきます。
- 住民票
- 事実婚契約書
- 賃貸借契約書
- 民生委員発行の証明書
上記の中でも一番重要なのが住民票です。
住民票の続柄が「妻(未届)または夫(未届)」と記載されていれば、婚姻届けを提出していない夫婦であることの証拠となります。住民票の続柄の変更は市区町村役所で手続きをするだけです。
事実婚を証明する手段の一つが住民票です。法律婚とは違い、事実婚を法律的に証明することはできません。そのため、複数の事実から事実婚を証明する必要があります。住民票の記載は相続対策を補助する効果もあるので、すぐにでも手続きを済ま[…]
4.被扶養者の条件は3つ
事実婚の配偶者が被扶養者となるには、法律婚の配偶者と同じように条件があります。条件を満たしていなければ被扶養者とはなれません。
- 事実婚の夫婦が同居していること
- 被保険者が世帯主であること
- 配偶者の収入が年収130万円未満、かつ、被保険者の年収の50%未満
法律婚の配偶者には同居要件はないのですが、事実婚の配偶者には同居要件があります。事実で証明するのが事実婚なので、同居という事実は重要になります。
収入要件の130万円未満は有名なのですが、被保険者の50%未満であることも要件なので注意してください。
5.子どもを被扶養者にする
子どもを被扶養者にすることもできますが、事実婚の場合は条件があるので確認しておいてください。
5‐1.夫婦の間に子どもができた
相続でも重要になるのですが、父親が子どもを認知しなければ法律上の親子関係はありません。父親が子どもを認知することで法律上の親子関係が成立します。その後は扶養や相続の権利が発生します。
認知が済んでいない場合は、『事実婚の子どもは相続できるか|無条件では財産を引き継げない』をご覧ください。
5‐2.配偶者に子どもがいる
事実婚の配偶者に連れ子がいる場合も、被扶養者とすることができます。社会保険の扶養は事実を重視するので、被保険者が子どもと同居していて生計を担っていれば認められます。
もちろん、連れ子と養子縁組をしていれば、法律上の親子関係になるので扶養の対象です。
6.さいごに
事実婚の配偶者も社会保険の被扶養者となることができます。もちろん、条件があるのですべての人がなれるわけではないです。
社会保険の被扶養者となることで、事実婚の配偶者であることを証明することにもなります。事実婚の配偶者は相続において不安定な立場となるので、できる限る事実婚の証明となる事実を用意しておきましょう。
事実婚の証明とは別に遺言書等の相続手続も必要となります。後回しにすることなく必ずしておいてください。